透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

星の祭祀 幕引き 私の神域

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目が覚めたら案の定、私の神域だった。

どうやら。

あのまま?
寝た…………?まさか。


自分の記憶を手繰り寄せ、あの「光の剣」へ辿り着き、その後の色が思い出せない事に、溜息を吐く。

とりあえず、暫く。

そのまま、ボーッとしていた。

なんだかまだ、体が動く気が、しなかったし。

なにしろ、私の中で。


   「次の扉へ 行かなくては」


その、思いが。

ありありと、現実として迫っていたからで、ある。



て、いうか。
なに?
アレ。

反則じゃない??

聞いてないけど?


「あれ」は。
勿論、人間ひとではないのは、分かる。

でも?

以前感じた「神」的な圧は、減っていたのも事実だ。
それが、「あっち」が変化したのか「私達こっち」が変化した所為なのかは、分からないけど。


あれは?

 「神」なのか
 「なにか」大きなもの か

それとも?

あの、嘲笑う様な雰囲気、具体的に「なに」が見えた訳でもないが。
感じた気配は確実に私達を揶揄っている、もので。


を見て、しまえば。

「あれ」の目的が、なんとなく判る。

多分、いや、確実に。

「あれ」は「黒い靄」を欲していたんだ。


…………黒い、靄  ?


 聞き覚えも、見覚えもある、それは。

 多分、あの。

 全体礼拝で…………      え   て、こと は?



「うぅん?…………全体礼拝の靄の「行き先」と、「次の扉」が…………」


       お な じ
             って。


              こと???


なんとなく、口に出すのは憚られて、自分の中でぐるぐる、する。


えーーーーーーー。

ウソで、しょう?
意味が わか ら    なく も?

  ない??


あの、銀の区画の奥、シンと長が居るのが、次の扉の入り口で?

守ってる、のかな…………なんか、ならイメージと、合う。
確かに、「あの場所」は。


清浄な空気と、誰も入る事を許さぬ空間、それは。

「大事な場所」を、守る、そんな雰囲気に、ピッタリなのだ。


え?
それで?

全体礼拝では、「祈り」「力」は長じゃなくて「次の扉」に、送られるってこと??

グロッシュラーとか、あの絵がある所では。
長へ、力が行くのだろうか。

基本的に、絵は各家にあると。
パミールが、言っていたけれど。


うーーーーむ。

「でも、私の蝶が居るのも。次の扉あそこなんだよ、なぁ………?」

しかし確かに、考えると色々辻褄は、合う。

なんとなく感覚としてある「場所」、力の吸い取られる先と、蝶の場所、そしてがあの区画の奥に、あること。

空間的に、繋がっているのかは、分からないけど。
なんだか、しっくりくるこの感覚は無視できない。


「でも、な…………。」

目の前にある、その「直感」に。

モヤモヤしつつもうえを眺める。

そう、ただきっと、私が「それ」に納得したくないだけなのだろう。

厄介な匂いが、プンプンするこの「次の扉」に。

「行きたくない病」が、また始まったのだ。
きっと。



「でも、さあ?なんか、嫌味臭いし、「手のひらの上」感あるし?なんか、いけすかないと言うか。なんなの、人の力を何だと思ってるのかな………。」

脳裏に浮かぶ黒い靄、真っ直ぐに吸い込まれてゆくその様子はやはり、全体礼拝の状況に近い気がする。

「力を、溜めて………どう、するんだろう、か………。」

なにしろあの「いけすかない なにか」が、私達から搾取しているのは、間違いない。
でも。

長老達偉い人からも、搾取してるって、ことだよね???



「…………もう、無理。」

祭祀後の私の頭なんて。
普段より数倍、使い物にならないこと請け合いだ。


もう一度、ゴロリと横に転がって流れる水を目に映した。

いや、勿論既に。
寝転がっていたから、更に転がっただけだけど。



ただただ、際限なく流れる水の動き、その静かな音に身を任せていると自分の「なかみ」が潤ってきたのが分かる。

「私の神域」だから、なのか。

ただ、寝転がっているで。

身体の疲れは取れてきた様な気がするし、気持ちの整理はついていないが頭の中は静かだ。

その、一つ一つが複雑な色を含んだ「事柄」「事実」「予想」達が、水と一緒に流れ清められ、スッキリとして頭の中に帰って来た様な。

そんな、感じである。


「うーーーむ。」

しかし、なにしろ。

多分、私には少し休養は必要だろうし。

「なに」を解決すればいいのか。

「そもそも解決する必要があるのか」
「問題は どれなのか」
「何をしてから 次の扉へ  」

「長に会う」「シンは 」

「セフィラが 次の扉に いる」


「あーーーーー。無理無理無理。とりあえず、終了。なにしろ一個一個はスッキリした気がするけど、多い!解決?いやいやいや…………でも変えなくていいんだし??」

えっ

もう  無理


そんな自問自答を、ぐるぐると繰り返していると、その中に更にあの「謎のあれ」が笑っている様子が乗っかってきて。

「えっ。なんか、よく分かんないけど、あいつをやっつければいいんじゃない??てか、アレ何…………。」


ん?

