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8の扉 デヴァイ
ある日の会議
しおりを挟む「お前はあまり、喋るな?」
「ああ、解っている。」
ある日の、夜。
ウイントフークに頼まれて、俺は銀ローブのフードの下、不本意ながらもアリススプリングスのローブの中に潜っていた。
どうやら長老達が集まって、定期的に会議が行われるらしいデヴァイ。
勿論、アリスは呼ばれているがどうやらブラッドフォードはアリスが連れて来たらしいな?
「カチリ」と開けた、扉の奥の面々が。
ブラッドフォードの顔を見て、薄ら笑いで顔を見合わせていたから。
きっと色々な思惑があってウイントフークは俺をここに仕込んだのだろう。
最悪、こいつらが帰されたと、しても。
俺は何処かに隠れれば、話は聞ける。
そう、そうしてウイントフークの計画通りなのかなんなのか。
当たり障りの無い報告をして、爺どもは若者達を帰そうとし始めたのだ。
「そう言えば、ブラッドの婚約者はどうだ?他にも色々噂がある様だが。」
「いいえ?仲は良いですよ。」
「ほう?」
「他の色の家にも出入りしているしの?」
「そうそう、あそこの家は意外とまじないも悪くない…」
「ああ、向こうの銀ですな?」
「そうそう。」
何の話をしているのか、誰の事なのか。
しかし、「銀」と言われて思い出したのは突然訪ねて来たあいつだ。
すっかり忘れていたが、ウイントフークはあのコンパクトをどうしたのだろうか。
しかし、爺どもは二人がこの話を話さないと踏んでいたのだろう。
二人は少し、俺を気に掛けた様子だったが。
とりあえずキラリと背中を光らせて「大丈夫」だと合図しておいた。
その時既に、背後の棚の隙間に。
入り込んでいたからだ。
二人からはよく見える位置だが、きっと年寄り達からは見え辛い場所。
そうして暫く。
再びの当たり障りの無い会話の後、正面にある扉を開け、二人が出て行く所を見送ったのだ。
予想通り、二人が居なくなりガラリと変わる、部屋の雰囲気。
なにやら秘密の場所らしい此処は、声は漏れないのだろうが。
コソコソと爺どもが話し始めたのは、この世界の黒い部分、きっとウイントフークが知りたかった内容だった。
「どうです?最近、夢は………」
「ああ、変わらず。」
「うちもだ。あの男は、まだなのか?」
「早々手は出せない様で。やはり守りが………」
「まぁな。」
「焦りは禁物ですぞ。」
「しかし体が保たねば…」
「それもあるが。今度祭祀があるらしいな?」
「そうだ、それもある。今度光が降りれば、まだ大丈夫だろう。」
「ああ、それはある。」
「しかし…」
「一体、いつまで。隠せますか。」
「…………」
「 」
「仕方無かろう。もう、済んでいる事だ。今更、どうにもできない。」
「それもあるが。礼拝は?どうなりますか。」
「ああ、しかしアリスは止める事はせんだろう。」
「止めると困るのは、銀の家も同じですからな。」
「穢れを受けるものがいなくなると…」
「しかし、それはあの子が…?」
「まあ 」
「そうですな?」
「いやしかし 」
「まあまあ。それにしても。この頃、どうです?」
「いや、うちも少しずつ減ってきてはいる。」
「まあ 」「うちも」「そうですな」
「結局………」
「次は 」
「私達もそろそろ。」
「いや。まだ、保つ筈だ。」
「 …そうだな。」
「結局「あれ」は。何処へ向かって、いるのか…。」
それきり、静かになった、部屋。
俺は自分が一瞬、うたた寝でもしたのかと思い、棚からチラリと顔を出した。
が、しかし。
爺どもは。
ただ、腕組みをしてお互い顔を見合わせているだけだった。
最後に話したのは、白ローブか?
一人だけ少し、静かな顔で周りを見渡す男。
他の爺達は、苦い顔だ。
こいつらは。
デヴァイで。
贅沢三昧、それなりに生活を楽しんでいるのでは、ないのか?
少しして、その白ローブが「パン」と手を叩きそれが終わりの合図だった様だ。
爺達は皆、ノロノロと席を立ち。
この部屋には、一人だけその白ローブが何故だか残った。
「…………結局。何の為に、生きて。何の為に、デヴァイを、繋いで、行くのか。」
「全てがある様でいて、しかし感じるこの、虚しさは。なんなのか。思っていても、恐ろしくて口には出せない、問題だ……。」
「いやしかし、気が付いている者も僅か、か。」
「この歳まで、生きても。解りそうに、無いですな。ヴィルよ。」
静かな部屋の中、一人呟く声が聴こえる。
それきり。
何も話さなくなった白ローブ、俺はどうしようかと思っていたが。
寝そうになった時、丁度正面の扉が開いて光が差した。
「ああ、ここでしたか。探しましたよ。」
「今、行く。すまんな。」
そうしてゆっくりと立ち上がった、その白ローブの背後に留まって。
とりあえずはこの部屋を脱出する事が、できたのだ。
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