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8の扉 デヴァイ
生贄の定義 2
しおりを挟むて、言うか。
「私自身」の、「本当の望み」は。
「 ただ 在り 祈る
光で 在る
清浄な 空間で 」
そう、正に。
「今 在る 長 そのもの 」の 様な。
「えっ、でも?待って??」
ぼんやりと浮かび上がった、幻想的な木立を打ち消す様に、首を振る。
「生贄」と言われると、モヤモヤと湧いて来る嫌悪感、しかし私の思うそれは確かに「状態」としては、「同じ」な事が分かる。
え?
じゃあ??
「何」が 違うんだ ろう ???
「場所?違うよね…………考え方なんだろうけど…「自ら」行く?、成るのと「させられる」の、違いなのかな…………でもな…………??」
スッポリ自分の中に入っている私の上から、朝の声が降って来る。
どうやら独り言は聴こえていた様だ。
「「視点」の違い、なんじゃないの?何処から見るか。あっち側から見ると「生贄」なんでしょうけど。こっち側から見ると「ただそこに在るもの」な訳でしょう?………なんて言ったらいいのか難しいわね?」
「成る程………「視点」、ね………。」
だと、すると?
「でも、さあ?例えば神様とか、仏像とかって「祀られてる」訳じゃない?でもある意味それが「護り」ならば、それも「生贄」だって、こと???」
「まあ、ある意味そうなのかもね。だって、現に。長は、「神」なんでしょう?」
「あ。」
え
確 か に ???
「えっ、ちょ、っと?待って…………。」
しかし、パタリと閉じられた私の空間はきっと朝の声がもう届かぬ場所になっていて。
嫌に静かな、白い場所にいる様な感覚である。
……………うん???
気になってふと、顔を上げると目に映ったのは白い石の床、内側から発光する柱と水の流れる、音。
どうやら私の神域に。
自動的に、移動した様である。
「えっ、何これ便利?………なのか??」
しかし。
「君の内側にある」というイストリアの言葉が浮かんで来て、腑に落ちた。
そうだ、ここは。
私がいつでも、自由に行き来出来る。
私だけの、空間 なんだ
え あの色も 来れるけど………
いやいやいや その話は 後よ
とりあえず、ゴロリと横になり空を見上げて大きく息を吐いた。
体の中の、空気を「神域に合わせる」、そんな感じだ。
なにしろとりあえず、ここに馴染ませ「ただ 在った」なら。
「神域」に ある 「なにか」
それはきっと、「神」や「要」、「軸」、「今の長」に近い様な気がして。
「なにか」が解るかもしれないと、思えたからだ。
静かに流れる水音は抑揚が無く、ただ私の心を落ち着かせ「違和感」を流していく様な、役目をしていて。
冷たくはない、石の床からはチカラが緩やかにチャージされているのも、分かる。
薄く発光している柱の光、「光」は「自然そのもの」「この星のエネルギー」だというのも、なんとなく解って。
この世界、デヴァイやグロッシュラーが地球と繋がっているのかは、判らないけど。
実際問題、「全部でまるっと、ひとつ」なら。
星の祭祀で繋いだ光の感覚、「全ては繋がっている」という、想い。
そして、「多次元的に存在する 時空間」というデヴァイに来てからの自分の経験が裏打ちする納得感。
なにしろ私自身がそう思うならば、きっと。
「うん、そうなんだよ。」
そう一つ、呟いて。
ただ、いつもの様にその心地良さに身を任せ、だらしなく寝転がる、この至福の時間。
多分、今「私の神域」にいる間の時間は外の時間軸とは別に働いているのだろう。
なんとなくそんな気がして、とりあえずは心ゆくまで。
自分が、納得するまで。
いや、「なにか」が自分のなかに、落ちて来るまで。
寝転がっていようと、思った。
「神」「神社」「神域」「自然の神」
「人間が祀られているもの」「概念が神のもの」
「長」「チカラを溜める」「エネルギー」
「器」「護り」「要となる もの」
「核」 「芯」「真ん中」「光」
「源」 「愛」 「全ては 」
…………繋がって、いて。
「エネルギー」は、「愛」でも、あって。
「愛」は「光」でも?ある…………。
私達みんなは、「光」、だから「愛」でも、あって??
