透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

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「なんにも考えないで。とりあえず、行っておいで。」

魔女の店でそう、イストリアに言われて心が軽く、なった。

ソフィアにどこまで聞いているのか、分からないけど。
多分、私が散々ぐるぐるしているのは、バレていた筈だから。



強い、風が吹き枯れてしまった畑。
しかしきっと、それはただの強風では無くて。

何かの悪戯なのか。
天の、意思か。
それとも。

私達の、未来を挫く、なにかなのか。

その、訳も知りたいけれど多分、問題は「そこ」ではない。
問題なんて、生きてればきっとどんどん湧いてくるものなんだ。

それに。
どう、対処するのかが問題なんだ。

どう問題それを、捉えて。

どうしていくのか。
前を向くのか、後ろを向くのか、きっとそんな問題の筈なんだ。

そう思って、「星を見る」事を提案した筈だ。
そうして。


「なにに」「どう」祈るのか

「星を見せたい」こと
沢山の人に 上を向いて欲しいこと

「チカラ」はみんなが受け取ることができて
「世界」は全てを 愛しているということ

「できない」なんて
思い込みでしか ないということ

みんながみんな
それぞれの美しい「いろ」を持ち
その「いろ」で 輝いていいということ

世界は 美しいということ


この世界の人達に、知って欲しいこと、見て欲しいこと、気付いて欲しいこと。
私にできる事は、そう多くはない。

しかし「見せる」ことならば。
できるんだ。


それに。
「自分のこと」も、ある。

沢山持っている、私の「なかみ」。


「誰」が「どこまで」「私」で

「私じゃない」のか それとも。

「全部 私」なのか。

 繋がり とは  

 えにし とは 


血縁がはっきり分かる部分もあれば、そうではない部分も、多い。
何がどう、繋がっているのかは私の中の勘でしか、ないけれど。

でも多分。
それで、合っている筈だ。


血の縁

魂の縁

光の 縁


頭の中を、「繋ぐ手段」が光り、走っている。

その、どれもが正解に思えて。
しかし、「間違い」など、無いのだろう。

きっと私が「そう」「思えば」。



「…………うん。とりあえず、オッケー?」

数枚の着替えと最低限の身の回りのもの、大概はラピス向こうの家にも揃っている。

それを思い出しながら確認して、水色のトランクを閉じた。

「できたのか?」
「うん、とりあえず。ま、忘れ物があっても大丈夫でしょ………多分。」

大事なものは殆ど、身に付けるものだけだ。


チラリと腕輪と指輪に目をやって、紫の瞳に確認する。

そう、今回の同伴者はこの極彩色、一人である。

フォーレストは、目立ち過ぎるし。
金色はどうしようかと、思案する前に本部長にこう言われたのだ。

気焔あいつじゃなくて、千里こっちを連れて行け。」

と。


どうしてなのかは非常に気になったが、きっと私が言ってどうにかなる問題ではないのだろう。
それは、分かる。

だから。
寂しくなるのを避ける為に、敢えて訊いてはいなかった。

まあ、この狐には。
バレていると、思うけど。


「ねえ、ずっとそっちのままにしてね?」

「何故?多分、無理だと思うが。」
「まあそうかも知れないけどさ………一応、あるじゃん、なんか………  」

きっとまだ、私は金色と結婚する予定のままの、筈。

それなのにまた違う男の人と、帰るなんて…………。
無理無理無理無理………

ロラン、シャットにもう行ったかな………?


そんな私の思惑など、お見通しなのだろう。
しれっと人型になった千里は、トランクを手に取ると緑の扉を開けた。

「さ、じゃあ出発だ。」

「気軽だね………」
「まぁな。グズグスしている暇は、無いぞ?」

「確かに。」

あれからデヴァイへ帰って来て、方々根回しして貰ったけれど期間は一週間も、無い。

時間のズレがあるのかどうかにもよるけれど、あまり期待しないで「五日程度」という事に落ち着いたのだ。

「よし、ウダウダしてても、時間勿体無いよね!行こうか。」

そうして私達は、再び。

今度は朝の森を抜けるべく、肌寒い朝靄の中を進んで行ったのである。



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