透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

純度の違い

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「ほう。それは是非、見たいな。」

「しかし。多分、吾輩以外は…いや、奴なら可能か。」

本部長へ報告している金色の、視線の先にいるのは極彩色だ。

確かに、あの狐ならば。
私の石でもあるし。

きっと、「私の神域」へ入る事は可能なのだろう。


「解ってるよ。」

ジットリとした目で見ていたのがバレたのか、私にそう言うと本部長との会話に混ざった千里。

「別に………駄目な訳じゃ、ないんだけど………?いや………?どうだろうな??」

「まあ、千里なら分からないけど多分他の人は無理でしょうね。」

「ん?なんで、そう思うの?」

勿論、私も思っては、いるけれど。
私が創った、私だけの「場」なのだから。

しかし自信満々にそう答えたのは、朝だったから。
とりあえずその理由が聞きたくなったのだ。


「そんなの決まってるじゃない。そういう性格よ。なんだろう、潔癖………って言うか。言葉にするのは難しいわね。私だって入れない…いや、どうだろうな?私、人間ひとじゃないしな?」

「ん?朝は入れないって思ってるってこと?」

なんだかこんがらがって、きたけれど。
まじない人形や、スピリットなら入れるという事だろうか。

そう考えていると、頭の中を読んだ様に返事が来る。

「そうかも知れない。だって。私達は「偽りの無い」存在だもの。」
「偽りの無い………。」

「そうね。ほら、あんたはオブラートに包まれるのとか苦手でしょう?そんな感じかしら?」

「確かに。」

それは、分かりやすい。



「うーん、オブラート、オブラート。………ありのままである、こと。」

「偽りの無い 」

「真っ新、真ん中………」
「建前」「見栄、虚勢 」


うーーん。

いつの、間にか。

ベッドの上で、星図を見ながら唸っている自分に驚いたがとりあえずそれは横に置いておく事にした。

きっと朝との会話から、この話が気になってぐるぐるしたまま。
自分の部屋へ無意識に帰って来たのだろう。

とりあえずベッドの上で。
疲れた身体を休めているのならば、何もは無い筈なのだ。

そう、大丈夫、いつものことよ…………。


自分に謎の言い訳をしつつも、気になっていることを再び並べていく。

私が、一番気になっているのは。


  「私の神域」ならば、私しか入れない こと


その事自体は、納得の展開である。
そのつもりで、創ったのも、あるし。

でも。

「私の中身」は。

 「全ての色」を、含みたくて。

明るい色も、暗い色も。
どんな色でもそれぞれに美しさがあって、その全てを含みたいからこそ、「純度」を高め、「澄んで」在りたいと。

思った、筈なんだ。

だから。


「全てを含む」ならば。

「他の色」が、入ってもは無いんじゃ、ないの??

何が。

「嫌」なんだ、ろうか。


今回、星の祭祀で沢山の色を降らせる事も決めている。
それなのに。

「自分の中に入れたくない」色を。
降らせる事が、できる?

できない、よね?

でも。
「全部を含む」のも、本当で、しかし「何かが違う」という私の「真ん中」。

きっと、受け付けないのは「真ん中」で。

それはきっと小さな「違和感」なのだろうけど。
無視はできない、「違和感」である。


「えーーー。でも。スピリットなら、確かに多分、入れそう………。」

ハクロにマシロ、イリスにリトリ。
ジュガも多分、入れると思う。

あの、小鳥達さえも。

?じゃあ、人間が駄目ってこと??

「潔癖」

朝の言葉が、ポンと浮かぶ。

「えー。質感?肉感??匂い、とか?………なんだ、ろうか………。」


でも。
カラカラと私の中で並んだスピリット達の隣には、シリーが、いて。

しかし多分、だけど。
シリーは、入れる気がする。

勿論、誰しも勝手に入る事は、できないだろう。
しかし許可しても入れる人、入れない人がいるのは。

なんとなく、解るのだ。


「えっ、ホント。なんの、違い??」

スピリットと人間は、全く違う。
存在の定義が違うので、比べようがないけれど。

シリーと、他の人なら?

