透明の「扉」を開けて

美黎

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9の扉 グレースクアッド

新しい 私 2

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 「ジャーーーーーーン!!!」


呼ばれて、飛び出て なんとやら

そんな感じで、出た、つもりだった。


あの、冷たい目、四つを見るまでは。



「ちょっとくらいは驚いてくれてもいいじゃん………。」

隅っこでいじけている私を包んでいるのは、いつもの金色である。

心配させていたのだろう、驚く事も、怒る事も無かった金色は、飛び出て来た私をキャッチするなり、懐に入れた。

そう、今は隅っこだけれど。

いつもの、体勢である。

まあ、「隅」とは言っても海の中である。
壁がある訳でもないし、なんとなく私的に「隅」な、だけだけど。


 でも。
 まあ 心配  する よね………


どのくらい、「いなかった」のかは分からないけど。
きっと短くとも心配はするだろう金色の、顔は見えない。

なにしろとりあえず、腕輪を確認した。

「うん、良かった。ある。」

「仕上がりとしては、まあまあかな?」

「えっ?」

そんな不吉なセリフを言っているのは、極彩色である。


首だけくるりと、振り返ると。

私が出てきただろう、場所にはあの巨大な桃色の蓮が、ニョッキリと飛び出ているし。

その隣には、相変わらずのモヤモヤした「闇」。

そしてその蓮を挟んで、反対側に極彩色と、中々シュールな光景が広がっている。


「しかし、これは中々だな。」

そんな事を言いながら、花弁に手を伸ばす千里は何か知っているのだろうか。

いや、んだろうけど。


闇はそのまま、揺らいでいるだけだ。

特にそれから、何の色も感じなくて少し不安になる。
闇を心配するなんて、変な感じだけれど。

しかし、千里が何か知っているならそっちに訊いた方が早い。

とりあえずよじよじと、腕の中で向きを変え「コホン」と言った後質問を始める事にした。
一応、体裁を整える為だ。

このままだと、全く説得力が無いだろうから。

 まあ あんま変わってないけど ね…



「ねえ。「仕上がり」って、何?「賭け」の内容は、千里は知ってるの?」

そう問い掛けた私を見る、紫の瞳は「知っている」色だ。

抱えている腕が緩んできて、それを解きながらも視線を逸らさない様に、じっと見て、いた。


くるり、キロリと私を検分する紫の瞳。

それから目を離さない様にしながらも、ジワリと沁み込んでいたであろう、金色にホッとして息を吐いた。
やはり、少しは減っていたのだろう。

自分を確認しながらも、変化する紫をそのままじっと見つめていた。


「………まあ、「別の問題」は増えそうだが
気焔お前が油断しなければ大丈夫だろうな。」

チラリと私の隣を見ながら、そう言った千里。

「?気焔、が?………油断??」

全然、意味が分からない。

「お前、変わった変容しただろう?見てないのか?」

「えっ。」

てか、そもそも。
鏡とか 無いんです けど???


慌てて自分の出立を確認する。

とは言っても、見えるのは髪、肌、服装くらいだ。

「えっ?!」

しかし、髪色は変わっていた。
それも、「濃く」。


「えっ、めっちゃ久しぶりなんですけど………??なに、紺?………でもないな………まあ青か………いやしかし、うん???」

肌は元に、戻った様だ。

両手から、足も確認していつもの肌色を確かめると金の瞳を探し、目を見てもらう。

「どう?」

「………。」

えっ。無言?!


しかし、ワタワタし始めた私に「変わっていない」と、言う金色。

 え?
 でも??

 「変わってない」っていう 反応 じゃ

  ない   よね?????



「お前、酷く「暗い色」ばかりを吸収しただろう?それに、その色は。特に「あれ」を含むからな。問題は起き易い。………気焔こいつフェアバンクスうちに戻した方がいいかも知れないな………。」

 えっ

気になるセリフを「これでもか」と並べた千里は、巨大な蓮の周りをぐるぐると回りながら何やら考え始めた。
まるで、ウイントフークの様である。

 て
 いうか  全然 全く  解決して ない けど??


再びキロリと見る、金色の瞳。

「えっ、大丈夫、なんだよね???」

「ああ。、髪以外は。変化していない。」


  えっ  「色 は」???


