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9の扉 グレースクアッド
触手
しおりを挟む「 深く 暗い海 」
そう
そうなんだ もっと 暗い筈
何故
おかしな
どうしてこうも 明るい ?
心の隅に、ある想い。
静かに目を瞑ると、それが分かって頭がスッキリとしてくる。
なんだ
ヴェール ? 靄?
霞がかった この
「空間」 「場 」
「あ。「海」だから、か。」
パッチリと目を、開けた。
揺ら揺ら、モヤモヤと揺れる周囲、柔らかな水の揺らぎで満たされた、空間。
ここへ、来る迄は。
「水」という媒介が満ちたこの空間に自分を拡げる事は、容易いと感じていた筈だ。
しかし。
逆に「何かを隠す」様な、「膜を張る」様な。
そんな状況も、得意らしいこの場。
確かに「空気」ではなく「水」が満ちているこの空間ならば、間に「なにか」を挟んだなら余計に視認し辛い事は分かる。
そう、余計にモヤモヤ、ふんわりとして。
私の様な単純な頭にヴェールを被せるには、最適な空間なのだ。
そう、思って。
その「間にある なにか」の向こうを、探り始める。
何かがあるのか、無いのか、そもそも「海」ですら、ないのか。
それは分からないけれど、兎に角この空間が「まやかし」なのは、気付くと解る。
そう、きちんと「見ようとして」「気付いて」いれば。
容易く見破れるであろう、この「まやかし」に千里は気が付いていたのだろう。
いや、金色も、気付いてたかもだけどね………。
それにしても「あれ」は誰の「想い」だろうか。
「暗く 深い」
自分の「なか」にある、深海の様な深い、青とも言えない暗い青。
それは、この旅の始めからずっとずっと、私の中にある深く埋もれていた「想い」だ。
一度見えると、それが解る。
そう ずっと ずっと まえに
約束 した
「 なんだ ろう ?」
思い出せない。
でも、重要なのは解るから、きっと「今」じゃないんだろう。
とりあえずはその「約束」をまた胸の奥に仕舞い、辺りを探ることを再開する。
この空間に、自分を。
拡げて、ゆくのだ。
さて?
しかし どう しようか な??
「海」「青」 「揺れる」「水」
「深海」 「生き物は?」「伸ばす」
「拡げる」 「柔らかい」
ふむ? じゃあ あれ か。
フワフワと伸びる触手を思い浮かべて自分の周りから伸ばしてゆく。
身体全体から光の様に伸びる「それ」は、私のイメージの中では「イソギンチャク」のアレに近い。
海の、中で。
美しい色を発する、あの半透明で水に靡きながら動く、あの揺らぎと同化している動きだ。
そう、「探る」と言うよりは「溶け込む」のに近い。
きっと そう 多分
水のなかでは その方が いい
光でも ない 糸でも なく
水と一緒に 揺らぎ 靡き 溶け込んで
共にこの 空間に 拡がって 行くんだ
フワフワ、ゆらりと自分を伸ばすが、空気に光や糸を通すよりは少しゆっくりな、動き。
しかしなんだかジワリ、ジワリと自分に「くる」その感覚は心地よくて、ゆっくりと触手を伸ばしていった。
うん?
この辺りから 「色」が 違う
どのくらい、離れたのかは分からない。
実際、私の触手は視認できるものではないし、そもそもこの空間自体がどこまで「本当」なのか。
それは分からないからだ。
しかし感覚的には小さな部屋程度の距離、触手を伸ばした所から、なんだか「色」が違う。
その、外側が「暗い色」なのが分かる。
そうして「そこ」が。
「本当」の、私達の目的地へ続く、道なことも。
ふむ。
さて?
して、どうすれば?
「向こう側」へ、行く事ができる??
何故だか二人は私を見ていなく、辺りを見渡すだけで目は、合わない。
そもそも「この人達」も、「本当」なの?
この状態で金色が「私を見ていない」ことが、あり得ないと思えて可笑しい。
瞬時に熱くなる自分、ピタピタと頬を覚ましながら頭も冷やす事にした。
きっと、私は。
ここから出る方法を知っている筈だから。
さーて?
じゃあ、いっちょやってやりましょうかね…………。
そうして再び。
ぐるりと辺りを見渡し始めた。
私のやる事は なんだ?
ここへ来て。
まず やること やろうとしていたこと
目を瞑り自分を邪魔する見た目の美しい景色を遮断する。
本当のこと は なんだ?
本当の すがた かたち いろ 匂い
この 何も 触れない 感覚は
本当 なのか
静かに、息を吐く。
呼吸をゆっくりにして自分の「なか」の動きすら静かに、この場を把握する為の「静」を創り出すのだ。
なんだ どこだ 探せ 探せ
ある きっと 見つかる 見付け られる
私は できる 拡げ
開け
そう そうか もっと開くんだ
ふぅむ? 忘れて いたな ?
どんどん、どんどん自分の「なか」の扉をパカパカと開け、奥にある自分の中へ入ってゆく。
幾重にも重なる「自分」、殻なのか膜なのか。
それが綺麗に扉の様に開いて、私を「自分の中」に誘って行くのが、解る。
呼ばれて いるのだ
自分の 中の 自分 に
「そう」「ここだ」「おいで」「わかるよ」
「知ってる」
そう、言っている自分の「なかみ」、それがどれなのか誰なのか、それとも「全部」なのかは分からないけど。
兎に角ぐんぐんと引き込まれる様に自分の「なか」へ入って行った私は、真ん中に「この場の私」を、見付けた。
うん?なんだ
これ?
でも。
「これ」が海の案内役で
私の探していた「鍵」なのは わかる
その、「小さな海の私」は真ん中で小さく私を待っていて。
手に取り「一緒に」、この中を進めば。
大丈夫だと、言っている。
いや、喋ってるわけじゃ、ないんだけどね………。
なにしろ少し青い、その「小さな私」はさながら仏像か神像の様な大きさの「色形」をしている。
そして、少し透けているし。
海にピッタリな、青い肌。
「それっぽい」、布が重なる衣装に青く長い、髪。
本当に「小さな私」に見える、それは触れることはできるのだろうか。
自分の「なか」だという事は判るが、「小さな私」を正面に見ている私は少し逡巡したけれど。
手を、伸ばして。
それを、手に、取ったと 思った。
「あれ?」
指先に触れると同時に「小さな私」は掻き消え、私の「なか」へ同化したのが解る。
そして、それと同時に見つめていたその手が青に変化した事にも、気が付いていた。
えっ
ちょっと 待って
「青く見えるだけ」なのか、「青い」のか、「青く光っている」のか。
手を動かし確認してみるも、どれも正解に、見える。
しかし動かした感触は変化していないので、きっとここを出れば元に戻る筈だ。
うん、とりあえずそういう事に、しておこう。
「えっ、これ顔とかも青いのかな???」
ワタワタと焦り顔をピタピタしながら、辺りを見渡す。
「やっとか。」
そう、確認して貰おうと探した二人は「仕方の無い目」で既に、私の事を見ていて。
「えっ?私、これ大丈夫??」
呆れた紫の目と仕方の無いない金色の瞳を交互に見ながらも、乙女心はそれどころではなかったのである。
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