665 / 1,751
8の扉 デヴァイ
ラピス エローラと私 3
しおりを挟む「まあ、確かに。そうだと思うわよ?だって別にヨルは「その人達」じゃ、ないんだから仕方が無いわ、それは。何が問題なのかって言うと………。」
「何だと思う?」
「うーーーん。」
暫く下を向いて唸っていた、エローラは。
パッと顔を上げ、キラリと瞳を輝かせるとこう、言った。
しかも、得意気に。
「問題、無いんじゃない??」
「へっ?」
「だって。ヨルだもん。多分、それでいいのよ。」
「え、エローラさん、意味が分かんないんだけど………。」
「あのさ。ヨルは決着付けたいのかも、知れないけど。やってない事は、分からないのよきっと。知ってるだけじゃ、駄目なの。ほら、本で読んだだけじゃ。解らない事って、あるでしょう。」
「まあ、うん、そうだね?」
「でもヨルは「それ」をやってきた。経験したと、感じてるけど。でも結局、多分やっぱり「自分」で、やらないと本当のところは解らないんじゃない?それに、「わかるわからない」は、別にするとしても。「解らないまま、進んでもいい」って事よ。」
「………ほ、う。」
成る程?
「それにさ。なにしろまた色々考えてたって、駄目よ。ヨルなら進まなきゃ。進んで、見えて来る事だって、沢山あるだろうし。なにしろ考えるタイプじゃ、ない。」
「う、うん。はっきり言ってくれると、なんか、うん。」
「私が思うに。ヨルは、「やったけど理解してない」のが、嫌なんじゃないかと思うの。納得してない、と言うか。でもね、多分。」
「うん。」
「それはね。…………「その時」が、来ないと。解らないんだと、思うわ。」
「?………その時?」
「そう。なんでもやりたいし、やってあげたいし、理解したいのも、分かる。ヨルはそういう性格だし。だからきちんと「解って、進みたい」のも、分かるの。でもきっと「その時」が来ないと解らない系の、問題ならば先に進んだ方が、いい。「その時」って。いつだって、「その先」に、あるものなのよ。そう、「恋」みたいにね。そう言われると、分かりやすくない?」
「…………なる、ほど?」
確か、に?
ある日突然。
「あ、そうか、そうなんだ」と。
気が付く事があるのは、私も解る。
解る様に、なった。
「恋」に、気が付いて。
顔がポッポと熱くなってきた気がして、頬に手を当てる。
急に金色の分量が多くなってきた私の上から、優しいエローラの声が降って来る。
「それに。多分、ヨルは優しいから。自分の「なか」の声を優先してると、思う。」
「中の、声?」
「そう。あのね、正直それそんなに悩む必要ない問題だからね??それはそれ、過去は過去。分かっただけで、ヨシなのよ。それでヨルはヨルの道を進まなきゃ。知れた事はラッキーだった。それでいいのよ。別に義理立てしなくて、いいと思うけど。」
「義理立て………」
「そうよ。そういう気持ちが、無かったとは言わせないわよ?多分、そこじゃないかなぁ。気になってる所。」
「そうなの、かも………?」
「多分ね、どれもこれも、ヨルならば。きっと、「今のヨル」には。精一杯、自由に。生きて欲しいんだと、思うけどな…。」
その、エローラの一言を聞いて。
急に込み上げてきた「なにか」、私の「なかみ」達が全力で頷いている様な、気がして。
涙が。
出てきてしまった。
「………ほらね。………だから、そういうことよ。」
静かにそう言って、ハンカチを差し出すエローラ。
それを受け取りながら、やっぱりエローラは凄い、と思う。
ラピスへ、来て。
友達になって。
シャットへも一緒に行って、私のおかしな部分をずっと見てきたエローラは、一度だって疑問を口にした事は、無いのだ。
いや、恋バナについては、突っ込むけれど。
思い返して、泣き笑いになる。
いつだって、ブレないこの友人が。
心底、大切だと思うんだ。
だから。
みんなの、為に。
どの、世界も、変わりなく幸せであって欲しいと。
思うんだ。
多分、過去の私も、今の私も。
どんな「なかみ」も。
エローラも マデイラも ハーシェルもティラナも
しのぶ レシフェ パミール
ウイントフーク フローレス レナ
ベイルート …
沢山、沢山の人に出会って、どれも大切じゃない人達なんて、いなくて。
今居る、「場所」は、違っても。
「世界」は 「存在」としては。
おんなじ で。
だからこそ、みんなが幸せにならないと「本当の幸せ」ではないと思うし、私はきっと。
「一部」では、納得できないのだろう。
「変える」とか
「救う」とか。
そんな、大層なことじゃ、なくて。
今の、私ができること
やりたいこと
みんなの為に。
勝手に、走り出したい所は、何処だ?
