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9の扉 グレースクアッド
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しおりを挟むそう そうよ
慶だって 折角 来てくれたんだし
なんなら ついでに。
「闇」をも 併合して
行っちゃえば。
よく ない?
「置いて行く」とか。
私、 無理だし。
揺らぎがなくなった、闇を前にそんな事を考えていた。
なんでか、分かんないけど。
私には今、心強い味方「千手観音」も、いるし。
隣には見守る瞳が優しい金色。
いかん。
そっちを見ては、意識が逸れる。
一度深い青に視線を戻し、砂の上を這う様に泳いで行く大きな魚を、眺める。
ゆったりと泳ぐ、大きな生き物は。
見ているだけで、とても気持ちが良いものだ。
その、灰色の鱗に少し頭の中が落ち着いた所で、再び足が動き出す。
そうして未だ「虎か」と思った金と黒の周りを回りながら、つらつらと「その方法」を考えていた。
私にとって「暗色の塊」になった、「闇」だけれど。
「闇」は、「扉から出ようとしていた なにか」でもあるし、あのみんなの靄を吸い取っていた「いけすかないやつ」でも、ある。
それなりに。
「重い」と、思っていた方がいいだろう。
なんでも できる けど。
「油断大敵。」
そう、油断はやはり、いけないのである。
この、迂闊な私にとっては。
「ふむ……………?」
さて、意気込んだのはいいものの、「どうやって取り込むのか問題」をぐるぐる回りながら考えている私は、些か困っても、いた。
いつもは自然と「わかる」「やり方」、しかし今それは降っては来ない。
なにしろ、ヒントが無いかと。
闇の周りを、ぐるぐると回り続けていた。
えーっと
私の 私が?
「究極の私」を 取り込んで
「私だけの千手観音」も 来てくれて?
でも まだ。
「黒」の方が 多いから ?
「闇」を 取り込むことで?
私 が 「狭間の私」に なって。
うん? でもな??
あれ ??
多分だけど。
「闇」、取り込まなくても。
私、 もう
「狭間の私」 なんじゃ、 ない ???
立ち止まって、考えてみる。
「いや、そうだわ………。」
よくよく、考えて、みると。
「闇」はある意味関係無いのだ。
問題、なのか、「原因」は。
「究極の私」だから だ。
「…………あーーー、だから。千里が…………成る程、そうだね?………うんん??」
なにしろ、とりあえず。
今更「闇」を、取り込んでみた所で「狭間の私」に変わりはないという事だ。
それなら、まあ。
なんか うん。
さっきまでの、自分のぐるぐるを思い出しつつも、仕方が無いので再び闇を眺める。
うーーん 黒い
黒いな 黒 うん。
いつも、どうしてたんだっけ??
「あ。」
そうか。
「あなた、一緒に、来る?」
そう言えば、訊いて無かったわ………。
私が勝手に。
「置いては行けない」と、思っていたけれど。
「取り込む」という事態に、抵抗はしていなかった、闇。
しかしまさか、「そう される」と思っているからなのだろう。
そう
当然 それも 覚えがある 感情だ
「される」「意思は 関係無い」
「なかみ は関係無い」
そうだよ。
「闇」だって。
「想い」の一種、なんだから。
「危ない………また馬鹿なことをやる所だったわ………。」
小さく息を吐いて、胸を抑えると私の脳内劇場がくるくると回って。
そう
「充分それも馬鹿だと思うけど」
そんな朝のツッコミが、聴こえてきそうなのである。
確かに、「闇もつれて来ちゃった、エヘ」なんて言おうものなら、どんな顔をされるか分かったもんじゃない。
「うーーん。とりあえずそれは、置いといて………。」
「ねえ?」
くるりと闇に向かって、問い掛ける。
きっと。
そう すれば。
何かしらの、変化が起こる筈だから。
「一緒に、行かない?」
もう一度、改めて問い掛ける。
しっかり「その色」を、見逃さない様に、目を凝らしながら。
「あなたは、「ここ」にいなきゃいけない、訳じゃない。だから。私と一緒に。」
「世界を。見に、行かないか?」
そう、口に出しながら。
思い出す あの 神殿
光る白い石 柱
彩りの良い 供物台
流れる
あの
香り は
ああ そう か。
鼻に届いた「匂い」に気付いて、口角が上がる。
チラリと視線を桃色に飛ばし、微笑んで頷いておいた。
きっと「桃色」は、そうしようとした訳ではなく、「そう 在る」だけなのだけど。
しかし私の手助けになる、香りが「今」、ここへ漂うのも事実なのである。
「 繋がり 」
そんな言葉を、胸に抱きながら。
そっと、闇に。
手を 。
ゆっくりと 伸ばしたんだ。
じっと見つめていたが、闇は動こうとしない。
はたと気づき、「動けないんだ」と納得してゆっくりと近付いていく。
手を 取ってくれるだろうか
そもそも 闇も人間嫌いかもね?
