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8の扉 デヴァイ

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 うーーん  なんか

   とりあえず。



   きもちが  いい な


 うん。    あったかいし
 

     揺れては いない   けど


 回っても  いない    でも


   ぐるりと  囲む  この  円は。


   熱く  抱える  その  大きさは。



 一体  なんなの  だろう   な?



熱くは無いが、強く燃える、大きな炎なのか。

それとも、強い、光なのか。

それが「源」なのか、少し考えたけれど多分これは「考える」類の、ものではない。


私の、「真ん中」は。


     これは  私の  源


だと。

そう、言っているのだ。

それならそれで、いい。


それならば。


 ただ  その 真ん中 に

      在る  のみ   だ。



スポンと堕ちた、自分の中、いつもの様に流れに任せていたらどうやら「私の源」へ。

行き着いた、様である。


そこは。

まあるい、円の、中で。
球体なのか、円、なのか。

あの橙の川にも似た、赤と橙、黄色が混じった強い光の様な、これは。

真ん中に、「在る」のか「居る」のか、はたまた漂っているのか。

よく解らないがしかし、心地の良いその感覚に暫し身を委ねて、いた。


なにしろ、あの揺籠の中といい、私の神域と、いい。

「これ系」の不思議な場は、そこに在るだけで心地の良いものなのだ。


 うん?

 でも??

 「私の神域」と。 「私の源」って。

  違うの かな??


ぼんやりと浮かぶ疑問、しかし「こたえ」は降っては来ない。

けれども「違う」、感覚だけは、分かって。


 うーーーん  なんだ

   雰囲気  色  重さ  厚み?

 勢い   チャージ具合 ?


「なんだ、ろうか。でも、「質」が違うのは、解る。」

考えても、答えは見つからなそうだし。

今、降って来ないという事は「なかみ」に応える気が無いのか、「今」は解らないのか。

とりあえず、どっちにしても。


「…………うーーん。でも「満たされる感」は、こっちのが…強い………いや、早い?なんだ、勢い??うーーん。」

なにしろここに、いると。

自分の中が「満ちて」いるのは分かるし、お腹がいっぱいとはまた違う、充足感。

多分。

「身体」じゃ、なくて。

「なかみ」か、なにか。
「心臓」の辺りが、ポワリと暖かいのが、分かる。


「ふむ。」

私の神域では、独り言も多く、何かを垂れ流したり重いものを下ろし、純化する感覚が、強いけれど。

ここは、どちらかと言えば「出す」より「入れる」感覚が強い。

なにしろ満たされた感覚に包まれて、考え事はこれ以上、捗る気がしないし。


 兎に角  ここに いれば  満ちる


その、抗い様の無い、正しさに、ただゆったりと身を委ねていた。




うん?

でも?

なんか、話の途中だったよね??