「うーーーーん。でも全然成長してない私ができることって………変えたい、じゃなくて。やっぱり、「見せる」ことかなぁ。」
グズグスと鼻を啜りながらも、ブツブツと独り言を漏らす。
すると、静かにお茶を飲んでいたエローラが口を開いた。
「「成長してない」、ね。そうでもないと、思うけど。」
「………えっ、ホント?そこんとこ、詳しく。」
涙を拭い、頬を叩いてエローラからの激励の言葉を、待った。
私には背中を押してくれる肯定の言葉が、必要だ。
「まあ、「成長しなくていい」、とも言うわね。」
「へっ???」
ちょっと、ズッコけましたけど?
エローラさん??
しかし、私のそんな様子を見ながらもしれっとエローラは続ける。
「当然じゃない」とでも、言う風に。
「あのね、ヨルのいい所って。沢山の事を知って、それでもそうやって素直に泣ける所よ。それって、私達にはできない、所よ。そっちの方だと、どうだか分からないけどね。でも、きっとレナの所だって、他の場所も。きっと、窮屈なんでしょう?想像だけでも、解るわ。」
「私達は。ヨルを、見てるだけでも楽しいもの。元気を、貰えるの。レナとも何回か話したけど、ヨルは何かを振り撒いてる。きっとみんなの力になる様な、「なにか」をね。だから結局、私達の世界を繋いで帰って行くんだろうし、それが、できちゃうだろうなって。本当に、思うわ。」
その、エローラの言葉を聞いて。
あの金色の言葉を思い出した。
「泣いても、笑っても。怒っても、精一杯足掻く様が。………美しい、なって………。」
「そうそう、そんな感じ!いい事言うじゃない。」
「う、うんありがとう?」
「なにしろ。とりあえず、考え過ぎずにいつもみたいに突っ走ってれば。多分、ゴールに着くわよ。いつの間にか、ね。」
「…………ゴール…。」
「あ、勿論ゴールは気焔との結婚?ハッピーエンド?そんな感じよ。そこは間違えちゃいけないわ。うん。」
鼻息荒く、ブレないエローラについつい爆笑、する。
泣いてるんだか、笑ってるんだか。
分からない、この時間が最高だと、思うのだ。
「まあ、何に悩んでてもいいけどさ。ヨルは、ヨルの、幸せを。達成すべく、向かえばいいのよ。きっとそれが。みんなの、幸せになるから。」
「そう、かな………?」
「そうよ。だってきっと………フフッ、凄いわよ多分。」
「え?なにが??」
「だってさ、きっと二人が結ばれた暁には世界が金色の光に包まれて全てが潤い、色鮮やかに踊り出してなんちゃら………みたいに、なりそうじゃない?」
「ちょ、エローラさん………」
私は一体、エローラの中では「何」なのだろうか。
ちょっとそれが心配になったけど。
しかし、やっとこさひと段落ついた私達の話が、ここで終わらなかったのは。
言うまでも、ない。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる