653 / 1,684
8の扉 デヴァイ
供給
しおりを挟む何故だか涙が出て。
暫く、止まらなかった。
でも。
仕方が無いのだとも、解る。
だって。
ずっと。
ずっと どのくらい
どれ どれ程の
長く 短い
短くも 長く も
あったで あろう 時の 流れの 中
計り知れない 長い 間
私は。
「ひとり」だったのだろうか。
この人を。
見つけられなかったの だろうか。
「…………?」
涙が流れる、ぐしゃぐしゃの顔のまま、顔を上げた。
心配そうに覗き込む金の瞳は、落ち着いた色で私を包んで、いる。
…………でも。
この人、人間じゃ、ないんだけど??
なん で?
前 まえ は ?
ひと だった ??
多分。
会ったこと は ある と?
思うん だ けど ??
馴染んだ感覚、私に「みんな」が沁み込んでいるからなのか。
「わかる」、「知っている」感覚、多分会うのはこれが初めてではない、思い。
「…………。」
無言で見つめる私に、なにか気が付いたのだろうか。
少し細まった金の瞳は、キラリとその焔を煌めかせると。
何故だか、見えない様に私を胸の中へ包み込んだ。
…………怪しい。
そう、思わないでもなかったけれど。
でも。
まだ。
「わかった」ばかりで混乱している私に、それ以上の情報を受け取る用意はできていない。
それが分かるのだろう。
そのままぐっと力が増した腕の中に、暫く沈み込んでゆく事に、したのであった。
ジワリ、ジワリと沁み込む金色。
それに大分癒されて、少しは頭が働く様になってきた。
えっ でも?
結局?
「私達」は?
廊下での様子を反芻して、やはり頭の中にあった複雑な「想い」が星屑に変換された事を確認する。
あれは、私のぐるぐるだけど。
反射的に感じた「恐怖」、それから導き出される過去の「想い」、「知っている」感覚。
やはり。
私は何度も「それ」を繰り返して。
癒された生も、あっても。
そうで無かった生も、沢山あったのだろう。
それ で
結局?
私 私 は
確か 「自分を犠牲にするのを止める」って。
思って ?
「自分を大切にすること」「まず 自分を満たすこと」
それ で それだけで 「いい」って
「みんな」が 言ってくれて?
それを して て
でも ぐるぐるは どうしても してて
その ?
ぐるぐるが? 今度 は 星屑
星屑 に ?
「変化………変換?変わった 」
確かに。
「変わった」ん、だけど?
自分の中にある、なんとなく感じる「溜まって 減ってゆく自分」。
確かに。
色んなものを、「溜める」だけ、では。
自分が渇くし、擦り減って。
それで 何度も。
終わっ て でも 今
ギュッと、腕にまた力が入った。
うん
ありがとう
ありがとう わかるよ
そう だよね ありがとう
良かった
止まっていた涙が、再び流れて。
流れるに任せたまま、少し落ち着いてまた、戻る。
そう、「今は」。
大丈夫、だから。
それに?
そう、私は丁度考えていた筈だ。
「そうすれば」良かったんだ。
でも。その時は。
分からなかった んだ
そう、私達は。
チカラを、貰えること。
空から、宇宙から、自然から、水から土から、動植物、なんでも、この「世界にある存在」からなら、「込もっているもの」からなら、なんでも。
きっと。
「チカラ」を 貰えるんだ
知って いれば。
「繋がった」今ならば、それが解る。
でも。
沢山の「わたし」は、それをまだ知らなくて。
「ふーーーーーー 」
大きく、息を吐く。
溜まっている何かを吐き出す様に、ゆっくりと、長く、全部、吐き出して。
再び頭から意識して、ボロボロと自分の中にあるものを、剥がしてゆく。
金色を補充した所為か、勢いよく流れ出した星屑は「ドバッ」と一気に、部屋の床を埋め尽くした。
「喜ばしいこと 」
いつの間にか、最初から居たのか。
フォーレストが隅で、星屑と遊んでいるのが見える。
その大きな緑の瞳と、目が合って。
「あ。」
なんとなく、パッと思い浮かんだ「あの空間」、幻想的な木立はきっと長がいる、あそこだ。
「えっ?」
でも?
私、まだ行って…………。
そこまで思い浮かんで、ハッとし自分の中を探る。
多分。
ディディエライトじゃ、なかろうか。
チラリと顔を上げると、緑の瞳は肯定の色を、浮かべている。
うん?
