透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

ラピス 私の行きたい道

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選択肢は、豊富にある。

ただ、それの。

どれを 選ぶのか

どう 進むのか

何を 持って行くのか

そんなことを。
決めれば、いいんだ。


「て、いう事は、よ?とりあえず祭祀は決まってる。あとは、なんだ?うん?………無い???」

確かに、祭祀の後。
具体的に「何をするのか」は、特に無いのだ。

各家に行って「繋ぐ」役目も、半分くらいは終わっているし。

「光を、撒く、とか?」

またあの三人で廊下を歩いて、星屑を撒き散らすのも、いい。

いいんだ、けれど?

「そんな感じだっけ??」

ラピスに来た理由は確かに「初心に帰る」である。

「えっと………初心に帰って、スッキリすれば、スッキリ祈れる。…………あ、そうか。祈りの「真ん中」を決めたかったんだ。」

そう、いつも私の中にある「祈りの軸」の、様なもの。

「それが分かんなくて………でもエローラと話して?」

なんか?
スッキリ、しなかったっけな???


そう 確か  「義理立て」とか。

そんなの 無しで 取っ払って

 私の  真ん中 の 私が。

 やりたいこと って。


「私が私のやりたいことをやる、だから「みんな」も喜ぶ」

確か。そんな事を。
言って、くれてたよね?


「流石エローラ先生………。」

なんだ、ろうか。

色々、詰め込み過ぎなのかな?
全部を、全部。

持って行きたい、と。
思い過ぎ?
そんなこと、ある??


私自身の、シンプルな、願い。

「それ」は 「ただ 在り 祈ること」だった。

ただ ただ 昼間の星の、様に。

 そら に 静かに 在って。

上を 見上げた時には。

 「ここで いるよ」って、光れる、様な。


「それ」が、初心だと、すれば。


青い屋根と、白い屋根、遠くに、門に近くなればなる程、増える白。

本来、「守りの色」ならば。

全てを、青にしたいと思う。

でも、お金の問題で。
白と、青があって。

みんなが、それぞれ、自分の満足のいく生活を。
どの、世界でも。
送っていけると、いうこと。

 「身分」「慣習」「見えない縛り」

 「力」「お金」「血筋」


 ラピス シャット グロッシュラー デヴァイ

どの、世界でも。

其々それなりに縛りはあって、程度は違えどやっている事は、同じだ。

多分、私の世界だって、そう。

世界の「仕組み」は。

そう、変わりない様な気がするのだ。


  「強者が弱者を支配する」

何が「強い」のか、それは世界によって違うけれど。

「支配」しなければ。

「社会」は、存続できないのか。

「共存」することは、できないのか。

人間ひとは必ず?

争う、ものなの??

私達は。

「言葉」を持って、「力」以外の解決方法を、見付けられるのじゃ、ないの?



「…………ああ、でも。そっか。」

ぐっと掴んでいた灰色の煉瓦、窓の縁を見て思い出す。

あの仄暗い空間で、話した筈だ。

私達のコップは。

「満たされていない」のだ、と。


「そうなんだよね………確かまだ。「スタート地点に、立っていない」んだ。」

フリジアが言っていた、「私が溢している」話、朝が言う「そもそも論」。

それは共通した、「器」「コップ」「満たされていない」「心」「愛」、そんな話で。


みんながみんな、空っぽ、若しくは少ししか入っていないコップを持ち右往左往している世界。

「無いから奪う」
「一時でも 満たしたい」と思う

しかし、その「なかみ」は。

きっと、その人の「本当に欲しいもの」でしか、埋まらないのだ。

それに、それは人それぞれ違う。

「うん?でも「もの」じゃないんだよな………。」

やりたい「こと」や、情熱を傾けられるもの、そんなものでも埋まるのかと思うけれど。


「満足感?なんだ?うーーーーん??」

再びこんがらがってきた、頭の中。

一息吐いて、大きく腕を上げくるりと、回った。


そうしてぐっとノビをして、腕を上げたその時「キラリ」と光ったのは。

「あ。」

手を下ろして、久しぶりにじっくりと見る。

乳白色の遊色、ここで見ると本当に美しく沢山の色が遊び、踊っているのが見えるのは。

そう、あの指輪である。

「ねえ。私は何をするべきかな?………いや、「するべき」は違うな?祈りたいのは、そうなんだけど、もう一歩、なんて言うか。なんだ、ろうか。プラスアルファ、………ね、言いたいこと分かるでしょ??」

