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9の扉 グレースクアッド
慶
しおりを挟むしかし、恐ろしいことに、気が付いた。
「えっ?!無い??無いけど?!!、?何処?姫様どこ行っちゃったの????」
「ちょ、待て、落ち着け。」
ズンズンと極彩色に詰め寄る私を抑える金色、しかし「落ち着け」と言っているのは紫の方である。
「今は。「まだ」なのだ。」
「えっ?」
抑えているその、腕を掴み振り返った。
「まだ」?
よく聞くその言葉、だから言われた意味はなんとなく、わかる。
じっと、その「こたえ」を齎した金色の瞳を覗いてみるけれど。
うーーーん。
それなら 。 仕方が 無い のか ?
「全く。………その出立になってもやはり中身はそう変わらないな。」
「?その出立??」
「そうだ。」
「何故分からない?」という色の紫は、最近ウイントフークに似てきてないだろうか。
私に分かる訳が、無いのである。
そこの所を逆に察して欲しい。
そんな明後日の方向にプリプリしているうちに、諦めたのか説明が始まった。
「いや、暗色が多く、バランスが取れないと。危うさが、出る。それに惹かれるんだ、人間の男どもは、な。よく、知っているだろう?」
嫌味な言い方だけど。
それは、とても。
よく、分かる。
人間は、どうしたって
「いけない」「危ない」「スリル」の 方を。
「楽しみたい」生き物 だからだ。
浮き上がって来た「暗い色」を、ぐっと飲み込んであの大きな蝶を真ん中に描く。
うん 私は
大丈夫。
もう 「究極の死んだ私」じゃ
ないし そうで 無くて いいんだ
胸に手を当てたまま、顔を上げ頷いた。
やはりまだ、心配そうな色を浮かべた金の瞳が見えるから。
なにしろ「危うい」らしい、私の変容した姿を心配して、暫く金色を側に付けてくれるらしい。
それならそれで、有難いのだけど。
「でも、それで。何か、解決するの?」
そう、金色が側にいて、私は確かに安心するけれど。
何かが解決、するのだろうか。
金色は。
青の家に居なくて、大丈夫なの??
紫の瞳は私と金色の、間を行ったり来たり、している。
そうして少し、溜息を吐くと再び口を開いた。
「気焔にとっては、まあ良い面悪い面、両方あるが。…まあ、悪くは、ないのか?」
「しかしなにしろ、お前にとっては必要だろうよ。多分、その方が。「早い」。」
えっ
だから なに が ???
しかし、それは極彩色のくるりと回った鮮やかな髪色に、誤魔化される様に。
そのまま、煙に巻かれたのである。
まあ、いつものことか………。
「その時」になったら。
「わかる」やつ、ね………。
「なにしろ早い所その「新しいお前」を馴染ませた方がいい。」
「………うん。」
なんか、それは。
わかる。
さっきもだけど。
ふとした拍子に出てくる「暗い色」、それはまだ安定していない「死んだ私達」なのだろう。
きっとまた、美しいものを見たり、私が満たされれば。
自ずと、純度を上げ淡色になってゆく筈なのだ。
それまで少し、やはり安定するまでは。
あの色が、必要なのだろう。
なんと言っても あの 「色」は。
一等 明るく 美しい 「金色」なのだから。
自分が一番好きな「白金」を思い描くと、顔が熱くなってきた。
ピタピタと頬を冷まし、誤魔化す様に気になっていた事を口に出す。
「でも、さ。「賭け」には勝ったけど、「まだ」なの?何がまだなんだろう………。」
私の独り言に対して、返事は無い。
しかし「返事」ではない、「独り言」は返ってきたけれど。
「まあ。予想外の展開では ある。」
だから なにが???
しかし、再び彷徨き始めた極彩色にこちらを気にする様子はない。
まあ 仕方無いかぁ………。
多分、これ「今」「考えても分からない」系の
やつ だしね………
なにしろ、とりあえず。
一仕事終えた気分の私は、とりあえずの「闇をどうするか」問題を考えつつも。
幻想的に揺れる、薄桃色と深い青が広がるこの空間に癒されながら。
共に、揺ら揺らと揺られていたのである。
なん か
誰 か なに か
賑やか ? だな
なにを 話して いるんだろうか
相談 ? なんか
華やかな 「なにか」が
わちゃ わちゃ
こそ こそ してる
気がする な ??
フワリ、フワリと幻想的な、空間。
そう離れた場所ではないだろうが、見えない何処かで何やら話し声が、する。
ボーッとしていると、訪れた静寂。
再び 始まる 姦しいが可愛らしい 話し声
なんだ ろう ??
しかし、暫くするとフワリと近づく、一つの声がある。
「ケイ ケイ よ
ケイ 」
楽しそうな、なんだか可愛らしい声が聞こえてくるのだ。
うん? 「ケイ」??
「そう ケイ 」
「ケイ」って なんだ ろうな??
楽しそうに、囁く様な優しい声。
なんにも無かった 「白い空間」
しかし、そこには。
その
声の主であろう「なにか」が 現れていた。
そう、その声と同時に現れた「ケイ」は、今。
フワフワと、私の前を楽しそうに舞っている。
牡丹か 芍薬か いや 蓮の花か
それは白く丸い、光の 様な
発光する 花を背負った 「観音」の 姿の。
多分、神のような、もの。
観音 白い
しかも 「千手 観音」だ な?
沢山の白い花を背負って、フワリと軽やかに舞うその姿は幻想的でとても綺麗だ。
私の目の前、頭の周囲をくるくる、フワリと楽しそうに舞うその姿は、見ているこちらも嬉しくなる様な美しい光景である。
そして、その「ケイ」という名が「慶」と書くということも、響きと同時に頭に伝わってくる。
ふぅん? 「慶」 「慶か」
なんか とりあえず
いい感じ だな ?
夢見心地のここは、もしかしなくともきっと、夢の中なのだろう。
しかし、変容を遂げ、「暗い」部分が多い私の前に現れてくれた、「白い 光の千手観音」。
なんだろう ありがとう
助けに 来て?
加わりに 来て くれたんだよね
きっと
そう、思った。
千里が心配な事を言っていたし、確かに私も。
「光の部分」をどうやって、増やせばいいのか分からなかったから。
そうして私が「そう思い」、変容を受け入れた、瞬間。
その 「慶」はフワリと 私目がけて 飛び込み
私の 「なか」へ。
溶け込んで 行ったのだ。
「………っ、うん?いや、大丈夫、なんとも、無い………。」
一瞬だけ。
ピクリと反応した私の身体はしかし、すぐに元通りになりどこにも異常は無い。
「ん?あれ??寝て、た??」
気付くと金色に抱えられ、青い空が見えるのかと思ったら、それは水だ。
そう、まだ私達はこの「海底墓地」で。
作戦を練っていた、途中…………だった、よね???
「…………」
「やっぱり、「早い」な?」
えっ?
無言の金色、意味深なセリフの極彩色。
ある意味いつも通りの反応の、二人を目の前に。
彷徨う視線は固定されたままの闇と、変わらず美しい桃色を捉えホッと一息吐く。
そうして。
とりあえず、気になるセリフを確かめる為に、立ち上がることにしたのだった。
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