透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

開放 解放

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 「  開放しろ 


            解放しろ  」



突然、降ってきた、この祝詞の一節。


 「ああ そうか

    開けなきゃ 解らないんだから


  まずは 開け放って   行って


   解き放って   帰ってくれば


         いいんだ   」


素直に、そう思って。

自分の中で、噛み締めていた。


自分の中に、微かに残っていた、「少しの怖れ」「迷い」「まだ」という足を引っ張る様な、重さが。

ふと降りてきた光の様なイメージに「パチン」と爆けた様な気がして、色が変わった頭の中を確認してみる。

ずっと最近、頭の周りに薄らと纏わりついていた靄がスッキリと晴れ、私の神域の様な「白」になったのが、解る。


 少し青い 白

それは。

あの時見た、変化したグロッシュラーの空にも、似ていたんだ。



「どう、した?」

また私の好きなこの訊き方をしてくるこの人は、この頃解ってやっているのではないかと、思う。

チロリと一瞬、視線を投げたがあれは、危険だ。

あの色に侵入されたならば、私のこのやっと降ってきた白が染まってしまうのは必須。

そう思って立ち上がり、フラフラとホールを彷徨き始めた。
 
今日も色とりどりのスピリット、私の蝶達が舞うこの空間は元々が「私の色」だからなのか邪魔になることは無い。

 いや?

 あの、色も?
 
 じゃあ、ないんだけど ね………


「そうそう、待ってたって。ここでずっと、ぐるぐるしてたって。別に誰かが連れてってくれる訳じゃないんだから、行けばいいのよ。自分で。うん。待ってるだけじゃ、駄目。」

「決めたじゃん、あの二人も準備してくれてるし?大丈夫な事は、大丈夫で、行かなきゃ分からないんだから。とりあえずチャッと行って帰ってくれば?よく、ない………?えっ、でも?」

「「解き放つ」って、なんだ、ろう…………???」


「だから。なにを、言ってるのだ。」

いつの間にか背後にいた、金色にキャッチされ首だけくるりと回す。

 うっ 
 ちょっと その キラキラ?

 収めて くれないかしら???


この頃、形を潜めていたあの少し青い星屑がチラリと見える金色の周囲。

これって。
どう、なってるんだろうか?

「他の人には、きっと見えないんだよね…………。」

ブツブツ言い始めた私の頬を挟み、金色の瞳が正面に来る。

「うっ。眩し 」

文句を言ってみたものの、きっと私が話さない限りはこのままだろう。
それも分かっているので、とりあえずは口を開いた。

しかし、勿論話の内容は纏まっていないけれど。


「うーーん、あのね?とりあえずなんか、行く事は決まって。でも準備?なのか?してくれてる間、やっぱり少しぐるぐるしてたけど、「いいよ」って、言われるのを待つんじゃなくて。自分で、「今だ」って決めて、行こうと思って。」

静かに私を見つめたままの焔は、揺らがない。

それなら?
話してみても、いいだろうか。

「子供達のところには、行ったし。…………あとは…多分、チラッと長に会って。行った方が、いいと思うんだけど………。」


「どう思う?」までは、訊けなかった。

だってもし、この人が反対したって私は。
行くつもりだったからだ。

それに。

私だけ、この温もりに包まれたまま、デヴァイここを後にする事は、できない。

会ってみて、なるのかは分からないけど。

でも、多分。

次へ行くことは決まってるから、大丈夫だとは、思うんだよね…………。


きっと私の頭の中など、全部解っているのだろう。

目の前の焔に、「探る」というよりは「確認」の色を見てとると、とりあえずの心配を放り投げて瞳の観察に移ることにした。

きっと、彼は否定はしないだろうから。
自分の中の焔を、纏める時間が必要なのだろう。


いやいや、それにしても。

相変わらず美しいね…………。


 「「美しい、な」」

 あれ?

突然、動き始めた自分の唇に驚いて金の瞳を確認する。

しかし、分かっていたのか揺らがぬ色は、真っ直ぐに私を見て返事をした。
 

 「「もう、決めたのだろう?」」

「ああ。」

 「「ならば安心させ、包んでおやり?このが満ちねば。何事も、成る、まいよ。」」


うん?

金色の唇が再び開く前に「自分」に戻って来たのが、分かる。

なんで?今?

 でも。

 あそこには。 シンも。 

 いる から??


はっきりと姿を見た訳ではない。
しかし、始めからある確信、きっと長を守ってくれているだろう彼は。

今は、どんな姿で。

どう、しているのだろうか。


どう、声を掛けていいものか、迷ってそのまま焔を見つめていた。


ゆっくりと、変化する焔。

その色を見つめながら、彼の中の変化も、思う。


そうして少しだけ激しく赤を含み、燃えていたそれは、徐々に落ち着きを取り戻して、私を捕らえたから。

とりあえずは、大人しく。

それに、包まれることにしたのだ。

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