パミールとガリア………まだ、微妙?
えっ、付き合いの長さ?
じゃあエローラは?なんか入れそうだな………でもあそこは「そういう場所」じゃ、ないのよね…。

えっ、「目的」問題?

確かに「独りで」「静かに」「在る」為の、場なんだけど。


そういった、意味で言えば。

やはり、シリーも入れないかも知れない。
多分「可能か可能じゃないか」という、問題でもないのだ。

「難しいな………そもそもなんでコレ気になるんだろうか…。」

「違い」があるのは普通の事だ。

沢山の色があって、そのそれぞれが、各々の色で、輝く世界。
私もそれを、望んでいる筈なのに?

「受け入れない色」が、あることが気になるのだろうか。


まあでも。
確かに。

それは「全て」とは、言わないのだろうけど。


「何が………違うんだろうな………?全部の色はあるのに………」

頭の中に思い描くは私の「なか」の色、それ以外の人のまじないの色を並べてみる。

「あ。…………うん?」

これ、「純度」じゃ、ない??

でも、他の人が「濁ってる」訳じゃない。
なんだ?

この、感覚は。

もっと、見え辛くて、複雑で。

きっと「この色であろう」事は判るけれど、はっきりとはしない、曖昧な。


「曖昧なのが嫌なのかな………でもそれが別に駄目な事じゃ………。?」

でも、なんで。
「曖昧」なんだ、ろうか。

はっきりと見えないんだ、ろうか。


 これは  覚えが ある

 私の  世界    

    教室そこでは  よく 見る 色

 曖昧で   誤魔化して

   「同じ色であろうとする」

  そんな  色

  「自らの色」を 「の色」で。


    塗りつぶしてある  様な。


「………ああ。とか。そんな様な、感じなのかな…それか。」

私だって、覚えがある。

あの、自分の中にある深く、暗い、あの奥の奥の、空間に。
潜らなければ、解らなかった「仮面」の様な、もの。

人間ひとが何枚も被って生活している仮面、の事じゃないだろうか。


「確かにそう考えると。シリーは、あまり………。」

全く無いとは、言い切れないだろう。

私だって。
シリーの全てを、知っている訳じゃない。
きっと私の知らない、彼女の想い、これまでの苦労も、沢山の出来事も。
ある筈だし。

でも、その中で。
あれだけの純度を保つ彼女は、やはり凄いのだろう。
「凄い」なんて言葉じゃ、片付けられない程。


そこまで納得して、落ち着いてくると徐々に自分の中のピースが嵌ってくるのが分かる。

私の世界の人、この世界の人、ラピス、シャット、グロッシュラー、デヴァイ。
そのそれぞれで、程度は違うけれど。

みんなが、持っている、被っているもの。
を徐々に?

剥がして、ゆけば??


なんで  どう して  

   でも    きっと

   
   感動   
        素直   心が  動く

  言うこと  望むこと

     星を見ること   願い を。


  公に、なにか を  望むこと


蝶達の色の変化、色が変わることで私に溶け込む、こと。

もしかして、蝶だけでなく、全てが。

「純度が上がる」

そう、なることで。

 「ひとつ」になって ゆけるとしたら?


「成る程、成る程?みんなで「輪」「円」になる為には「純度を上げる」事が必要か………あーー!なんか。スッキリ、した?」

「よっしゃ、そうと決まれば。」

「えっ?どこ行くの?止めて。」

「あ、朝!ありがとう、ナイスアイディアだったよ!」

ポン、とベッドから飛び降りると同時に、タイミングよく返事が来る。
いつから聞いていたのか、朝がベットの端で顔を上げていた。

「ちょっと、私は怒られるのは御免よ。」
「えっ、失礼しちゃうなぁ、とりあえず礼拝室行きながら聞いてよ。」

「嫌よ、でも一人にはできないし………。」

ブツブツと煩い朝をヒョイと抱え、部屋を出て左へ進む。

そうして正面の白い扉に、向かって。

スキップをしながら、意気揚々と進んで行ったので、ある。
うむ。



   



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