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9の扉 グレースクアッド
見つけたもの
しおりを挟む「………痛………く、ない???」
真っ暗な闇、なんにもない、空間。
「えっ?「解放」するんじゃ、ないの??ここどこ?!」
姫様が飛ばされ、現れた穴の、中に。
落っこちたのか、吸い込まれたのか。
なにしろ「そこからなにかが、出てくる」と思っていた私は、何も見えない空間で途方に暮れていた。
「何も無い」と、思えるその空間は。
見渡す限りの、闇。
えっ
もしか して??
「穴」じゃなくて、「闇」に??
思い当たると何故だか、しっくりきてそれが。
事実なのだと、解る。
なにしろ兎に角、私はあの「いけすかないやつ」に、逆に吸い込まれた様である。
「えっ。なに?騙された?「解放」じゃなくて「収納」されてるじゃん………。」
とりあえず、見えない周りを見渡してみる。
目が、慣れたら。
闇ならば少しは何か、見えるかと思ったのだ。
それに、今は「青い私」だし………。
そう思った瞬間、「なんでもできる」がポンと現れた。
そう、何処かに私がすぐ忘れてくる、私の「なか」にあるものである。
「成る程。ホントは、そうなんだろうね………。」
私達、人間はきっと知っているのだけど「その時取り出せない」か「見えない」だけなのだろう。
「なにか」に、囚われて。
「できる」が「できない」に、変換している。
きっと、そんな感じなんだ。
それだけ、なんだ。
また一つ、自分の中に納得を取り込んで「なんでもできる」を発動させる。
早速、この「空間」を。
「見て」「把握」するのだ。
それは、得意だから。
そう、「見える」と思えば。
見える、のよ…………。
一度目を閉じ、自分の中で自分を切り替え、改めて目を開ける。
再び「小さな私」を細部まで想像し、そのままそれを自分の姿に重ねてゆく。
そうして再び、「青い私」へ更新した、私の視界は。
とんでもなく、クリアになっていた。
なに これ
しかし、そこに拡がっていたのは。
「見ない方が 良かったかも」とも、言える、光景だったけれど。
「海底墓地」、その言葉の意味がわかった。
ああ ここは
確かに。
海底 墓地 なんだ
だって。
あれ は
全て 「私」で ぜんぶ が。
なんだ、ろうか。
夢に見たどれとも違う、「それら」はしかし、全てが「自分」なのは、解るのだけど。
きっとここは。
本当の、海の底の底、もう水も無い地底の黒い岩肌が見える、洞窟の様な空間。
暗いが何故だか全てが見える、その空間には「沢山の私」が横たえられている。
今、私が立っている場所から。
遠く、遠く、霞む場所までずっと、続いている景色。
それは、信じられないけれど「知っている」、私が並べられている場所だ。
ああ 海底墓地って。
「私」「自分」の墓地なんだ
みんな が 埋葬されるんじゃなくて
いや そうでもあるんだろうけど
結局。
「これまでの全部の自分」が ある 場所
なんだ
目の前にある「事実」に、堕ちてくるピース、その並んでいるどの「私」も自分は知っていることが解って。
えっ
でも?
夢 あれ に 出てきた 私は
ない いない な??
そう思って見ると、「違い」がわかる。
全部、違う私なのだけど。
「いろ」が、似ている。
いや、「同じ」なのか?
どう だ?
ひとつ一つの「わたし」を素早くスキャンし、ずっと辿っていく。
その、どれもは「似た色」を纏い、しかし「これまでの私」には、無い色が見て取れた。
大きく分けて「二つ」の色を含んだ、並んでいる私。
今の私が。
「持たない 色」だ。
それは分かる。
なんだ ろうか
この色が
示す もの とは ?
全体を眺めていても、分からない。
それなら、とりあえず。
ひとつ、を。
そう思って、目が止まった「一つの私」に近づいて行った。
なんだか全体の中でも目を惹くその「私」は、長く私だったのか。
それとも馴染みが、深かったのか。
なにしろこれなら解るだろうと。
「その私」の横に立って、じっと見て、いた。
「 怖く は ない のか 」
ふと、降りて来たあの音。
えっ
干渉できるの??
「私だけの空間」だと、思っていた所に、降ってきた「音」。
少し、イラッとしなくもなかったが今の私は「なんでもできる」私でも、ある。
残念でした!