全く解決しない問題、しかし再び横から齎されたのは、もう一つの質問の「答え」だ。


「「賭け」は。結局、もう無効なんだよ。そもそも二人は「お前が繰り返すかどうか」、賭けてた。しかし今、もうお前は「全てのお前」を吸収したからな。まあ、勝ち負けで言えば、お前の勝ちだろう。」

「やっ、た………??」

「勝ち」という言葉に喜んだが、同時に疑問が湧き上がる。

「「繰り返すかどうか」??私が、「私」を吸収したから………?無効??勝ち、なの??それ。」

ニヤニヤとした紫の瞳は、闇と私を交互に見ている。


青い水流に揺ら揺らと揺れる、桃色の花弁と暗い闇。

その、同じく揺らぐ、揺らぎを見ながら「繰り返し」の意味を考えていた。



「あ。」

 思い 出した

「ねえ、『思い出せ 深遠』って、宙の呪文だっけ?」

目の前の、揺らぎが緑がかって、いるからなのか。
それとも側にある、水草の所為か。

何故だか今、その懐かしの呪文がフッと降ってきて、腕を上げ緑のに尋ねる。


「いかにも。『思い出せ 深遠 

  原初の目的を 来たる変容の夜明けへ

    向かって』ですな。」

「えっ。」

なにそれ。
ピッタリ、じゃない??

「よく思い出しましたな、姫様。」

「う、うん、ありがとう。」

久しぶりに「姫様」と、呼ばれて。

そう言えば始めから宙は私の事を「姫様」と呼ぶ事も、思い出す。


 え でも。 なんで 今?

 この呪文が  降ってきたんだ ろうか。


しかし。
タイミングが良過ぎる事といい、何か関連があるんだ、きっと。

そう思って、考えてみる。

それに、色は戻ったと、言えども。
私はきっと、「なかみ」に「海の観音」を加え「なんでもできる」私のままではある筈なのだ。

多分、もう「認識」したから。

きちんと、意識できれば、忘れてしまわなければ。
きっと、「あの私」も「この私」なのである。


 そう 全ては  私の 「なか」に


「確かに、思ったな………。」

観音になっていた時のことを思い出しながら、その呪文の意味を考えていく。


 「変容の夜明け」は、 これでしょ

 「原初の 目的」 これは 微妙

 でも。

 こないだ 思った 「あの」

  「神殿」「祈り在ること」「そのまま」

 確かに「あれ」は。

 「原初の 私」で ある はず


 うん? それなら??

 「思い出せ  深遠」?

 「深遠」?  これ かな???


「深遠」って。

なんか深くて、ずっとずっと、前の。

こと、とか だよね??


姫様 が? ずっと ずっと前に した

 「約束」「契約」 だった?

いや どうだろうか   でも?

 千里は 「もう無効だ」と。

 言ったんだ。


 私が 私を全て 併合することで?

  「無効」になる  契約?約束??

 それって   なんだ ろう?


「いや、「賭け」なんだよね………って事は、「勝ち負け」な、訳で………」

なんとなく、だけど。
きっとこの賭けは、姫様に分が悪かった筈だ。

闇は、甘くない。

きっと、自分に得がある賭けだったに違いない。

「ふむ。」

て、ことは。


少し、ぐるぐるしてみたけれど。

一つだけ。
自分の「なか」が、しっくりくる、「こたえ」があった。

だから多分。なんだと。
思う…?


「あの。もしかして。」

闇に向かって、話し掛ける。

しかし気付くともう、闇は揺らぎが無くただ、そこに「在って」。

しっかりと「固定」された様な、気がする。


 いや まずい  

   なにか が 違うな


多分、闇は私が大体何を言うのか知っていて、そしてその「こたえ」は正解なのだろう。



賭けに、負けた その闇が。


 逆に この「場」に。

  「固定」される ことと  なったのだ。



「えっ、待って?でも。」

なんか。

 は  違う。


私の「なか」から出てくる「想い」、それはあの極楽浄土で思っていた。


  「それだって 悪くは ない」


その、「想い」だ。

何者も。

 この「場」に 様なことは、あっては ならない。


 は、 わかる。


だって「縛り付けるそれ」は

私達が されている  されようとしている

 「それ」と なんら 変わりはなくて。


「えっ、ちょっと待って。まだ。考える、から。」


「因みにお前。「答え」は、解ったのか?」

「うん。は、私が「繰り返さないこと」でしょう?多分、私が「そこ」に座っちゃ、駄目なんだ。「それ」は。」

 「ずっとずっと、繰り返してきたことと、同じだから。」


そう  

  いつか  何処かでも 思ったんだ

  「自分」を 大切に するって


  もう 「なにか」の為に 

    自分を。 殺さなくても いいんだって。



「…………解っているなら、いい。」

そう言って、私を見守る事にしたらしい極彩色。

いつの間にか、金色は腕組みをして、私と闇の間に立っている。


 大丈夫なのに………。

しかし、「ポワリ」と灯る暖かい焔を胸に、一度しっかりと考えようと腰を据える事にした。

そう、とりあえず。

巨大な桃色、闇と極彩色、その間に金色を挟んで。


なんだかシュールな海のぐるぐるが、始まったのである。




















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