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8の扉 デヴァイ
私の神域
しおりを挟む神域って。
どんな、だろうか。
御神体があって、建物が、あって?
いや、それとは別で。
「私の神域」で、いい筈なんだ。
それなら?
どんな もの 場所 創り が?
いいだ ろうか。
「うーーーーーむ。」
まじないの廊下、青の壁。
背後には魔女部屋の扉、幾つかの窓から差し込む光は今日も明るい、晴れである。
あれから、きちんと朝に言われた通り本部長には相談した。
「神域?とは?」
「神社」というものが無い、ここデヴァイ、このまじないの世界。
一応ウイントフークには、ざっくりと説明して「この世界の教会の敷地みたいなもの」と、納得していた様だったけど。
多分。
「質」が違う、この感覚を説明して解ってもらうのは難しいだろう。
それもあって「とりあえず創って、いいですか?」と許可だけ、貰ってきた。
勿論確認はしてもらうつもりだ。
でも。
正直。
「私の神域」には、私しか入れたくないんだけどね…………。
「ま、入り口から確認してもらって………いや、無理か?でもな………。」
「ま、いっか。とりあえず、創ろう。」
一瞬だけ、考えたけど面倒になってポイと投げる。
とりあえずは。
やってみてから、だ。
しかし、「私の神域」に一人だけ入れそうな人が思い浮かんだことを「なかみ」は見逃していなかった様だ。
ポッと浮かんでいる、あの、色。
そう、あの金色である。
「いや…………まぁ、そう、なんだろうけど。駄目駄目、ズレるから。なんか、色が、着いちゃうから。」
私の神域を、創るにあたって。
「色」は、やはり重要な要素である。
この世界を旅する間、自分が「色」に深い拘りを持っている事に、改めて気付かされた。
その、上で。
「自分の色」は、「全部」を含みたいと、思うし。
だから、純化も、したいんだ。
濁って、混ざらない様に。
一つ、一つが。
分からなくなって、しまわない様に。
「で。そうするとやっぱり、「白」だよね………。透明もいいけど、場所?部屋?で透明はちょっと、どう、なんだろうか………。」
あのコポコポと心地良い空間を思い浮かべて、みるけれど。
しかしやはりそれだと、「柔らかい」空間になるのである。
私が求めて、いるのは。
スッとして、凛とした、透き通る様な、「場」だ。
「えっ。意外と難問。」
ブツブツと独り言を言いながらも、正面の廊下をじっと見つめ考えていた。
この、廊下は。
あの突き当たりに見える場所は、きっと「突き当たり」ではない。
ウイントフークが繋げてくれたまじないの廊下は、一見普通の廊下である。
しかし、どう見ても「まじないっぽい」正面の壁、ぼんやりとはしていないその遠くのハッキリとした、壁。
そう、普通であれば。
あそこまではっきり、見えないのだ。
しかしいかにも「壁です」という然で在る、その佇まいになんだか面白くなってきてしまった。
「いや、もっと誤魔化すならちゃんと誤魔化そうよ………。」
クスクスと笑いながら、少しずつ奥へ進んで行く。
多分、あの突き当たりに私が辿り着く事は無いだろう。
この廊下は、どこまで行っても。
この景色がずっと、続くであろう事は容易に予測できるからだ。
「さて………」
つらつらと考えながら、そのまま真っ直ぐ歩いて行く。
どうせぶつかる事のないこの廊下だ。
考え事をしながら、思い付いたら試してみればいいのである。
ある意味全体が、私のまじない空間でもある、このフェアバンクスの区画。
その、中では。
大概の事は、不可能では、ない。
そう、知っていれば。
私の神域を創ることは、可能なのである。
さてさて?
どう?
しよう、かな??
とりあえず目を瞑りたくなって、立ち止まった。
ぶつかる事は無いにしても、気が散る要素は取り去るに限る。
そうして。
そのまま廊下の真ん中で、そっと目を瞑り「私の神域」を想像し始めたのだ。
色は 白
白と 言うか?
透明に近い 霞の様な そんな 感じ
はっきりとは区切られていなく
しかし 「誰もが 入れる訳でもない」
そんな 空間
材質は?
