712 / 1,483
8の扉 デヴァイ
それが発する なにか
しおりを挟む「いや、ごめんごめん。」
「………えっ、駄目でした??」
「いや違うんだ。やはり君は凄いな、と思ったんだがその提案と君の説明のなんというか、うん、とりあえず面白かったんだ。」
イストリアは、そう言うけれど。
なんだか腑に落ちないのは気の所為だろうか。
しかし、この人に全く悪気がないのは分かる。
だからとりあえず、続きを説明する事にした。
「もしかしたら、デヴァイでは光らないかも知れない、って言うのも分かるんです。それに、ウキウキしないかもだし?でも、多分側にあるだけで。なんか、いい効果みたいなものがあると思うんですよね………あの、なんか、花とか癒し石みたいな。」
「ああ、確かに。それはあるだろうね。」
お茶を一口飲んだイストリアは、冷めている事に気付いてお代わりの支度を始めた。
その手元を見ながら、ふと思い付いたことを口にする。
「イストリアさんは。例えば、ガラスに力を込めたとして。石と同じ様に、使う………と言うかこの世界で言う「石の代わり」に、なると思いますか?」
意外と、返事が降って来なくて。
手元にある視線を、垂れ下がる水色の髪へと移してゆく。
辿り着いたイストリアの顔は、ただ優しく微笑んでいるだけで、そのままポットにティーコゼを被せると。
ストンと座って、私の顔を、見た。
「ふむ。君は、その根底を覆す質問を、してしまうかね?」
少し揶揄う様な、困った様な。
複雑な色を宿した瞳が私にそう問い掛ける。
しかし、私に隠すつもりはなかった。
「公にしてはいけないこと」なのかも、知れないけど。
あの、白の区画で。
「全部、隠さなくていい」と。
とりあえずあるものを全部、明るみに出して。
その上で「選択」して行くことが、大切だと思ったから。
「問題が無いとは、言えないけど。でも、「本当のこと」だし。「争いが起きるから」とか、色々理由はあると思うんです。でも、実際「ガラス」じゃなくたって。「チカラ」を持つものはあると思うし、本当は全部そうだとも、思うし。」
「どれでも何でも、程度の差はあれど力を持っていて、また、力を込めれば石の様にもなって。人も同じで、みんなが力は受け取れるし。世界のチカラは偉大で、きっと足りない事なんか、無くて。ただ、方法が分からないとか気付いてないとか、隠されてる?いや、ずっと誤魔化されて忘れちゃったのかな………うん?こんがらがってきた………。」
言いたいことが行方不明になって、頭を抱える。
しかし、流石イストリアである。
大体、私の言いたい事は伝わっていた様だ。
「確かに。君を見てると「そうだろうな」と、思うよ。」
「しかし、それをどう、やるかだよな………まあそれはこちらの仕事でも、あるんだが。」
ゆっくりと椅子に凭れながら、カップを手に取る、その手を見つめていた。
とりあえず、私の言いたい事は言い切ったから。
それについてきっと、意見を述べてくれるであろうこの人の口が開くのを、待っていたのだ。
まったりとした光が降りる、中。
両手で持ったカップ、丁度いい温度のお茶を一口飲む。
テーブルの小花達が揺れ、ふと顔を上げるといつの間にか見られていた事に気が付いた。
「しかしきっと、やはり素材の持つ力というものも、無視できまい。君はそれが、何だと思う?」
私の視線を受け、ゆっくりと口が開かれる。
「素材の持つ、力………。」
「そう。石、ガラス、それ以外にも言うなれば木や花、人の作った物でも。きっと力を持つものはあると、………君は思っているのだよね?」
「はい。………なんかウイントフークさんにも、そんな様なこと訊かれました。」
「うん?あの子もか?………フフッ、それで君は何と、答えた?」
優しく微笑む顔がまた、「お母さん」の顔になって私の胸も温かくなる。
あの人は、私の前ではあまり笑わないけど。
やはり、笑顔も似ているのだろう。
「うーーん、その時は「私の世界」との違い、みたいな話をしていて。私の世界は、自然も多いし太陽も月も、あって。だからかなぁと、思ったんですけど………。」
うん?
