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8の扉 デヴァイ
ラピス エローラと私 3
しおりを挟む「まあ、確かに。そうだと思うわよ?だって別にヨルは「その人達」じゃ、ないんだから仕方が無いわ、それは。何が問題なのかって言うと………。」
「何だと思う?」
「うーーーん。」
暫く下を向いて唸っていた、エローラは。
パッと顔を上げ、キラリと瞳を輝かせるとこう、言った。
しかも、得意気に。
「問題、無いんじゃない??」
「へっ?」
「だって。ヨルだもん。多分、それでいいのよ。」
「え、エローラさん、意味が分かんないんだけど………。」
「あのさ。ヨルは決着付けたいのかも、知れないけど。やってない事は、分からないのよきっと。知ってるだけじゃ、駄目なの。ほら、本で読んだだけじゃ。解らない事って、あるでしょう。」
「まあ、うん、そうだね?」
「でもヨルは「それ」をやってきた。経験したと、感じてるけど。でも結局、多分やっぱり「自分」で、やらないと本当のところは解らないんじゃない?それに、「わかるわからない」は、別にするとしても。「解らないまま、進んでもいい」って事よ。」
「………ほ、う。」
成る程?
「それにさ。なにしろまた色々考えてたって、駄目よ。ヨルなら進まなきゃ。進んで、見えて来る事だって、沢山あるだろうし。なにしろ考えるタイプじゃ、ない。」
「う、うん。はっきり言ってくれると、なんか、うん。」
「私が思うに。ヨルは、「やったけど理解してない」のが、嫌なんじゃないかと思うの。納得してない、と言うか。でもね、多分。」
「うん。」
「それはね。…………「その時」が、来ないと。解らないんだと、思うわ。」
「?………その時?」
「そう。なんでもやりたいし、やってあげたいし、理解したいのも、分かる。ヨルはそういう性格だし。だからきちんと「解って、進みたい」のも、分かるの。でもきっと「その時」が来ないと解らない系の、問題ならば先に進んだ方が、いい。「その時」って。いつだって、「その先」に、あるものなのよ。そう、「恋」みたいにね。そう言われると、分かりやすくない?」
「…………なる、ほど?」
確か、に?
ある日突然。
「あ、そうか、そうなんだ」と。
気が付く事があるのは、私も解る。
解る様に、なった。
「恋」に、気が付いて。
顔がポッポと熱くなってきた気がして、頬に手を当てる。
急に金色の分量が多くなってきた私の上から、優しいエローラの声が降って来る。
「それに。多分、ヨルは優しいから。自分の「なか」の声を優先してると、思う。」
「中の、声?」
「そう。あのね、正直それそんなに悩む必要ない問題だからね??それはそれ、過去は過去。分かっただけで、ヨシなのよ。それでヨルはヨルの道を進まなきゃ。知れた事はラッキーだった。それでいいのよ。別に義理立てしなくて、いいと思うけど。」
「義理立て………」
「そうよ。そういう気持ちが、無かったとは言わせないわよ?多分、そこじゃないかなぁ。気になってる所。」
「そうなの、かも………?」
「多分ね、どれもこれも、ヨルならば。きっと、「今のヨル」には。精一杯、自由に。生きて欲しいんだと、思うけどな…。」
その、エローラの一言を聞いて。
急に込み上げてきた「なにか」、私の「なかみ」達が全力で頷いている様な、気がして。
涙が。
出てきてしまった。
「………ほらね。………だから、そういうことよ。」
静かにそう言って、ハンカチを差し出すエローラ。
それを受け取りながら、やっぱりエローラは凄い、と思う。
ラピスへ、来て。
友達になって。
シャットへも一緒に行って、私のおかしな部分をずっと見てきたエローラは、一度だって疑問を口にした事は、無いのだ。
いや、恋バナについては、突っ込むけれど。
思い返して、泣き笑いになる。
いつだって、ブレないこの友人が。
心底、大切だと思うんだ。
だから。
みんなの、為に。
どの、世界も、変わりなく幸せであって欲しいと。
思うんだ。
多分、過去の私も、今の私も。
どんな「なかみ」も。
エローラも マデイラも ハーシェルもティラナも
しのぶ レシフェ パミール
ウイントフーク フローレス レナ
ベイルート …
沢山、沢山の人に出会って、どれも大切じゃない人達なんて、いなくて。
今居る、「場所」は、違っても。
「世界」は 「存在」としては。
おんなじ で。
だからこそ、みんなが幸せにならないと「本当の幸せ」ではないと思うし、私はきっと。
「一部」では、納得できないのだろう。
「変える」とか
「救う」とか。
そんな、大層なことじゃ、なくて。
今の、私ができること
やりたいこと
みんなの為に。
勝手に、走り出したい所は、何処だ?
