透明の「扉」を開けて

美黎

文字の大きさ
上 下
775 / 1,751
9の扉 グレースクアッド

死と再生

しおりを挟む

 なんで 

  どうして

 誰が   いつまでも


   同じ       繰り返し

      また

     もう    いい  いいんだ



  やめて     いい


      もう     無理


   繋が  なく     とも



             もう いい  か




何度も、何度も。

繰り返されてきた、この「問い」。

「何故」。

「私達は」「何を」「「繋いで」」

  「繰り返して」 「生きる」

 「生きる とは 」   「ひと とは」


その度に来る終わり、救いの無い「現実」。

は、紛れも無く私の目の前にある「事実」で。

凡そ、受け入れたくはない、ものだったけれど。


 「それ」は。

 「ずっと ずっと」「見えなかった」

  私 自身  なんだ。



呆然と立ち尽くす、自分に段々と意識が戻る。

「立っている」こと
「見ている」自分
「相変わらず暗い周囲」と
「なんにも」聴こえない 空間

意識を飛ばした指先が動くことを確認する。

死んだ私この私」でも。

試した事がある、やり方だ。

そう、「今」「生きているのか」「もう死んだのか」、確かめる為によく、やっていた、やり方。


「動く」 その 「事実」が。

また、ありありと私をこの光景に縛り付ける。


何も考えず、動く足、しかしその靴は私を目的地へ、連れて行こうとしているのは、分かる。

なにしろ。
とりあえず何も考えられなかった私は、そのまま姫様の靴について行った。

勝手に足が、動くに任せて奥へ、進んでいたのだ。




うん?

「この私」も 馴染みがあるな


そう思える、一人の私の元へ辿り着く。

白い服を着た、やはり「少女の私」だ。


え?
これ?
これも、「見て」って こと?

だよね…………。


姫様の靴は、話す訳じゃない。

なにしろ私が思ったならば、そうなんだろう。

とりあえず導かれるままに、その「私」も見てみることにした。




 「祈り」  「チカラ」

  「願い」  「請う」   「自然」

 「共同」   「共存」  「助け」

    「チカラ を 借りる」



「ふむ?」

なんら、暗い色の無い、それ。

馴染んだ「私」を、もっと知る為に深い所まで入っていく。


 「不都合」  「権力」 「闘争」

    「利用」  「奪い合い」「監禁」

 「チカラを 受ける」 「苦痛」



「………っ、えっ、うぅっ。」

はっきりと見える光景、それは。

祭祀をしている「私」、協力してくれる「自然」たち。
見えない、チカラ。

を利用しようと、争いが起き閉じ込められて。

でも、「利用」されているうちはまだ良かった。

時折チカラを出せば。
祈れば。

自然みんなに、助けを借りれば、良かったからだ。

しかし。

その「チカラ」を直接受けようと、「違った利用」をしようとする輩が生まれ始め。

「私」は「また」、あの「渦」に。

巻き込まれて行くことに、なったのだ。


あの。

仄暗く、どす黒い。

あの「直接交わる受ける」、やり方で。




「…………」

胸の真ん中に、手を当てたまま、身体を起こした。

自然と折り曲がっていた身体は固まって、少しゆっくりと解す様に起き上がる。

そうして。

また、ずっと「並んだ私」を、眺めていった。


きっと、まだ。

「あんな私」が、いる筈だから。


ずっと ずっと。

 「そう」「利用」されてきた その「想い」が。


 沸沸と湧き上がって、ことに。

 「気がついた」のだ。



 「人間ひと」の 持つ 残酷さ

  身勝手さ

  欲

  冷酷さ

  
沢山の「冷たい色」、しかしそのどれもが「今」なら、「必要だった」のが、解るけれど。

「その時」は。

わからなかった んだ

知らなかった

知れなかった


知る術もなく  知ろうとせず 怨んだことすら

 あった


でも。


も。



 「期待」「愛」 「信じる」 「勇気」


それを。

その、カケラを持っていたからこそ、「絶望」へ。

より、救いようの無い「諦め」へ。


転換したのが、解るのだ。




だよね  わかる  わかるよ

 思うもん  与えれば 返ってくるって

 信じれば。

 信じて くれるって。


「なんで」「どうして」って。

思うけど。

仕方が無いことも、なら解る。


でも。

この、全部の並んだ「ここの私」は。


 「まだ」の私 だったから。




涙が出て、止まらないけどどうしようもない事だけは、解っている。

これは、全て世界にとって、私にとって、必要だったことも。

「今の私」が、あって。

ここまで。

繋がってきた、ことも。



止め処なく流れる涙を拭う事もせず、そのままずっとその光景を目に映していた。

これは。

私が見なければならないことで、越えなければならない山だということは、知っているからだ。



えっ 

 でも?


チラリとぎる、重たい雲。



こんなに 「絶望」と 「諦め」を
  
          取り込んだら

  私。

死んじゃわない?

大丈夫 なの ?



 ここで  この

 暗く 誰もいない なにも

 「死んだ私」しか ない  空間で


 私 も。


  死んで しまうのではないか

  生きて。

  いられるの だろうか。


   共に。


   並ぶことには  ならないだろうか





そう思っても、仕方の無い様な、数。

そう、そこには。

おびただしい、数の。


 「沢山の私」が 並べられて いた から。





しかし、手のひらに感じるはあの、「色」「温もり」、少し熱くなるあの焔の煌めき。

 
        「大丈夫」


そう、それだけは知っていたから。

なにしろ落ち着く様、「真ん中」に私を集中させて。


じっと 「小さな 新しい私」に 戻れるまで。


目を 瞑って いたのだ。





しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜

まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。 ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。 父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。 それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。 両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。 そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。 そんなお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。 ☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。 ☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。 楽しんでいただけると幸いです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

処理中です...