透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

神域にて

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て、言うか。

本部長あの人、やっぱり………。

凄くない………???


白く静寂な空間、ジワリと沁み込む馴染んだ空気。

心底安心できる腕の中、フワフワとした心地良い場所。

私の頭の中は濃い目なのだが、整然とはしていて。

一気に、灰汁あくの抜けた様な頭の中は、見通しが良く片付いていた。

そうしてその真ん中で大きく光るは、星形の、光。


頭の中心に陣取った「それ」は。

「お前の次の目標はこれだ」と大きく私にアピールしてきていて、難しい気もするが分かり易いその姿に、心は安堵の色で包まれて、いた。



沁み込む私を潤す色は、静かに張る美しい空気、澄んだ白と透明な光。

耳に届いた水音から、金色が私の神域へ飛んだのが分かる。

その、温かい腕の中に包まれながら私の目の前には「想像創造の星」が、輝いていたし。

その、前には。
煮詰まり切った、上澄うわずみ灰汁あくが、ゴロリと転がっていた。

その重々しくも苦い、私の中にあった「其れ等」をじっと眺める。


ウイントフークが、言うには。

この、「複雑さを醸し出すいらないものたち」と同じ所に居ると。

「私に影響」「狙われる」「見える範囲」
「欲が出る」「堂々巡り」「見えない方がいい」
「繰り返し」「理解しない できない」

そんな様な事を、言っていて。
どうやらイストリアも、同意見。

思い出されるは、あの時イストリアの部屋で。

赤のベットカバーを見ながら聞いた、この言葉だ。


 「君は共感性が高い」

あの時「貴石はまだ」と、反対していたイストリア。
まだ何も解っていなかった、私が姉さん達や他の人の、「強く深い色」に当てられて。

「染まり」はしないが、「重く」なったり、影響されて暴走する事が解っていたのだろう。

今、思えばそれがよく分かる。


だから、私はこの沼の灰汁の中から、出て。

その上の、空から。

外からきちんと「それ」を眺めて、「星」になり、「光」を降ろせと、言ったんだ。


確かに、そう言われればよく、解る。

ぐるりと白く清浄な空間を見渡し、改めて感じる世界次元の違い。

なんて、言っていいか分からないけど。
表現的に、合っているか微妙だけれど。

「私の感覚」で表現するならば、デヴァイあそこ私の神域ここは「高さ」が、違う。

ここから外に出ると、深い沼に嵌り取り巻かれ、自分に灰汁が纏わりつくのが分かるけれど。

ここへ、戻って来たならば。

スッキリと清浄な「私」に戻り、「灰汁」と「事実」がきちんと別れて物事もはっきり見えるのだ。


それに気付くと、ホッとしてとりあえず「灰汁」と「上澄」を小さな川に流していく。

ゆっくり、一つ一つ、ポイポイと私の流れの中に放り込み、見えなくなる川の端まで見送って一つ頷いた。

きっと、あれ等も。
美しい「色」に濾過されて、私の中に戻って来るのだろう。


そうして再び、待っていた腕の中へ帰り「事実」を目の前にしてただじっと、眺める。

考えるでもなく、並んでいる「事柄」を「見る」のだ。

そうすると、すっきりとした頭で見えて来るのはその「関係性」と「動きのパターン」、それを踏まえて私が。

どう、動くのか。

どう、すれば。

全てにとって、一番、いいのか、だ。

そんなに大それた事ができるとは思っていない。
ただ、自分の「やりたいこと」を。

純粋に「思う」、「こうなれば一番いい」という願いにも似た「星」を、私が実現できる、方法とは。


「やっぱり………ここから、こう、やって?降らせる?届くの、かな………?でもな、確かに。「ここから」よりは、いいのは解る。」

指で白い石床をなぞり、想像の図を描いていく。

そうして見える、こと。


やっぱり、「同じ土俵あそこ」から光をいくら降り注がせても、きっと。

あの人達には、届かないんだ。

いや、「届かない」と、言うよりは。
「私が」影響を受け、違う方向に作用してしまうか、「光が弱い」という事なのだろう。

その、「チカラ」はきっと如何様にも利用できるエネルギー源でも、あって。
きっと、それをそのまま貯めたなら、また長の様に。

利用されるだけ、なんて事になり兼ねないのだろう。



まだ、私は弱い。

きっと、もっと、純度を上げて。

「何者の侵入をも赦さぬ」、「不可侵」の存在に、なったなら?

若しくは。

「何色をも含む」、「全てを取り込み濾過する」存在、ならば。

戻って、来る事も、できる??


そう、するには。

どう、すれば…………。


しかし既に、私の中で「こたえ」は出ている。


「やっぱり…………まず、行くしか。ない、か…………。」

ここまで来て。

嫌な訳じゃ、ない。
でも。

やはり自分の中にある少しの「抵抗感」と「不安」、次の扉への「暗い感覚」、しかし。

次の扉そこ」には。

セフィラが、いて。

私の蝶達だって、いるんだ。

あの子達は私がグロッシュラーから預かって来た、「想い」でも、ある。
置いて行く訳には、いかない。


でも。

「実際…………?行け、る?いや、行けるんだろうけど………?」

そう、きっと。

私が不安に思っている部分は、その扉を「潜った」で。

「なんとかなるのか」
「解るのか」
「大丈夫なのか」

そんな、不安で。

 それだけで私が、「星」に、なれるのか。

 そこから「光」を。

 全てに、届かせる事が、できるのか。


だって、潜っていきなり「くるり」と反転し私自身がレベルアップする訳でも、ない。

デヴァイここに来た時だって。

ぐるぐるして、右往左往して、知らずに縮こまってみたり、でも周りのみんなに囲まれて。

なんとか、やって来れたんだ。

しかし。

次の扉は何と言っても「終焉の墓地」、と言われている場所。

予想通りならば、長以外は誰も立ち入ることのできない、不可侵な場所の筈だ。

位置的に、場所的に。
なんとなく、「長の血縁」が入れる事は予測できる。

 でも。

 そう、きっと。

グッと身体に力が入り、無意識に口元が引き締まる。


向こうに、いつも差し伸べられていた温かい、手は無いだろうし。

私はきっと、一人で。

あの「いけすかない なにか」と相対し、セフィラを探して姫様も。
探さなければ、ならない。


…………うん、また「一人」って言ったら怒るかな………。

以前、金色にその事で少し咎められた色が、浮かんで。

突然ポワリと燈る、焔。
それは瞬く間に私を包み込んで、落ち込んでいた暗い想像の淵からフワリと掬い上げた。


「どう、した?」

きっと、解って訊いているのだろうけど。

その、優しい色を宿した瞳に頷いて口を開く。

しかし唇から言葉が紡がれる事は、無くて。

ただ、すぐそこにあった形の良い唇に精一杯、「私の思い」を伝えて、いた。

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