フォーレスト?が??
…………あり得るな。
確か。
あの子は。
「私」の友達じゃ、ないけど「知ってる」気がしたんだ、そう言えば。
「…………成る程?」
もしかして。
私の知らぬ間に、会いに行ったのだろうか。
なんか…………素敵、だけど。
いいの?それって?
え?
そもそも、どうやって???
フォーレストはスピリットかも知れないけど、私は生身だけど???
よく、分からないけど。
でも、そうなんだろう。
緑の瞳は頷いて、また星屑と遊び始めたし。
金色の腕は、再びギュッと、強くなったから。
…………うーーーーーん。
でも。
とりあえず。
「そういうこと」なら?
きっと、「供給」できてる、ってことだよね………?
チラリと覗き込む、金の瞳。
その色は複雑な「いろ」を含んで、ただ真っ直ぐに私を見つめている。
でも?
そうだよね…………。
えっ?
うん?
ディディエライトは、「私の中」。
長は あっち?
うん?生きてる、よね??
どゆこと??「違う」の?
まあ 確かに
全部 が 私じゃ ないのかも?
だけ ど???
とりあえず、よく分からないこの問題には蓋をする事にした。
だって、多分。
また、真っ直ぐに進んで、いれば。
ちゃんと、自分の声を聞いてそのまま、進めば。
「そのうち…………分かる、かぁ。でも。…………なんか、コワッ。」
その私の言葉を聞いて、少し緩んだ金色の焔。
心配、してるんだ。
まあ、心配、だよね…………。
チラリと指輪に目をやって、光る乳白色を確認した。
これが、見つかってから。
沢山の事が私の中で「わかって」、この人が。
「私」と 「どう」「どんな」
「関係」
あ。
ヤバ
思い出して顔を抑えてみたけれど、時、既に遅し。
真っ赤になった私の「なかみ」に、構わず侵入してくる金色の、チカラ。
ち
ちょ っ と
まって
え
その時。
初めて、「恥ずかしい」より「気持ちがいい」が、勝って。
身体から力が抜け、彼の腕の中にそのまま、身を任せた。
グッと侵ってくるチカラは衰える事を知らず、そのまま私の全身を埋め尽くし、更に大きな焔でぐるりと取り囲み全身を這い回って、いる。
しかしその全身を燃やし尽くす様な焔が。
とてつもなく、気持ち良くて、心地良くて。
これまでの「想い」や残っていた「澱」の様なものを一掃してくれるその焔を、拒む事などできずに、ただ。
そのまま、身を委ねていた。
「 ん」
うひょっ
変な声 出た
ん?
気が付くと。
視界に見えるは魔女部屋の重厚感のある天井、チラリと見える金髪。
えっ?
どういう状況???
多分、移動して………ソファー?ここ?
起き上がろうと身体を動かすと、チラリと見えている金髪の吐息が首にかかって、いる。
えっ?
瞬間、「ゾワリ」と背筋が震え、嫌じゃないけれど「知らない」感覚、しかし私のなかみは「もっと」とも、言っていて。
「えっ、えっ、ちょ、ちょっと?!?」
混乱している私に、向けられる深い金の瞳は。
「分かってる」と、いう風に溜息を吐いて体を起こし私を抱え直した。
ん?
え?
なん か 大丈夫、だった???
「大丈夫だ。………まだ。」
え
また 「まだ」??????????
なに が???
ぐるぐるする私の頭、しかし私の「なかみ」は「もっと」と欲しているのも、分かる。
分かるん、だけど。
ちょ っと まだ
私の こころの じゅん び が
ええ まあ うん
なんて いう か?????
慰めの、様に。
ポンポンとされる、背中に少しだけ抱く、罪悪感。
「お前の。その時、で良い。」
静かにそう話す、金色の声はそれが真意だと、伝えてくれるけれど。
うん。
はい。
まあ。
なんだろ…………
うん。
頑張る、のも変だし。
努力します?も、もっと変。
本当は。
「私も」って、言いたいけど。
「いや、でも、ちょっと待って?まだ流石にそれは早いわ………ちゃんと「愛」が、解ってからじゃ、ない???」
「もう、黙れ。」
「 むぐ」
もう、いっぱいいっぱいなのにっ!
そうして再び、金色に口を塞がれた私は。
チラリと部屋の端で星屑に埋もれる緑の羊を見ながら、そっと目を閉じたのであった。
うむ。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる