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8の扉 デヴァイ

澄んでいる 私

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「星に願いを」、祈ることは、決めた。

「祈り」は、「決意」でも、あるし。

私にとっては「宣言」の様なものでも、ある。


「なにに」とか「どう」とか、それはぶっちゃけ本番の気持ちに左右される事が多い、私の祈り。

ならば、とりあえずは。

「自分を純化」させるのが、先決なのだ。


この頃ぐるぐる、ぐるぐるとしている私は、自分の「なか」が「悪くはないが散らかっている」気分では、あって。

「整理する」のも、いい。
でも。

散々、考えて「整理」して「纏めて」それでも「大事なこと」が、多くて散らかって。

それならば。

「自分を澄んだ状態にする」のが、一番じゃないかと思ったのだ。

なんとなく、だけど。

が、いい気がする。

そんな時はきっと「真ん中」がそう言っているのだろう。


斯くして「自分を澄ませる」計画を練ろうと、森の湯気に隠れながらもフワフワとしていたのだが、あまりにも気持ちが良くて頭は働きそうに、ない。

今は、夜だし。

単純に、眠いのかも知れない。

「はぁーーー  」

声と溜息、半分半分の息を漏らし、モクモクから落ちてくる星屑を飛ばす。

今日は、沢山緑の瞳を見たからか少し渋めのマスカットグリーンに変化した雲。
頭上に伸びる枝とは随分、仲良くなった様で楽しそうに絡まりながら星を降らせている。


「…………てか。どう、すればいいんだろ?」

純度を上げる、って。
ことだ、よね???


この間からよく聞くこの言葉、ウイントフークの顔がパッと浮かんですぐに消す。

いかん。
今、本部長は要らんのである。

スッキリしたい?
それに、近いよね?

うーーーん。

でも。

ここには、水も無いし。
空…………は出来た。
透明の…………うーーーん?

なんだ、ろうか。


思い浮かんだのはあの揺り籠の中、透明で美しいガラスの様な流れる空間、心地の良い音。

でも?

もっと、こう、緩りじゃなくて「スン」って………。


森の泉  違う

シャットの中庭  も違う

グロッシュラー? 揺り籠も ちょっと違うし

前庭の池?  割と近い

ここは  私の  空 青のホール?

いや。

もっと  水の 様な

     氷の 様な?

 澄んで 冷たいけれど 寒くはない

   ただ ただ  静かで  透明で


  少しだけ ピンと。 張って いる様な。


「ああ、でも。ここには、無いな?」

思い付いたのは、朝の誰もいない神社の空気だ。

あの、清浄なピンとして凛とした、空気。

何も無いけど、「なにか」在る、あの神域の空気が一等、好きなのだ。

でも、どの神社も好きという訳ではない。
周りに何があるか、大きさなんかは関係なくて。

行けば分かる、あの、空気。

何が「違う」んだろうか。
「御祭神」?
神主さんの違い?
それとも参拝者の空気??


言葉には、できないけれど「なにか ある」、あの空気。
私の「純化」「純度」には、それが一番近いと思う。
近いと言うか、合うと言うか。

「なんっか、西洋のアレとはやっぱり違うんだよね…何の違いなんだろうか…??」

そう呟いて気が付いたけれど、どこも、ここも。

「教会」なんだ。
「神社」じゃ、なくて。

だから?
こう、ピンと、シャッキリ、こないのかな??


どんな場所の「祈りの場」も、勿論好きだけど。
やっぱり、私に「合う」のが「神社」なんだろう。

それ以外でも自然を神と崇める風習がある場所とは、相性がいいと思う。

多分「全部」を含むからだと、思うけれど。
この頃の変化で、それに気が付いた。


「さてさて………しかしここに神社は無いからして、無いなら…創る………跳ぶ?のは怒られそう、なら創る方がまだ、いいか………??」

えっ。

神社を、創る?


どうなんだ、ろうか。
でも。

「不可能」じゃ、ない。

「神社」まで、いかなくとも。

私だけの「神域」で、あれば。


「えっ。…………なんか、いいな?」

「ちょっと、大丈夫?なんか、怖いんだけど。」

「あっ、朝!聞いてよ。」
「嫌よ。」
「ちょ、待って…」

スタスタと、突然現れツッコミを入れ去ってゆく朝を追い掛けようと、バスタブから出る。

「う、わ 」

「はいはい、聞いてあげるから慌てなさんな。ゆっくり着替えてらっしゃい。」

「はぁい。」

のぼせてはいないが、立ち眩みが酷い。
随分と浸かっていた所為か。

とりあえずは朝の言葉にホッとして、ゆっくりと支度をする事にした。




「禊でも、すりゃいいんじゃない?」

寝巻きに着替えたベッドの上、久しぶりに朝とゴロゴロ、寝る前のお喋りだ。

子供の頃から眠れない時は、こうして側にいてくれたことを思い出し懐かしく思う。
その、変わらぬ青い瞳を眺めながら新たな提案を聞いていたのだ。


「禊??」

「そう。スッキリ、したいんでしょう?まあ、神域もあんたなら創れるとは思うけど。なんか、こう水行みたいなさぁ…」
「いや、ちょっと待って朝、私お坊さんになるわけじゃないんだけど。」

「いやぁね。お坊さんじゃなくたって、祭祀前には禊くらいするでしょうよ。清めないと。」

「………ん?ああ、そうか。そういう意味ね。」
「どうなってんのよ。」

私の頭の中身について、ブツブツと文句を言っているが今更じゃないだろうか。


「禊ね、禊………確かにそれも、すっきりするよね………でもさ、やっぱり「場所」が欲しいよね………。」

「はいはい。とりあえず反対はされないんじゃない?害はないんだし。まあ、どこに創るのかはあると思うけど。とりあえずはウイントフークだわね。」

「うん。えーー、じゃあ魔女部屋の奥かな………丁度良くない?あそこでもいいんだけど、やっぱり雰囲気がもっとスッキリ…」
「分かったから。とりあえず、明日よ。もう、寝なさい。眠いと調子出ないんだから。」

「はぁい。…………じゃあ、おやすみ。」

「はいはい、おやすみ。」


朝にそう言われ、きちんとベッドに収まり天蓋の空を、目に映す。

今日は、お誂え向きに星空だ。

いつもの美しいビロードは、沢山の小さな星を優しく瞬かせていて。

その煌めきを見ていると、私の中で同じく「星の祭祀」がぐるぐると回るかと思ったけれど。

昼間にもう、散々ぐるぐるした頭は予想に反し、全く働かずに瞼へ「閉じる」指令を出していたのであった。











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