あなたの目論見は、失敗に終わる予定だもんね。
この「全部の私」を回収して。
ピースを全部、揃えて…………
「新しい 私に なる」
あれ?
これか??
再びパチパチと嵌るピース、繋がるカケラ。
「どんな 色も」
「全ての 私」
「変化 する」
「変化したことで 見える 新しい景色」
「待っている なにか」
「新しい 私 で。 戻る」
ああ だから
そう ね
「できない」訳は ないし
「怖い」ことも ない
「怖がる」訳が。 なかったんだ。
「大丈夫です。お生憎様。間に合ってますので。待っててくださいね?」
そう、返しておいて再びぐるりと辺りを見渡す。
そうか。
えっ
これ 「全部」?
いや 全部だよ
だって これ 「私」だし
置いて行けない
全部 体 いや 数えきれないくらい あるけど
実体? なんだ? 多分 あの蝶達みたいに。
多分、融け込む 筈
無意義に当てていた手は胸の真ん中、そこには。
いつもの、あの。
美しい光と共に、「あれ」があった。
「成る、程…………。この為だったんだ………。」
シンが。
ぐっと、拡げてくれた、「心臓の奥」。
ここに、「全部の私」を入れればいいのは、わかる。
でも、多分。
「なんの色」か、解らないと入らないんだと、思うんだよね………。
なんとなく、だけど。
なにしろとりあえず、とんでもない数、そこにある「私」をある程度整理し、把握しないといけないのだと思う。
大きく「二つ」の色を呈している、それらは。
一体、「なんの色」を表しているのだろうか。
多分「今の私」に、無い色なんだ。
それは、解る。
そうして再び、その馴染んだ「私」を見つめ始めた。
「観察」するのだ。
自分を観察するなんて、変な感じだけれど。
きっと「見て」いれば。
なにか、解る筈なんだ。
「ふむ。」
死んだ 私 寝ている 寝かせられている 体
歳の頃は同じくらいか 少し上か
髪色が赤茶で 外国の姿 痩せた手足
「いつもの方法」で 死んだ 私
何度も 何度も
繰り返して きた
「いつもの」
「苦しい」「痛い」「気持ちが悪い」「何故」
繰り返される 暗い想い
詰まる息 鈍い痛み 鋭い痛み 圧迫感
全身を虫が 這い回っている感覚
終わらない 外界からの不快な刺激
少し 間が あっても 繰り返される それ
擦れて 擦り切れて
「なんにも 無くなっても」
まだ。
削り取られてゆく 感覚
「何故」「どうして」「また」
「助けは 来ない」「神など いない」
「意味」
「生きる」「もう」
「死ぬ」「死にたい」「 死に たくない」
「いや」
「死んだ ほうが 楽 」
「ほうら また 助けは 来ない」
「なんにも 無い」
「誰も 知らない」
「見ない」
「聞かない」
「見なかったことに」 「棄てる」
「 やっぱり 」
「 なんにも 無かった 」
「もう いい」
「もう いいんだ」
「あれも どれも」 「それも これも」
「みんな 嘘」
「愛している」 「好きだ」
「ずっと一緒だ」
「幸せ」 「温かい」
「違った」
「どうして」 「何故」
「そんな こと が 」
「違う」 「違い」
「得られない」 「同じもの」
「どこにも」
「ない」
「……………ぷっ!………ハァ!」
溺れるかと、思ったその「なかみ」。
ぐるぐると回る景色、沢山の鮮やかでどす黒い色、襲う感覚も鮮明で生々しい、現実。
そう、「あれ」は「現実」だ。
これまでの、「私」が。
ずっと繰り返してきた、「現実」。
それが堕ちてきて、顔を上げずっと奥まで「私」を見通す。
その「どの私」にも、含まれる「この色」。
「それ」は。
なん だ
もう一度、「いろ」に入ろうとした私にポンと、降って来たのは。
「えっ」
まさか
いや
でも
そうだ
そうなんだ
だから。
えっ 嘘でしょ
これ
全部 そう なの ?
その時私に降って来た「いろ」、それは。
「絶望」と「諦め」で。
凡そ。
私が知っていた、「自分の全体像」を遥かに超える、その、数、深みを通り越した、「いろ」。
その「事実」を前に。
私は
呆然とするしか なかった。
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