初めて話し掛ける、この石に。

私の記憶が正しければ「これ」は。

「あの子」の筈だ。


そう考えると微妙な気がしなくも、ない。

あの白い部屋でのこと、様々な複雑な想い、純粋な色とその反対側には暗い色。
その両方を含む「あの子」はしかし、紛れもなく私の「なかみ」でも、ある。

は、わかるのだ。


自分が。

様々な「いろ」を含み、綺麗なだけではなく。

どす黒い、「いろ」をも含み。

、そう、在りたいと、思うこと。

美しく 在りたい と。


    願いの様に   祈る 様に。


思ってしまうこと。


「ブワリ」と拡がった私の「なかみ」の感覚、その中でまだ指輪は沈黙している。

この子は。
話さないのだろうか。

そう思って、手を下げようとした時「キラリ」と石が光った。


 「あなたが降らせているものは。なに?」

ん?
喋った。

「え?「私が降らせているもの」?…………光??」

単純に、そう答える。

それしか、思いつかないんだけど。


 「その「光」のなかみは。なんなの?馬鹿ねえ、すぐに忘れるんだから。」

クスクスと笑っている様な声、やはり鈴の様なそれはあの白い女の子の声に近い。

揶揄う様な、しかし一切嫌な感じの無いそれは私に「思い出して」と、言っている様で。


光が消え、いつもの指輪になったそれはもうきっと沈黙するのだろう。

その乳白色を見つめながら。

「光のなかみ」をぐるぐると、考えていた。



しかし、なんだか頭が纏まらなくてウロウロするのをやめ再び窓辺へ陣取った。

そう、ウイントフークよろしく、この狭い塔の中をぐるぐると回っていたのである。

「うーーん。これは。考えると、余計分からない系かも知れない。」

最もらしき事を呟いて、暫し頭を休める。

そう、ここからの青の景色は私に癒しを齎す最適な色を沢山含んでいるからだ。


「うん?エローラの店はこっち側か………。」

くるくると窓を移動し、ラピスを制覇しようと知っている建物を目に取り込む。

あそこも。
あそこも。
みんな。

「キラキラ、光が、降って?なかみ?は、…………」


  「君が 降らせているのは 」


「あ!!!」

パッと浮かんだ水色髪、私が降らせているものの、正体を。

言ってくれたのは、あの人だ。

「えっ。嘘。確かに。すぐ、忘れてるじゃん私………馬鹿???」

今更かも、知れないけど。

イストリアが大事な事を言ってくれたんだ。


 「私が降らせているのは 「愛」」だって。


「ほぇ~~~!何それ。え?て言うか、「愛があれば」?万事、解決するんじゃなかったっけ??」

なんか、よく、分かんないけど。

確かイストリアは、私が降らせているのは慈悲に近い、愛、だと。
そんな事を言ってくれてた、気がする。

「慈悲、って………なんかよく分かんないけど。」

確かに。

みんなが。

光を、受け取って、少しでも上を向いて。

それぞれが、歩き出せたならば一番いいと思って。

降らせてるんだ、いつも。


「可能性」なのか 「希望」なのか

それともただの「光」だって、いいんだ。

だって「美しいもの」は。


「そう、有無を言わさぬ、この世のものとは思えない美しい光は、チカラになるんだよ。見る、だけでも。まあ、それに降り注ぐしね………。」

そう、思って初めから光を見せるって。

決めた筈なんだ。


「ホント私って馬鹿…………。うん?いや?それが、「愛」になって………??」

光と、愛って。

同じ、かな??

分かんないけど。


でも。

「光」がみんなの力になって、それってエネルギーで。

「愛」は紛れもなく原動力でやっぱり、エネルギーでもある。


「ん?じゃあ、いっか。そうそう、単純なのが私のいい所よ。」

なんでも複雑にすりゃ、いいってもんじゃない。

そう、思ったんだ。

「世界を救う方法」は。

みんなが、単純なことだって。


「そう。だって。自分は自分でしか。救えないから。だから。全員、筈よ。」


一人頷いて、青い空を見る。

この、美しい景色を、みんなで見たいって。
思った筈なんだ。


 受け取って

 上を向いて

 少しずつでも 歩き出せれば。


そうして。

最後には、全部が 「繋がれば」。

それが一番、いい。


それには何が、必要だ?


その為に、蒔く種は、なんだ?

私がもっと、しっかりと。

踏ん張れる、ものは?


「なにか」を見付けたくて、自分の「なかみ」をぐるりと浚う。


そうして何気なく。

また、視線を乳白色へ戻したのだ。






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