透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

訪れたのは

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「    !?!!」

ビクッと、思い切り仰け反って目が覚めた。

足までブルリと震えた、その夢は。


「大丈夫、大丈夫………私は方法を知っている………。」

ブツブツと心の中で唱えながら、自分の身体を白い光の綿毛で埋めていく。

頭から、ザッと星屑で流したかったけれど。
ドキドキしている心臓、今の場合は「この方がいい」と私の中身は言っている。

そうして少し。

全身を綿毛で包み込み、自分の周りを光の放射が拡がる様に包み込んで。

「ふぅ 」

やっと一息吐いて、白い刺繍と天蓋のカーテンを目に映した。



うん。
大丈夫。

「あれ」は。

「怖いもの」では、なかった。
少し、びっくりしたけど。

でも。

あれは、きっと…………



その夢の中で、私は少し暗い部屋に、いた。

思い出せないが、数人の友人か知り合い、その中に一人だけ知らない人が、いて。

どうやら会話をしていた私達は、その「知らない人」を「厄介」だと思っているらしい。
友人達の様子からそれを嗅ぎ取った私は、いつもの癖でその人に話し掛けたのだ。


どうしたって、輪の中にいると「調整役」の様に動いてしまう、自分。

その時も。
やはり、居た堪れなくなってその人に声を掛け輪の中に入れようとしたのだ。
その人も。
仲間に、入りたそうな様子をしていたからだ。


すると、嬉しそうについてきたその人の興味は当然、私に向いた。

は、解ったのだけど。

その瞬間、「グッ」と「その顔」が私の目の前にあって。

「怖い」と言うより、「驚き」が勝ったのだが身体は仰け反って、いたのだ。


その様子を思い出して、「ああ、やっぱりな」と思い直す。

やはり。

私は「濾過器それ」の様なものなのだろう。

多分、「あれ」は。

 
 純粋な興味
 剥き出しの我儘
 寂しさの塊
 
そんな様な、もので。

基本的に人には無視されてきた、「なにか」できっと私を見に、来たのだと思う。

それか、「試し」に、来たのか。

私が。

「それ」に対して、どう反応するのかを、だ。


しかしたっぷりと金色を補充されていた私は、驚きはしたが怯む事なく、自分を真っ白に戻す事ができた。
まだ、浸食されていなかったのも、大きい。

多分、「あれ」は私に侵入することは、できないだろうけど。
触れられたなら、何かしら影響はあるかも知れない。


「なにしろ、とりあえず………大丈夫。」

もう一度自分で自分を確認して、白の光線で自分の周りを包む。

なんとなくのイメージだけど。

あの、仏像の背後や天使の背後にありそうな、後光が差しているイメージの「あれ」だ。
名前が分からないから、何とも言えないが「あれ」で自分が包まれ、光っていたならば。

何者をも、侵入を許さないに違いない。


「うーーーーん。………やっぱり、なのかな………?」

なんとなく自分が濾過器それだと思ってから、「なにか」に利用されるか、「誰か」に利用されるのか。
しかしそんな未来は選びたくないのだけれど。

そう、思っていた。

それに、きっと「今の私」ならば「そうならない」事も、解っていたのも、ある。


今の私には、金色あれも、あるし。
それに。

沢山の、色んなチカラを、知っているからだ。


「それならやっぱり………。」

デヴァイここの景色をぐるりとイメージして、自分が使えそうな場所、もの、空間のアタリを付けておく。

きっと、またああいった「なにか」は私の元にやってくるだろう。

でもあれは。

きっと「人間ひとの想いの塊」の、様なものだと思う。
人間では無いが、「それ」から発生した「念」に近い様な、もの。

そういったものに接して改めて、人の想いには、力があるのだと思うのだ。


「大丈夫 ?」

私の独り言が気になったのか、ベッドの側へやって来たのはフォーレストだ。
下の子が不安そうに、私の顔を見て訊いてくれる。

「うん、大丈夫だよ。怖くは、ないから。」

そう言ってふわふわの頭を、撫ぜつつ癒される。
なんとなく上の子も撫でて、小さな溜息を吐くと気遣う声が聞こえてきた。


「まだ、疲れている。もう少し休みなさい 」

そう言ってくれる上の子に頷くと、ポサリとまたベッドに横になった。




しかし。

頭上の星図を眺めながら、あまり考えない様にしようと思いつつも、状況を整理し始める私の頭。

でもきっと、初めての経験だから一度だけしっかり把握しておいた方がいいかも知れない。
そう思って、枕元のフワフワを感じつつ、ぐるぐるを始めた。


そう

 多分、大丈夫 だから。

きっと きちんと整理しておけば。

また

  ああ なっても   大丈夫。

うん。 多分


て、言うか?

「あれ」は   多分 ひと では ないな??


 確かに「念」の様なもので

 私を? 確かめに? 見に きた

 興味? なに? 美味しいの?私。

いやいや 多分………… なんだ  ?


  ああ

        そう か。



 「受け入れられるか」 試しに 来たんだ



そう、私は。

何処でも 何時でも   だけど。


 浄化 じゃなくて  濾過 なんだ

   だから。


 どす黒い いろ も 好きで

 鮮やかな いろ も。   勿論 好きで。


ああ  だから  「あれ」も。


  「試しに」 きたんだ



なんとなく、納得できて、また自分の「なかみ」を浚う。

勿論、「あれ」は。

私の「なか」に、ある。いる。

だって「あれ」も。

 全部の、中の一部だし

 私は 何も置いていかない 行けない し

 あれ も 悪意はない

      他意はない

 ただ。    

        純粋 な だけ  だから。


  それ が  わかる から。


 置いていけない んだ



思い返してみても、私を「害」しようとは一切、思っていない「あれ」。

そんな「いろ」は一切無くて、あるのはただの興味と寂しさ「見つけてもらった喜び」、そんなものしか、なくて。

切なくなる胸を抑え、また自分の中の光を拡げる。


あまり「あれ」に、のめり込むのは。

違うからだ。


知っている けど

あれも きっと  私の    世界の     

       全部 の     一部 だけど。


でも。

いつまでも「あれ」に感けていては、自分が消耗することも、もう分かるからだ。


「…………ふぅ。」

新しい、思ってもみなかった様な、予想できた様な、複雑な思いである。


でも、とりあえず良かった………。

自分の中で発見してあった「対処法」、そのタイミングの良さにふと、気付く。

「…………、か。」

きっと。

このタイミングだから、なのだろう。


えっ。
これもまた?

「起こるべくして 起こってる」って、こと??


ふと、ずっと前に千里が言っていた言葉が脳裏を過った。

 『お前は 筈だけどな』


ぇっ。

確か?

あの、狐が…………なんか、「時が来たから動き出す」的な、感じだった、から…………???


「ぉぉ??」

おかしな声を出しながら、少しだけ反芻しようとして、止めておいた。

うん。
危険だ。

あまり深く考えない方が、いい案件に違いない。

これは、きっと。


そう、私はとりあえず自分の「なかみ」をクリアに保って。

そう、「なに」が来ても大丈夫な、様に。

そうそう。

ちゃんと。
保って、おけば。


「うん、そうそう、そうしよっ!よし、起きるか!」

謎に大きな声を出して、自分に気合いを入れる。

パチクリしている下の子、微笑む上の子は私の様子を見て満足気だ。

うん。
悩んでいるのは、性に合わない。


「よし、朝風呂しよっ!贅沢~~。」

そうしてクローゼットから、着替えを引っ掴むと。

勢いよく、緑の扉を開けたのであった。



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