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8の扉 デヴァイ
ラピス エローラと私
しおりを挟むとりあえずの初日は、方々へ予定の連絡を入れた後のんびりする事にした。
とは言ってもエローラに話石をして、ルシアに挨拶に行っただけだけど。
「はーーーーーーぁ。…………落ち着く。」
だらしなさと、のんびりのギリギリの線で、椅子に座って、いた。
多色の光が美しく差し込む、教会の中。
久しぶりに正面入り口から青を堪能して、タイルを観察した。
そうして中へ入り、今は人形神の、前に。
びろんと、座っているのである。
うん、なんて表現していいのか、分かんないけど。
ベロン?びろん?
とりあえず、誰か入って来てもギリギリ、体裁が保てる程度よ………。
午前中の光が美しく背後から人形神を照らして、まるで後光が差している様である。
その隣には、私が作った。
あの、像もきちんと鎮座している。
「………うん?こんな、色だったっけな?」
確か。
コーヒー色か、なんかじゃなかったっけ??
灰色が混じった様な、薄茶の落ち着いた色だと思っていたけれど。
どう見ても乳白色に変化している「それ」は、確かに私が彫った、あれである。
「うん?………でもラピスも変わって来たって………言ってたしね。うん、いい変化だよきっと。それでチカラが……… 」
朝食でハーシェルも、言っていたけど。
「どんどんいい「気」が増えてきて、明るくなっている」
そう言ってたんだ。
「あ、泉には行かなきゃね………。」
きっとその所為も、大きいと思う。
ソフィアの事もあるし………訪れる人が増えたならば、やはりザフラにも会った方がいいだろうか。
「うーーーーん。」
「そうか、これが。」
「えっ。びっくりしたぁ。」
いきなり隣に来た極彩色は、ピョンと私の隣に飛び乗り、座った。
「あれ?どうしたの?」
「いや、一応見せておいた方がいいかと思ってな。いきなり、は拙いだろう。」
「まあ、そうだね?」
きっとあの二人に変化を見せたのだろう。
狐の姿の千里はそのまま私の隣で、じっと像を眺めている。
いや、人形神か。
そう言えば、この人セフィラ………も、知ってるし?
まあ、見たことあるんだよねきっと………。
色褪せた生成りの生地、丁寧な造りの人形と、繊細なヴェール。
あの日記にあった図案を思い出しつつも、その時はセフィラの腕に嵌っていたのかなぁと、思いが巡る。
繊細な生地への、細かい刺繍。
日記をつける、あのインク。
二階の部屋から見える、あの景色も。
ああ、なんか 知ってる
私の中の、思いなのか。
それとも。
指輪の、想いなのか。
でも。多分。
時間 次元 時空
空間 瞬間 その 時
頭の中を巡るのは、沢山の、景色と時間。
「跳べる、って。こういうことなんだろうか。」
「ここ」から、何処にでも跳べる感覚、誰かの「想い」「瞬間」、「置いて来た楔」、それを知覚し「解り」「跳ぶ」こと。
「まあ。そうだ、ろうな。」
「…………うん。」
そうか。
この狐が。
そう、言うならばそうなんだろう。
私達は「跳べない」と思って、いるけれど。
その「枠」とは。
「想い」とは 「繋ぐ」とは
「うーーーーん?でも、「全部」だから??うん?」
「あまり、「考える」な。」
「うん?うん。」
確かに。
頭脳プレーは向いてないし。
考えない方が、なんだかいい気は、する。
考えて、「頭で理解」しようとすると。
なんか、逆に「できなく」なりそうな…………。
チラリと隣の紫の眼を、見た。
うん、多分、そう。
「それなら、いっか。うん。」
そう、向いてない事は本部長に任せて。
私は。
とりあえず、「今」を楽しむ、のみだ。
「さ、それならば。」
そうして早速、立ち上がって人形神と像を。
観察し始めたので、ある。
「ねえ、エローラの前では特に、気を付けてよ?」
「いや、仲が良いなら、良い程。言っておいた方が、いいだろうな。」
「まあそれは…あるかもだけど…。」
次の日の、水の時間。
私達は連れ立って、南側への石畳を歩いていた。
久しぶりのラピス、景色を見ながら歩いて行こうと、少し早めに教会を出てきた。
きっとお昼も食べてくるだろうと、既にハーシェルは予想済みだったらしい。
「ゆっくりしておいで。でも夕飯迄には帰って来るんだよ?」
そう言われて、苦笑した。
まだ早いんだけどね………。
私達、どんだけ喋ると思われてるんだろ?
でも否定できない所が辛いわぁ。
多分、きっと、絶対?
夕飯ギリギリくらいには、帰れると思うけど。
チラリと通った北の広場、ウイントフークのガラクタ屋敷を遠目に、南の広場へ向かう。
ぐるりとラピスを周る形で、青の街並みを楽しむのだ。
狐姿の極彩色は、ピョコピョコと尻尾を揺らしつつも足早に駆け回っている。
実際、視界にチラチラと入る極彩色はかなり五月蝿いけれど。
きっと止まったならば、好奇の視線が集まる事を分かっているのだろう。
しかし、時折道行く人や窓からの視線を気にしながらも、順調に私達は散歩を楽しんでいた。
「ふぅん……あまり、変わってないな。」
「お前が移動してから、そう経っていないだろう。」
「まあ、そうかもだけど。あれからどうなったかなぁって、思ってたからさ………。」
何度か祭りをやって。
屋台の「色」も増えたし、きっとイオスの店ももっと有名になった筈だ。
きっとまた、新しい店が何かしら増えているかと思ったけれど。
南の広場に新しく、二号店を見つけたくらいで他はそう、変わりない景色である。
しかし見慣れたレモンイエローの店が視界に入っただけで、かなりテンションは上がったけれど。
「んーー?でも知らない人だな……?」
チラリと確認したが、店に居るのは見知らぬ顔だ。
もしかしたら二人は北側にいるのかも知れない。
ま、とりあえずそれは後だわ………。
カッチリと決まっている訳ではない、ラピスの時間、しかしエローラとは絶対に話が終わる気がしない事も、分かっている。
多分、今日以外であれば後一日、時間が取れるかどうかなのだ。
そうしてもう一度南の広場をぐるりと見渡すと、一つ頷いて反対側の路地を進んで行った。
水色のテント、可愛らしい店先が見えて来た。
抑えようと思っていても。
テンションが上がりきってしまうのは、仕方が無いと思う。
フワリと舞い出た蝶をパタパタと回収しながら、急いで店先へ近づいて行った。
とりあえず中に入ってしまえば。
エローラは蝶くらい、気にしないのは分かっている。
必死で頭上に手を動かしながらも足もきちんと動かしていた私は、開くガラス扉から見慣れた灰色のポニーテールが出て来たのを見逃さなかった。
「エローラ!お待たせ!」
「えっ?でっかく………色も違うんだけど??何、成長したの??」
「ん?」
くるりと振り返ると、そこには。
さっきまできちんと狐であった、極彩色が腕組みをしてニヤリと立っていて。
振り返るとエローラの視線が、ヤバい。
あ。
これ 勘違いしてるやつだわ………
説明すれば分かってくれるとは、思うけど。
その前に一悶着ありそうである。
あの顔………後でとっちめてやる…!
ニヤニヤしている千里は、きっと面白がる気満点だ。
とりあえず溜息を吐きながらも大きな背中を押して、水色の店内へ入れると。
そのまま閉めてしまおうかと思ったが、観念して私も中へ進んだのである。
うむ。
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