そう、全部が全部、きちんとみんなが「自分の色」で、輝いたなら。
「大きな 光の 玉」みたいなのが?
でき る? よね??
「だから結局、自分のチカラは自分で捻出できるって事なんだよね………多分。それを石が賄ってるから?なんかおかしくなって?うん??…………話が逸れてきたな………?私は…………神の?」
事を、考えてたんだっけ???
いや、実際問題、ぶっちゃけ。
全部が全部、終わって、片付いて心残りが無くなったなら?
「軸」に?「生贄」?「神的なもの」に?
なれ る?
いや駄目だな。
…………だって。
私は、まだ。
「えっ、ちょっとこれ言っていいやつ?誰も聞いてないけどさ、でもなんかちょ、ちょっとアレだよね??え?我が儘?いやいや、違うでしょ。私にも、そりゃ幸せになる権利というものがあって……………………………うん。」
いきなり熱くなってきた顔をフルフルと振り、ピタピタと頬を冷まして再び深呼吸を、する。
「いや、違うのよ。いや、違くもないんだけど?」
その、「生贄」と「在る」の、「違い」を。
確かめようと、してたんじゃなかった??
「うん。そうそう。」
一人ツッコミをしつつ、何処かへ行っていた頭の中身を再び引っ張って来る。
なんだか、色々な事柄を並べて整理していたら「全部は愛で光でエネルギー」みたいに、なったけど。
「うん、それはいいのよ。万事解決。それは、それで。みんなが、空見上げて解決していくやつだから。うん、私はとりあえず私の問題を…………」
考えなくては、ならないのだ。
でも?
実際、「神様」と「長」の違いと言えば「生きてるのか 人間なのか」的な、話じゃない???
「えっ、それそもそも論?」
でも、ミストラスが言っていた「普通と少し違う姿」という言葉をふと、思い出す。
生きて…………るの、かな…………?
しかし。
あの、黒の廊下を走っている時感じた感覚。
私の「なか」に応える、あの「光」は。
「生きてる」気が、する。
「どういう状態」なのかは。
分からない、けれど。
「…………うーーーむ。」
実際、「神様」との違いを考えるから、分からないのかも、知れない。
それなら?
「生贄」と言われて感じるモヤモヤ、それは、もし。
「この場所を好きに使って 祈っていい」と言われて用意された、とても素敵な私好みの。
空間、だったならば??
「えーーー、でもお膳立てされてる時点で、多分駄目だよね………なんでなんだろうか。透けて見えるから?でも、物凄い善意から、かもしれないしね………???」
なにが。
嫌、なんだろうか。
「状態」は同じでも、「発露」が違うから?
「まあ、それも、ある。でも。それだけじゃない、気がするんだよな………。」
ふと、朝が言っていた「視点」という言葉が降りてくる。
「視点…………。」
「 どこから見るか 」
どこ。 ここ? あっち? こっち?
崇めて欲しい、訳じゃ、ない。
別に私の祈りに、気が付かなくとも。
降り注ぐ光に、無関心でも、いいのだけど。
「…………うん?これ、かな、もしかして?」
自分がいる位置、それを下から見ている嫌な視線、それを上から見ている光の視線。
「視点」が、違うならば。
きっと、「場所」の様なものが違う筈なんだ。
だから、多分。
下から見ている人は「搾取」「生贄」「マイナス」方向から、見ている視点で。
上から見ている人は、ただきっと、その光を。
そのまま、素直に、受け取ってくれるのだろう。
気付いていようと、いまいとも。
でも。
ただ、「祈れれば いい」と、言ってた私が。
「祈りの受け取り方」に、不満を抱くのは違うのだろうか。
ただ、光を降らせたいと。
思っているのに、「降らせたくない場所」が、あるってことなの?