木?壁紙? 紙………色
でも。
あの。
神殿 みたいな。
「うん、石 かな」
半透明、少し透ける様な、しかし角度によって発光する様に光る、あの石はなんと言う石だったか。
想像しながら床を敷き、壁を少し検討する。
しかし。
「区切り」たく、ない。
それなら 柱 かな?
同じ素材で石柱を立てると、天井は創らず柱が立つのみに留めておく。
できるだけ。
「解放」された、場が欲しいからだ。
そう、素材は「石」で。
それも、とびきりの「純度の高い」、石である。
大き過ぎてどうかとも、思ったがとりあえず私の中では実現できている様だ。
目を開けて、どうなっているかは分からないけど。
通常、部屋を創る素材は大抵が木だろうと、思うけれど。
「私の神域」で。
何でも良くて、どれでも、自由に選べるのなら。
「石」が、最適だと思った。
この旅の初めから、私と共にあるこの子達、そしてこの、世界ではチカラの元となるもの。
そう、石は。
チカラで。愛で。
きっと、「自然」でも、ある。
空が無い、土も無い。
風も無いし、川も海も、無い、ここでは。
「呼吸」が、し辛いのだ。
なんだか、押し込められている様な。
無理矢理、箱に入っている様な。
酸素が、薄い様なそんな、感覚。
でも、それを解消してくれるのが、石でもあると思う。
見ていると癒されて、美しいだけじゃなく心を潤し、風を吹かせ自分の中の空気を入れ替えることも、できて。
そうして、チカラも補ってくれて。
光だって、キラリと貰える。
「やっぱり………愛、だよね………。」
愛に包まれた、空間。
ん? あれ?
なんだか あったかく なっちゃわない??
しかし、辺りの雰囲気は凛として冷たく、石特有の空気である。
「………ああ、成る程。」
だから。
好きなのかも、知れない。
暖いけど、緩くない。
愛があるけど、優し過ぎない。
凛として美しく、許されたものしか招き入れない、その特有の空気。
色や形、種類によって「合う合わない」はあると思うけど。
「私だけの神域」を創るには、やはり石がぴったりだ。
この旅を始めてからずっと、石と共にあり、色と共に、あり。
その「石」という「かたち」は、チカラであり、愛でもあって、その性質を表す様な「色」が沢山あって。
「うん、私の。神域、とは。やはりこうではないだろうか。うむ。」
その、白い場の中に自分の中にある色をポツポツと置いていく。
大小様々、原石をイメージした石を間隔を開け配置して場所によって雰囲気を分けた。
なんとなく、まだ重めの色が集まる場所、軽くなってきた色、もう昇れそうな色もあれば、鮮やかに輝く色もある。
それを飾り台や壁際の段差、供物台の様に置かれた大きな台へと配置していく。
きっと、「夢の神殿」を思い浮かべたからか。
似た様に配置された供物台と飾り棚が、なんだか懐かしく感じた。
「うん。」
ぐるりと見回し、一つ頷くと足りないものが無いかを考え始める。
大概、あの神殿にあったものは再現されている、この空間。
「…………水。可能………だよね??」
誰に訊くでもなく、自分の「なかみ」に訊くのだけれど返事は無いが「否」とは言わない「なかみ」。
多分、出来るんだろう。
私がきちんと、それを知っているのならば。
疑いが、なければ創れる、筈なんだ。
ふむ ならば?
一方にだけ壁を 創って そこから 流す
上から 落ちて?
流れると 気持ちいい よね?
「うん。」
同じ石で壁を創り、滝の様に上から水が流れる様を想像する。
下では細い、川の様になった水路が奥へ流れて行く様にして。
場の奥は、どこまで続いているのか分からない、幻想的な白にしておく。
靄の様な、雲の、様な。
終わりのない、場の端を想像しておく。
きっとこれで、神聖な空間が保たれる筈だ。
「区切る」のでは、なく。
どこまでも行けそうな、場。
それが、いい。
「さて?…こんなものかな?」
私の色は、揃ったろうか。
全ての、「色」が出たか、足りなければまた創るし、また私の色が増えたなら。
それも、足していけばいい。
「なにしろとりあえず。一旦、完成………。」
そうして、そっと目を開けると。
素晴らしく凛とした空気の、想像以上の「場」が出来上がっていたのである。
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