「うーーーーん。でも全然成長してない私ができることって………変えたい、じゃなくて。やっぱり、「見せる」ことかなぁ。」
グズグスと鼻を啜りながらも、ブツブツと独り言を漏らす。
すると、静かにお茶を飲んでいたエローラが口を開いた。
「「成長してない」、ね。そうでもないと、思うけど。」
「………えっ、ホント?そこんとこ、詳しく。」
涙を拭い、頬を叩いてエローラからの激励の言葉を、待った。
私には背中を押してくれる肯定の言葉が、必要だ。
「まあ、「成長しなくていい」、とも言うわね。」
「へっ???」
ちょっと、ズッコけましたけど?
エローラさん??
しかし、私のそんな様子を見ながらもしれっとエローラは続ける。
「当然じゃない」とでも、言う風に。
「あのね、ヨルのいい所って。沢山の事を知って、それでもそうやって素直に泣ける所よ。それって、私達にはできない、所よ。そっちの方だと、どうだか分からないけどね。でも、きっとレナの所だって、他の場所も。きっと、窮屈なんでしょう?想像だけでも、解るわ。」
「私達は。ヨルを、見てるだけでも楽しいもの。元気を、貰えるの。レナとも何回か話したけど、ヨルは何かを振り撒いてる。きっとみんなの力になる様な、「なにか」をね。だから結局、私達の世界を繋いで帰って行くんだろうし、それが、できちゃうだろうなって。本当に、思うわ。」
その、エローラの言葉を聞いて。
あの金色の言葉を思い出した。
「泣いても、笑っても。怒っても、精一杯足掻く様が。………美しい、なって………。」
「そうそう、そんな感じ!いい事言うじゃない。」
「う、うんありがとう?」
「なにしろ。とりあえず、考え過ぎずにいつもみたいに突っ走ってれば。多分、ゴールに着くわよ。いつの間にか、ね。」
「…………ゴール…。」
「あ、勿論ゴールは気焔との結婚?ハッピーエンド?そんな感じよ。そこは間違えちゃいけないわ。うん。」
鼻息荒く、ブレないエローラについつい爆笑、する。
泣いてるんだか、笑ってるんだか。
分からない、この時間が最高だと、思うのだ。
「まあ、何に悩んでてもいいけどさ。ヨルは、ヨルの、幸せを。達成すべく、向かえばいいのよ。きっとそれが。みんなの、幸せになるから。」
「そう、かな………?」
「そうよ。だってきっと………フフッ、凄いわよ多分。」
「え?なにが??」
「だってさ、きっと二人が結ばれた暁には世界が金色の光に包まれて全てが潤い、色鮮やかに踊り出してなんちゃら………みたいに、なりそうじゃない?」
「ちょ、エローラさん………」
私は一体、エローラの中では「何」なのだろうか。
ちょっとそれが心配になったけど。
しかし、やっとこさひと段落ついた私達の話が、ここで終わらなかったのは。
言うまでも、ない。
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