「…………そう、なのかな………。」
差別している、つもりは無い。
でも。
そうなんだろうか。
「判らない…………。」
ぐるぐる、ぐるぐるしている私の「なかみ」、スッキリした筈の頭の中に、再び溜まる薄い靄。
その時。
自然と縮こまっていた身体の真ん中に、「ポワリ」と燈った、「色」があった。
「吾輩が、思うに。」
あ。
「お前は、それが悪い方に向かうのが、解るから嫌なのではないか?」
「………嫌な、方?」
朝が心配していたのかも、知れない。
向こうから歩いて来る金色の光が、優しく私を包んで小さくなっていた身体がゆっくりと、解けて行くのがよく、分かる。
そのまま抱えられながら、「それで?」という目で続きを促した。
まだ、少しだけ。
甘えていたかったからだ。
「力は。「発した様に」戻って来る。だからお前がそのまま「そこ」に「座れば」、「そう 在る」だろうが。」
「だかしかし、邪な目的で「そう 据えた」ならば。きっと力は上手く働くまいよ。悪くすれば、逆に作用する事もあろう。」
「成る、程……………………。」
パチクリしながら、その金の瞳を眺めて、いた。
確かに、そう言われてみると。
「それ」が引っ掛かっていた事なのだと、ハッキリと分かるのだ。
「気に入らない」とか「嫌だから」とかじゃ、なくて。
「逆に作用する」「悪い方に働く」のが、嫌なんだ………。
でも、本当は。
「愛」は、「光」はお日様の様に。
「全ての存在に」等しく、降り注ぐものなのだろうけど。
今は、無理って、事なのかなぁ…………。
「なんだ。」
「えっ、なんで。解ったのかなぁと、思って。」
固まったままの私に、少し細まる瞳はほんの少しだけ。
久しぶりの「嫌なものを見る目」を、している。
ま、「仕方の無いもの」より、いいか………?
いや…………??
そのまま小さく溜息を吐いた金色はしかし、何故だかしっかりと、チャージはした上で。
少し頭の回転が戻った私に、こう言った。
「なにしろ。吾輩、若しくは「石達」は。目的を果たさねば、ならん。」
瞬間、過ぎるは硬い、濃金色。
しかし瞬時に緩んだ瞳は、続けてこうも、言った。
「お前がこの扉を進み、成長している様に。また扉を潜れば視点も変わろう。それに吾輩も。いや、「私達」も、か?変わっている、事だしな。」
「うっ。」
いい瞳で、そうニヤリと言う金色。
それは、きっと祭祀の時に私が言った「私達だって、できる」の、続きの様な、言葉で。
照れ臭くは、あるけれど。
なんと言ってもこの石の変化が分かるその言い草と内容、私達の未来を明るく考えている事が、分かる、その。
言葉の、色が。
静かな、白い、空間で。
真っ白な光に包まれる、頭の中。
いっぱいの胸は暖かく、そしてなんだか、鼻が詰まってきた。
「…………大丈夫。大丈夫だ。」
無意識に流れていた涙、私の「なかみ」が伝わったのだろう。
ただ「大丈夫」を繰り返して、暖めてくれるこの胸の尊さを、ジワリと味わう。
多分。
この旅は、確実に「終わり」に、近づいていて。
なんとなく見えて来る「不安」、しかしそれと共に同じくらいそこにある「大丈夫」という根拠の無い、「自信」。
「自信」が何処から来るのか、何故なのかは、全く分からないけれど。
いつだか思った
「曖昧な終わりなんていらない」ということ
「ハッピーエンド以外無い」という 確信は。
未だ、私の「真ん中」にしっかりと。
そう、まるでそれが「核」の様に据えられて、いて。
「…………うん、大丈夫。知ってるんだ。」
そう、自分の全部に、言い聞かせると。
そのまま心地良く、フワリとした焔の中で。
ゆっくりと、目を閉じたのだった。
応援ありがとうございます!
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