どう、だろうな??
でも。
こちらの世界でも。
大きな、力を持つものはきっと、あると思う。
あの石柱だって、そうだ。
この島の、核となるもの。
大きな、大きな石窟だ。
「素材」
それは「元」となるもので。
「器」に、近いんだろう。
「チカラ」を込める、込もる、ものという点で言えば。
やはり、「私達のコップ」にも、近いもので。
「ん?………でも、そうするとやっぱりチカラは人に溜められる…えっ、いやいや、今その話じゃなくて…でも。」
顔を上げ、薄茶の瞳を真っ直ぐ、見た。
「人でも、物でも。チカラを受け取り、それを溜める?持つ?ことは、やっぱり可能で。その、「容量」?「許容範囲」?「限界」の、違い…なの、か…………???」
私の視線はピタリと留まったまま。
薄茶の瞳は緩く開閉し、様々な色を映している。
多分。
イストリアも、考えている事は一緒なのだろう。
この世界で言う、「力を溜めている人間」「軸」
そう、人でも、物でも。
それが指す事は。
くるりと変化した瞳が閉じて、私も頭を切り替えることにする。
いや、今この話は。
少し脇に、置いておいた方が、いい。
この話は今解決できる内容では、ないし。
そもそも、色んなことの「大元」でもこのある内容はしかしきっと、この祭祀を経てまた変化するのだろう。
「力のあり方」「それぞれの色」
これまでにあまり省みられなかった内容が、きっと変化する。
そう思っているであろう事が、イストリアの瞳からも感じ取れたから。
一旦頭を振り、大きく息を吐いた。
薄茶の瞳をもう一度見て、その色を受け取って続きを考える。
今の私の仕事は「素材の持つ力」を、考えることだからだ。
うん?
しかし。でも?
「素材の持つ力」?
「うーーーーーーーん。」
石 大きさ
透明度 希少性
ガラス 陶器 工房の 作品
白の礼拝堂 精巧な彫刻
絵 カード 加工されたハーブ
どれも、素敵なものでチカラは込もるし、込められるとも、思う。
でも。
やっぱり?
「大きい」「固い」「純粋なもの」
そんなものの方が、蓄えられそうな気はする。
「やっぱり、「石」なのかなぁ。大きさ?容量?で、言えば。」
唸りながらもそう、呟くと静かに返事が返ってくる。
「ならば、石は石でも。どんな石が、沢山力を持つと思う?何が違うんだろうか。大きさなのか、透明度か。君の世界、こちらの世界。あの子と話した時は、なにが違った?」
「………なに、が。」
あの時?
私は結局、なんて答えたんだっけ??
確か。
自然があるから お日様
山 川 空 宇宙?
「ああ、「源」だ。源があるから?そうなんだって、言ったんだっけ??ん?」
「源?」
「?」顔をしているイストリアの顔を見ながら、私も首を傾げる。
あの、時は?
千里が話を引き継いだんだっけ??
私はどうして。
「源」へ、行き着いた?
そんな話の流れだったっけな…………???
少しぐるぐると考えていたけど、思い当たらない。
でも、私の多分「なかみ」「真ん中」がそう答えたのだろう。
「源」とは、具体的には全く説明できる気がしないけれど。
その、答えが。
「合っている」事だけは、解るのだ。
私の「真ん中」は。 それだと、言っている。
「んーーー?でも多分。源って、なんか、全ての始まりと言うかなんにも無い様に見えて、全部あるところ、みたいな??そんな、イメージです。私的には。」
さっぱり要領は得ないけれど。
これ以上の説明は、できる気がしない。
しかし流石はイストリアである。
私の説明である程度は予測できた様で、深く頷いてはいるけれど。
再び黙ったまま、私の事をじっと見つめていたのである。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
24
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる