透明の「扉」を開けて

美黎

文字の大きさ
上 下
772 / 1,751
9の扉 グレースクアッド

選択

しおりを挟む


 さあ どうする


そんな色を発しながら、揺らめく闇はカタチを成してはいない。

ある意味「揺らぎ」にも似た、その色を見つめながら私の頭はやや明後日の方向へ漕ぎ出していた。



これ」って。

なんなん だろう

 「いけすかないやつ」と  おんなじ だけど?

 あの 「出ようとしていた」やつ、だよね??

 で?

 あの 礼拝堂 の  靄 とも


    同じ ?   うん  同じかな


   靄 ?   黒い  うん?


ん?  あっ 私の蝶は?!

 ここに居るって ことだよね………?


 待てよ ? よく わかんなくなって きた な?


  「出ようとしていた もの」
 「いけすかないやつ」
  「礼拝堂の 靄」


自分の中で、それぞれの色を展開してみるが「色」は、違えど。

「質」は、同じなのが分かる。


 うん  じゃあ それはいいか。

 え? なら 蝶は? どこ??

いや でも   まだ出す気は無いみたいだね…

なにしろ  この 「こたえ」を

 出さねば。


 ならぬの だろう な??

 
じっと、見つめている間にもその「揺らぎ」が変化しているのが、分かる。


「神か なにか」だと、思っていた、もの。

圧倒的な、存在。

あの、どれもが「強大な なにか」に見えていた以前と違って、不思議と恐怖は感じていない。


「青い私」に、なっているからか。

それとも「ここ」だからなのか。

それは、分からないけれど。


なにしろ多分  「あれ」は。

 に 近い な?


私の中で一番それに近く思えるのは、以前夢の中で、ぐっと迫って来た、あの「純粋な想い」だ。

「寂しさ」だったか「興味」か。
その二つが混じり合っていた「あれ」は、人の感情そのもの、純粋な「想い」の一種だったと思う。

「あれ」は、「想い」で人間ひとでもないし、物でもない。

 しかし、そのゆえに。

ある意味「今の私」にも、近しいものだと、解るのだ。


 ああ 


そこまで考えると、また堕ちてくる「納得感」、自分の「なか」が変化するのが解る。


 「揺らぎの様な 闇」

 「海の観音今の私

 「純粋な 想い」


その、種類、存在のカタチは違うけれど。




  「 同じ 純度 」を 持つ のは わかる


   
    「 神 」

    「 真ん中の 私  」

    「 人でも 物でもない 

     人間の 純粋な「感情」 」


が  意味  する  こと とは。


「こたえ」が出そうな気がして、深い青を目に映す。

深海の仄暗さ、満ちている「すべて」、どの存在とも隙間の無いこの空間には、必要なヒントも全て「この中」に在ると教えてくれている様だ。


そう この 「存在」が充満する 空間 で。

青い水の動き、暗い靄、「揺らぎ」はどちらも「等しく」。

そこに、ある、ものだ。


    溶け込め   探せ

         「こたえ」 は。


   きっと  この  「場」に

      存在する 筈だ




頭にあった全神経を身体、周りに集中させ、再び「ブワリ」と触手を伸ばす。

そうして拡大すると。
「ポン」と降りて来た「約束」。

約束それ」が、自分の中にカチリと嵌った。


    「必ず ここへ 戻る」


約束それ」は。

姫様と闇の神が、過去に結んだ、約束。


 「闇の神」
        「海の観音」   「小さな私」

   「純度」  「想い」

  「混じり気の 無い」   「それ そのもの」


    「同等」    「神 とは」


  「光」   「わたしたち」


     「存在」


  「在りよう」   「在り 方」


            「賭け 」




ゆらり、ぬらり、ひらひら、きらりと。

深い青、紺と深緑が混じり合う、揺らぎの中。

小さな光と共に、思考のカケラが水中に浮かび、堕ちてくる。


「うーーーーーーーん?」

くるくると堕ちてきた「本当事実」のカケラ、並んだピース。

は。

私 に。

  なに を?

  示し たい?

  言いたい?  選ばせ たい?



「いや、待てよ?そもそも不老不死は?無いの?石は?姫様の代わりに私がそこに座ったら、姫様持って帰れないじゃん。え?まさか………?」

二人が、持って帰る………訳じゃ、ないですよね、はい。


一瞬だけ色が変わった紫を見て、ぐるぐるを止める。

じゃ、ない。
流石に。

じゃあ、闇は。

一体、私に何をさせたいの??


 私に何を  選ばせ たい の?




  「解放」


その時、ポンと浮かんだ言葉。

確かに。

私は「解放」も、するんだ。

 えっ

姫様解放、するの??

てか、ホントにこの下、なにかあるのかな………。


「揺らぎ」が動かないのを確認しながら、ゆっくりと背後へ回ってみる。

「うーーん?」

なんも、見えない。

でも、多分。
ある。

「なにか」は。


「解放」するのは、なんなんだろうか。

「姫様」?それとも下にある「なにか」?

ていうかこの人が「選べ」って、言ってるのは。

「私」か「姫様」、どっちかが。

「ここ」に、座れって、ことだよね………。


私が、ここへ代わりに座る事はできない。

それなら?
姫様を、置いて行く?
何処に?

そもそも不老不死、どこ?
何?


ぐるりと辺りを見渡してみるも、同じ景色が続くばかりだ。

遠くの方は、暗くて見えない。

手前の闇は「揺らぎ」を揶揄う様に、ゆらゆらと揺らしているし。

なんだかやっぱり「いけすかない」。

それに、最後に降ってきたカケラに気になるものがあった。

「賭け」だ。


 なにを 賭け て  いるのか

 そもそも 私たちは 

 賭け られる 様なものでは ない よな?


始めに「まやかし」だった青、悪戯な雰囲気、「神」と言われている存在、と私達の関係性とは。


ここは。

   「わたし」の 大切な局面だ



沢山のピース、いつもならばこんがらがる筈の思考。

しかし「大事な局面ここ」で選択を間違える訳には、いかない。

とりあえず握っていた手を離し、腕を組んだ。
本気でしっかり、考えるんだ。


「今の私」が、、私で。

選ぶ、「最高のこたえ」は、なんだ??


降ってきた一筋の光に目を閉じ、瞼にそれを感じながら真っ直ぐに考える。


そう、ごちゃごちゃしなくていいんだ。

「正しい」でも 「間違い」でも なく


 「ありのまま」 「単純な」私で。

 パッと、浮かんだ「こたえ」で  いいんだ。


それなら?

なんだ??



頭の中に充満する深海の水を、一気に「浄化」し「純化」し、「私の水」にして。

凪いだ空間を創り、パッカリと自分を拡げる。

 「なんにもない けど ぜんぶ ある」、

私の場で。

 「こたえ」を 見るんだ。





 でも、さ。


単純な私の「場」には、ひとつしか「こたえそれ」は転がっていなかった。


 「解放」する、なら。

 やっぱり 退けちゃえば よくない?

 姫様も 座らない

 私も座らない

 それ 即ち。


「はい。どちらも、ここへは残りません。」


パッチリと開いた目で、真っ直ぐ、その正面にある「揺らぎの様な闇」を、見つめて。

はっきりと、言ってやった。



 「  本当に  いいの か  」


少し、変化した音。
何処かで聞いた、このセリフ。

その言葉を聞いて、ピンときた。


「これ」は。

私にとって「他の色の私」を取り込む時に、聞く言葉だからだ。


 「いいよ。どんと、来いだよ。」


そう、答えた瞬間。


「ブワリ」と拡がった闇、それに吹き飛ばされた姫様と、開いた「穴」。

その、中に。

私は、すっぽりと放り投げられたのか、吸い込まれたのか。

なにしろ突然、真っ暗な闇の穴の中に、飛び込むことに、なったのだ。










しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜

まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。 ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。 父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。 それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。 両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。 そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。 そんなお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。 ☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。 ☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。 楽しんでいただけると幸いです。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

処理中です...