気持ちはいいが、満ちている私はとりあえず元気だけは、有り余っている。

なにしろ常にチカラが供給され続けている状態なのだ。

大人しくしていろ、という方が無理。

「ん?これ、出るのか??寝て…ないだろうし。とりあえず………造船所だった、よね…。」


自分が堕ちた辺りの景色を脳内で検索すると、きっと心配しているであろう、二人の水色の髪が頭を過ぎる。

「あー、そうか。」

とりあえず、ホントに見つめられてたらちょっと気まずいな………。
まあ、今更だけど。


段々とハッキリしてきた、実感、くっきりと浮き上がってきた輪郭にゆっくりと焦点を合わせた。

良かった。
イストリアさん、だけだわ………。


そう、案の定本部長はそっぽを向いて何やらブツブツ言っていて、隣の薄茶の瞳が覗き込んでいるのが分かる。

その、色を確かめる様にじっと見つめ、自分の中の「その色」と「イストリア」がカチリと合うと。
景色が、色が、ハッキリとする。

そうして。

「お待たせしました。」

そう言って、ニコリと微笑んでおいた。


私が自分の中へ行っている間、「どう」だったのかは分からないけど。
多分、この感じならきっと説明してくれる筈だ。

そう思って、そのまま薄茶の瞳を見つめていた。


「いやね、何か。面白そうな事に、なったじゃないか。」

「え?」

心底楽しそうな色を浮かべた薄茶の瞳を、そのまま観察する。

この瞳は。
本部長に似た、「いいものを見つけた目」だ。

私も、よくされるから解る。

「いや、「不老不死」だよ。私もね?風の噂では聞いた事があるよ。あの、誰だっけな、シャットで。そんな事を研究していた者がいたろう?あれは不老不死ではなくて、不老だけだったか?いやまあ、それはいいが。」

きっとヘンリエッタの事だと思うが、私も研究内容について詳しくは知らないのだ。
詳しそうな人は、まだ壁に向かってブツブツ言っている。

二人の話はどこまで進んでいたのだろうか。


「とりあえず、君に「お願い」したのだろう?まあ、そもそもへ行けるのは長だけなのだし、君ならば可能性が一番高いと踏んだのだろう。まあ、確信に近い、「お願い」だよ。君がやらざるを得ない、それは。「お願い」としたのは、アリスが幾分手を加えたのかも知れないね。それにしても………。」

「どう、しましたか?」

単純に、イストリアが「不老不死」についてどう思っているのかが、気になる。

考え始めた横顔に、サラリと掛かる薄い水色。

チラリと向かいも確認して、色の濃淡を確かめ遊んでいた。

答えが、やって来るまで。
私の有り余る元気は、その詳細を検分することに注がれていたのである。


「私が気に、なったのはね?」

そう言って話し始めた色は、あまり芳しくない色である。
その変化を感じながらも、無言で頷き視線を薄茶の瞳に戻した。

「君がそれをどうやって取ってくるのか、それはあるのか、無いのか、はたまたどんな「もの」なのか。色々疑問はあるが、問題は「取って戻って来る」所なんだよな………まあ、戻らなければ「それ」を取ってきても意味が無いが………うーん。」

「その、「戻ってきて本当に軸にならずに済むのか」って、所ですよね??」

向かいの水色に注がれていた薄茶の視線が、ゆっくりとわたしに戻る。

多分、考えている事は同じなのだろう。

返事をしないまま、再び考え始めた色を、そのまま眺めていた。


「でも。また、私を軸に据えるなら、「箱舟これ」は飛ばなくてもいいし、世界は。だったら、やる事は変わりませんよ。問題は「不老不死それ」を取ってきてあの人達が使う、のか?なんなのか、とりあえずそうなって箱舟で逃げる事なんですから。」

「しかし。それなら、それで。いいんじゃないか?」

いきなり口を挟んだ本部長は、物騒な事を言い出した。

「えっ?」

「だって。ここはきっと、御しやすくなるだろうしお前が望む様な世界を作る事は可能だろう。………まあ、候補として考えておくのも悪くないな………。」

「えっ。」

そう、言って。

また自分のぐるぐるへ戻っていった眼鏡をじっと見ていたけれど。

ふと気付いてくるりと向き直ると、やはり薄茶の瞳は私に向けられていた。


「ふぅむ。君自身は。どう、思うね?」

何の色も含まれていない、その瞳に問い掛けられて気が付いたけれど。


「その人の瞳の色」と「意図の色」が あるな?

人間の瞳の色は、複雑だ。

「目は口ほどに物を言う」と、言うだけあって。

目を見れば、「今の私」ならほぼ、その奥にある「色」「意図」が分かると思う。


「ふむ。」

そんな事を考えつつも、「どう思う?」というイストリアの質問を考え始めた。


この、安心の空間で、訊けばなんでも答えが返って来そうな、場で。

考えるには最適の疑問でも、ある。


それは、結局。

私が、「不老不死それ」を持って帰ってきて「どうするのか」、これからの自分の行先を決める、大切な話だったからだ。

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