「嫌だ」って言われたら どうしようかな
うーーん でも そこは やはり 自由意志な
ワケで うん
そういや この子 「闇の神」って
姫様に 言われてたよね………
「闇の神」、それは。
きっと私の慶にも近い、存在に違い無くて。
「ただ そう在る純粋なもの」、その点で言えばやはり、そうなのだろう。
今、私から見て「暗色」であろうとも。
やはり…………
「うん…………?あなた、名前は………無い、よね??」
慶が私に「ケイよ ケイ」と教えてくれたことを思い出し、訊いてみる。
もし、「行きたくない」と、言われても。
「名前」があればお友達には、なれそうだし?
なんなら、「ポン」とあっちからこっちに、跳んでこれたり………しない、か
いや フリジアさんのところ も 行ける し?
「なんでもできる」私 だもん
今 私 多分。
「 名は
ない 」
「えっ?」
一人ぐるぐるをしている間に、闇から返事が来た。
「あー、やっぱり、無いんだ。まあ、そうだよね…………じゃあ、どうしようかなぁ。」
チラリと見る、その色は少しだけ。
揺れて、「期待」の色が微かに、滲んだ気がした。
いや、本当は。
変わってないのかも、知れないけど。
いや でもさ 多分。
そう 思ったんだもん。
大丈夫だよ だって 「今の私」は。
「なんでもできる」私 だから。
「じゃあ、私が決めていいかな??」
とりあえず訊いてみた。
多分、この子はそうそう本心は言わない筈だ。
いや?闇?「想い」? 本心??って あるのかな
でも もう 「この子」は
私にとって。
一つの 「なにか」だ
なんだろうか。 分かんない けど。
でも、その時の私には「そう接する」のが正しい様な、気がしていたし。
多分、後から考えても。
それは、正解だったと、思う。
だって ずっと 私達は。
「ひと」として
「なかみ」がある ものとして
扱われたかった ん だから 。
じっとその、変化をただ見て、いた。
ゆっくりでいい。
急かさない。急がなくて いいんだ。
ただ あの「闇の 真ん中」で。
ちゃんと 選んで くれれば いいんだから。
少しずつ、少しだけ、揺らいだ中心、その揺らぎと共に音が、聴こえてきた。
「 いい よ 」
「えっ、よかった、ありがとう!」
一瞬、ブワリと上がったテンションに反省して、くるりと回り深い色を目に映す。
この、深海は。
確かに私を落ち着かせるには充分な、「場」なのだ。
「流石「海底墓地」………うん?その辺もちょっと帰ったら相談だよね…。」
つらつらと独り言を漏らしながら、「闇の名前」を考え始める。
そもそも、「闇の名前」なんて。
私に、そんなカッコいいものが、思い付くとは思えないけど。
そう、いつも馬鹿にされるネーミングセンスはきっと親譲りの年代ものである。
いやいや
今 私 「なんでも できる」し??
え でも 名前 関係あるかな…………
とりあえず。 ダサいのだけは 避けたい………
ハクロの時も、思ったけど。
「黒いもの」系の、名前は難しいと思う。
なんか、ちょっと中2みたくなっちゃうし………
いや 私今 中2だけどさ………
そろそろ 3年に? なった、よね ?
まあ それは いいとして。 うん。
「闇」「暗」 「黒」「濃い」
「暗黒」 「漆黒」 「夜」それ私やん
「えーーーーー。これ、一番の難問かも、知れない………。」
「夜明け」いいね じゃあ「紺」いや違う
もっと なんか 暗いんだけど
カッコいい すっきりした
「何も含まない」暗色
うん? いや「夜明け」じゃなくて
「夜明け前」だな?
「あ」
それなら、あれじゃん!
「「黎」に、しよう!」
「うっわぁ、そう、決まれば。めっちゃピッタリじゃない??ねえ、どう?いいよね??」
くるくると、金色の周りを回り出した私、少し仕方の無い目をした彼は私を抱きとめこう言ったけれど。
勿論、私に。
異論は、無い。
「では。呼んでみるが、良かろう。」
「うん。」
くるりと振り返り、少し揺らぐ闇を見る。
きっと、金色は「名を呼べば」。
変化が起こると、知っているのだろう。
私も、そう思うし。
きっと闇も、それを望んでるって。
今なら 分かる から。
「これからよろしく、黎。おいで?」
しかし、「おいで」と言った私は動けない闇に向かって、飛び込んでいて。
そのまま、フワリと。
その 黒の中へ 吸い込まれて行ったので ある。
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