転がったまま、ブツクサ言っていると何かが空間に干渉した気が、する。

とりあえず、滅多なものは入って来ない。
それが解っていた私は、顔だけその方向へ向け、だらしなく待っていた。


やっぱり………。

見えて来たのは、金色の光。

徐々に形を取ったそれは、少し心配そうな色を浮かべ私の側にやって来た。


「どうだ?」

「うん。」

蹲み込んで額に触れた彼は、少し安心した様でそのまま全身を舐め回す様にチェックしている。

別に、おかしな所はないとは、思うけど。
乙女に対してその確認は如何なものだろうか…。


「ねぇ、どう、なったの?大丈夫??」

結局、「終わり」は見ていない星の祭祀。
星が降ったまでは、良かったけど。

あれ」は閉じれたとしても、みんな見えた、よね………??


「いいや。実際、それそのものを見た者は、少ない。吾輩が飛び、お前の光が繋がって。かなり、眩しかった筈だからな。」

「…………うん?そう、か………。」

成る、程?


確かに。
あの時、金色の剣になったこの人は、そのまま扉へ飛んであれを斬った筈だ。

その光はそのまま、私の「真ん中」と、繋がって。

 直接、光が、流れ込んで………

 気持ち良かったんだよ、ねぇ………


自然と胸に、手が行ってそのまま「真ん中」の温もりを手に感じる。

「ねぇ、って。どういう事だと、思う?」


 「金色の 剣」「光」「私の 真ん中」


直接、が繋がり、結果。

扉は、閉じた。

前回、シンとあの人が「どうやって」扉を閉じたのか、私は見ていない。
「なかみ」を交代したからだ。

だから?
やり方、知ってたのかな………???


「さて?とりあえず思い浮かんだ「事」を、実行したのみ。しかし、お前もいつか言ったであろう?「私達にも」と。」

 うっ

キラリと瞳を煌めかせ、いい顔でそう言う、金色。

 今?
今、それ言っちゃいます??

うぅ…………やっぱり………


しかし、祭祀後の私に金色のチャージは不可欠でも、ある。

流れ込んでくる、暖かなその色に諦め身を任せることに、した。


 うん?

 でも?

 結局??

どうなったんだろ………??


星を見て、みんなが。

感動、してくれた。
女性もそれなりに、いたと思う。
光の色は、増えただろうか。

ガラスはどの位、残った、かな……………。


それにしても、あいつ………。
とっちめてやらなきゃ でも
 行くの いや 行かなきゃ

そろそろ  呼ばれて  待ってる

 セフィラ   そう言えば  姫様

いや でも  シン は??


頭の中に浮かんだ赤い瞳、パッと離された身体。

正面の瞳は私を検分する様な色を浮かべ、なかみを見透かされている様な、気もする。

まあ、多分、今は金色の分量が、多いから。

きっと、「伝わる」んだ、ろうけど。



「千里から、だが。」

「ん?」

徐ろに開いた唇から、予想外の名前が出てきてパチクリする。

そのままスルリと、頭の中が漏れた。

「え?伝言?千里も来れば??」

くるりと変化した色、見たことのない色を浮かべた瞳は仕方の無い顔を貼り付けてこう言った。

「お前は…………とりあえず、神域ここは。私達以外は、入れぬ。」

「あ。」

思わず口に手を当て、もう一度確認しようと金の瞳を見る。
だがしかし、時既に遅し。

優越感か嫉妬か、はたまた得意気な、色なのか。

見た事の無い複雑な色を確かめようと、にじり寄ってみたけれど、もう瞳の色はいつもの焔を湛えているだけだ。


「えーーーー。」

「何が、「えー」なのだ。」

「…………とりあえず、どうしたの?何かあった?」

「いや、とりあえず。落ち着け、と言っていた。」

「え?落ち着いて、る?………けど??」

意味がよく、解らない。

しかしついでの様に、金色が差し出した手には一枚のメモが握られていた。



  「お前は 次の扉には 何を しに行く?」



「………。これ、だけ?」

書かれているのは短い一文。
しかし、いつもの千里の、含みのある言葉だ。

「えーーー。ちょっと、これは…。」

今は、無理かも………。


「祭祀後だから」と、自分を甘やかそうとしていた私に、追い討ちを掛ける、この内容。

でも、千里は。

意味の無いことは、しないんだ。


「えっ、でも、ちょっと、今日は。いい、よね?」

「大丈夫だ。」


「何が大丈夫なのか」、訊きたかったけれど。

いやいやいや、とりあえず。
今日は、休んでいい筈よ。
うん。

とりあえず、明日から。
考える、からさ………。


確かに「大丈夫」な、様に私を包んだ金色はそのままゴロリと横になり、ある意味いつもの体勢になった。

「大丈夫。まずは、己を。満たして、いいのだ。」

あ それ

 あの人も。  言ってた な 


フワフワと金色の焔が周りを囲み、白の中に金の繭が出来た様な形になる、神域。

 ちょっと なん で?
私の神域 なの に  自由 自在?


そう、思わなくもなかったけど。

なにしろきっと、疲れていた私は。

多分、二度目の眠りについたのであった。









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