透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

なんの ために

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 「私は 次の扉に

    光りに行けば いい

    星になれば  いいんだ  」


そう、決めてからは。

、すればいいのかは全く分からなかったけど、心だけは穏やかに何故だか気持ち軽く、過ごす事ができていた。

思えば至極、単純な私の事を思っての本部長の言葉なのだ。

多分、いつだって、きっと。
的確に、私に「道標」や「印」をくれた彼の事だから何か私の知らぬ意図が有るのかも、知れない。

でも、分からないなら分からないで、いいのだと思う。

そう、難しいことは、担当者に任せて。

「私は、私のできる、単純なことを。すれば、万事解決…………。」

うむ。


「なぁに、言ってんのよ。とりあえずはすっきり、したの?」

「うん!多分。」

「なにそれ。」

勢いよく返事をした割に「多分」がオマケで付いている、返事。

それを聞いて欠伸をした朝は、今日もソファーで既に丸くなっている。
私が魔女部屋へ来た時には、既にこの姿だったのだ。

今日もいい青が見える窓から差し込む光、お昼寝にはピッタリの静かな空気と香るハーブ。
丁度良い光の中揺れる花達は、今日は大人しく眠っているのだろうか。
それと一緒に昼寝を決め込む灰色のフワフワを横目に、バーガンディーへ沈み込む。

そうして一人、ぐるりと昨日の出来事を反芻して小さく息を吐いた。


あの後、気が付いたら自分の部屋、ウェッジウッドブルーの壁紙が目に入るベッドの上で。
パッチリと目が覚めた時には、あの金色は見当たらなかった。

きっと夜のうちに、戻ったのだろう。
自分の中にある金色のキラキラを確かめ、「真ん中の星」もチラリと思い出す。

 多分、大丈夫。ある。ちゃんと。

 もう、「私の中」に。


そうして頭が軽く、足取りも軽く魔女部屋へやってきた私は、同時に自分の頭の中でモクモクと大きくなる「長」の影も、感じていた。

もしかしたら。

あの人が、その時が近い事を感じて大きく気持ちを膨らませているのかも、知れない。
私に、その「想い」は今、直接入っては来ないけれど。

「そう思っている」だろうことは、嫌でも、解るのだ。

 だって。

 あの人だって。
 ある意味 「私」 なのだから。


「ねえ。朝。」

「なによ。」

相変わらずの返事にはしかし、「聞いてあげるわよ」という色が含まれていて、自然と顔が綻ぶ。

とりあえずバーガンディーから身体を起こし、纏まらない頭の中をそのまま洩らし始めた。


「あのさ。ある意味、やっぱり。会う、までは。「会ったらどうしよう」とか、「どうなるのか」とか、考えない様にしてるんだけど。」

「それって、正解だよね??」

私の事をよーく解っている朝に、確認の為にする質問。
勿論答えも、解っているけど。

なんとなく、念を押されたい事って、ある。

「まあ、そうでしょうね。ある意味一番の「出たとこ勝負」よ。ホント。」

「…………だよね。」

ぶっちゃけこの辺りは、想像してもどう、なるのか全く読めない。
多分、考えるだけ無駄なのだ。

だから、逆に。

私が、気になってしまっている、こと。


 「あの二人」は。


「…………そう、なる、運命だった、って………こと?なの、かなぁ………。」

くるくると、思い浮かぶは白い三角屋根のあの部屋。

「幸せだった」記憶と。

「用意されている 結末」。

ジワリと目の奥が熱くなってきて、その時の感情が胸の上に上がってきたのが解る。

でも。
ううん、違うの。

「悲しむ為」に、思い出したんじゃ、ないの。

「意味があったのか」「無かったのか」、そんな事を考えても、それこそ「意味が無い」のかも、知れないけど。

私は。

ディディエライトあの人が、私に齎したのは。

「意味のある無し」では、無くて。


 多分、「このこと」だと、思うんだよね………。


そう、真っ白な頭の中にプワプワと湧いて来たのは、ずっと前の。


「あの言葉」だった。



「なんの為に 生まれて

     なんの為に 生きて行くのか

   私は 何故  ここにこうしているのか」


この旅の序盤にあの子に言われた言葉は、もう少し長かったけれど。

私自身も、この旅をする前から考えた事のある、この「生きる意味」の様な、漠然としたしかし、大きな、こと。

日々、日常を送る中でふと湧いて来る「想い」、それはどうして、事ある毎に。

私の人生の中に、入って来るのだろうか。


 「生きる」とは

 「人間わたしたち」とは

  
動植物、昆虫、爬虫類、色々な生き物たちは
その生を循環して「繋いで」いるけれど。

その「連鎖」の中に。

いない、「人間わたしたち」は。


 どう して 「なに」を

 「繋いで」

 「生まれて」「育ち」「死んで」「また生まれて」。


 私達は。
 
 この 世界で。

 一体  何をして いるのだろうか。



そんなことを考えられる事自体、幸せなのかも知れない。
平和なのかも、知れないけど。

「平和」って、なんだろうか。

「幸せ」って?

こんな悩みは、贅沢なの?

  いいや でも。

  違う よね


多分「これ」は通り道で、私達は何かの、進化の途中で。

きっときちんと、「考えてもいい」ことの筈だ。
寧ろ。
「考えなければならない」、事なのだろう。

だって、私達は。

きっと、他の生物よりも世界に。
貢献しては、いないからだ。


そうして思い浮かぶ、この扉の各世界、私の世界の沢山の色。

真っ白から鮮やかな自然の色、鈍く光る色から真っ黒なこの世界の、窓の外まで。

沢山、沢山の、「いろ」が。

私の中を、くるり、くるりと回っていたのだ。

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