透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

魂の 座所

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「なにこれ。完璧?それ、以上??」

一応、ドキドキしながら目を、開けた。

だって、出来てるとはけれど。

もしかしたら、想像通りじゃない可能性だって、ないとも言い切れないと。


「うん、ごめんなさい。私が間違ってました…私、できる子。うん。」

目の前に拡がる美しい白と、反射する優しい、光。

自分で自分を勇気付けて、ぐるりと辺りを見渡していく。
改めて、見ると。

「とてつもなく、凄い…………。」


 幻想的   白  半透明  

    透ける     光

   水    凛とした 空気  

 水流によって流れる 小さな風

    角度により光る  床 

  太くもなく細くもない 柱が規則的に並ぶ

   思ったよりも  広い 場



流れてゆく水の先は、勿論見えないし。

柱と柱の間、空間の奥もやはり見えなくただ白い場が拡がっている。

雲でもなく、霞でもない様な。
少しピンと張るその空気はやはり、あの朝の神社を思い出させる雰囲気だ。

手を、入れたならば。
異空間に引き込まれそうな、そんな空気である。

しかし怖れは感じられない。

ただ、幻想的な、だけだ。


「まあ………自分で創ったんだしね………。」

そう呟きながら、ゆっくりと場を見て周る。

それぞれの場所に、美しく纏まっている石達、その色に合わせた「かたち」、「大きさ」「質感」が楽しい。
見ているだけで、チカラが貰えそうだ。

実際、なんだろうけど。


「………ふむ。これは………まずいな。一日、居られるわ………。」

この空気の中ではお腹が空くかも、分からない。
私の体内時計は、きちんと働くだろうか。

この、何もかもが満たされそうな、空間で。

この、どこまでも清く心地の良い、場で。


「うーーーーーん。」

とりあえず、寝転がってみる。

そう、ダラリと少々、だらしなく、しかも真ん中に寝転がるのだ。


実は。
あの、夢の中で神殿にいた私はこうして大概、寝転がっていた記憶がある。

何故だかそうしている事が多かった、あの頃、神殿に来る人は私の事が見えていない様だったし。
それならいいか、とも考える事なくただ、寛いでいた。

きっと、「あの私」は。

「今」の常識の外の、ものであったのだろう。


「うーん、ならゴロつくのも分かる気がするよね………御誂え向きに、ここには誰も来ないし…。」

ひんやりとした床の感触を確かめ、しかし伝わるチカラの心地良さ、見える景色の美しさに自分の「なか」が満ちてくるのが解る。

目を、瞑っても。

感じられるエネルギーの流れ、水音とそれによって流れる空気。
床から伝わる、柱の振動。

多分、あの柱は水の振動を伝え、この空間全体を素敵に震わせている筈なのだ。


「そう、か…………。」

思い出した。


 私は。  あそこで。

  魂 を   震わせて  いたんだ。



      「魂の  在る場所」


そう気が付いた瞬間、自分の「なかみ」が全力で震え、場がそれに応えるのが、解る。


    ああ  だめだ  


何も考えられなくなって、ただ、ひたすらにその振動に身を任せて、いた。


 なにも ない

 ただ  震えるだけの  自分


目を瞑り頭の中はただ、「自分が震えている」事だけを知る、状態。
何物の侵入も許さずただその感覚に支配され、その心地良さに思い起こされる、「あの時」の「色」。

 
 外の 緑  青

    空の  色        山

         湖    
                花     
            石
                鮮やかな鳥

    様々な色の布    
              果実

 ああ  神殿あそこ  にも。

 こうして 沢山の 色が    あった な



そうして 暫く。

胸の中を通り過ぎて行った色達、少しずつ自分の「なか」が白に戻り始めて。
自分が震え終わった事に気付き、目を開けた。


「   」

声を出そうとしたが、息しか出ない。

暫し全身を休めるべく、そのまま上を向いて寝転がっていた。


 そら   白い  空


    雲じゃ ない  でも?  

 なんか  流れて る な  ?


柱の上は、勿論何も無い。

横と同じく不思議な空間が続くその上方は、しかしやはり「空」の体も示し、少し流れている様にも見える。

「ふむ。」

あ 声でた


「 依る。」

 えっ 

その、声で。

一瞬にして私の「なか」に色が着いて、あの色が侵食したのが分かった。

無言で首だけ動かすけれど。
声の主は、分かっている。

でも。
この空間に、自分以外は入れない事を知っていたから。
その姿を見て、パチクリしてしまった。


「なん、で?えっ。」

「心配しているぞ、皆。」

その金色の様子と口調からして、外では意外と時間が経っていたのだろう。
それか、昼食を食べに来ないからか。

今が何時なのかは分からないけれど、私がご飯を忘れるなんて、朝からすれば一大事なのだろう。
きっと「神域を創る」といって消えたままだから。

心配しているに違いない。


「えっ、今、何時?て言うか、どうやって入って来たの??」

全くもって、入り口すら無いこの、場へ。

この人は、どうやって入ってきたのだろうか。


すぐ側に来て蹲み込んだ金色は、辺りを見回しながらこう言った。

「朝殿が。魔女部屋の奥だと、言うからお前の事を考えながら歩いていた。」

「えっ。それだけ?」

「なんだ」という色の瞳を向け、じっとこちらを見ている金色。

えっ
だって?

ねえ  一応

 ここ って。

 「神域」 なんですけど ???


もう一度、辺りを見渡して。
「私の空間」の中に在っても不思議と存在を主張して光る、美しい金色をまじまじと見る。

「おかしいな………???」

「何もおかしな事などあるまい。お前の中には、吾輩も有るのだから。」
「ぅっ」

とりあえず手で顔を隠した。
本当は、隠れたいけど。

ここには布団も無いし、隠れる場所も、無いのだ。

「うぅ………。」
「どう、した?」

心配そうに訊くその口調が憎らしくなってきて、指の隙間からチラリと覗く。

もしかして。
わざとじゃないかとも、思ったけど。


全然、「素」なのね…………

分かってた、解ってたけど…………
くっ…………
こっちは瀕死なのに………!


「して?何故そう、驚いていた?自分以外は、やはり入れぬ様にしたからか?」

「まあ、そうです………はい。」

仏頂面で答えている私の手を剥がしながら、そう言ってまた辺りを見渡す金色。

この、特別な空間に彼がまた鮮やかに見えて、なんだか小憎らしくなる。

「全く…………なんでこう、綺麗かな………。」

「?とりあえず、戻るぞ。」

「………はぁい。」

起き上がろうとした私をそのままヒョイと、抱える金色。

そうされて初めて、自分が疲れている事に気が付く。
「チャージ」されたかと、思ったけれど。

流石に、これだけの空間を創ったのだ。
やはり体は疲れていたのだろう。


そうして金色に回収された、私は。

揺ら揺らと揺れる腕の中、そのままウトウトと青く変化してゆく不思議な道を眺めて、いたのだった。




   




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