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8の扉 デヴァイ
祈りとは
しおりを挟むうーーーん?
うーーーん
うーーーー ん?
ある日の白い、礼拝室。
眩く白い、部屋全体が光っているこの空間。
四方からの光を浴びて、目を瞑りながらもまっさらの状態にある、私は。
今日も変わらず唸って、いた。
「あっ!えっ。………ん?」
そうか?
ん?
でもな?
いや、でも、そうじゃ、ない??
なんとなく「何か」が気になって、気分転換に魔女部屋ではなく礼拝室へやってきた、昼下がり。
真っ白な正面の小さい扉を見ながら「何が気になるのか」を、再び唸っていた私。
特に何かを思い浮かべていたわけじゃ、ないのだけれど。
パッと思い付いたのは、この事だった。
「実は。………神、は本題じゃなくて、祈りが?本命?本題?だったんじゃ、ない??」
ん?
「いやでもな………?「神がいる」って事にしないと祈らないからな………いや、そんな事ないのか??」
何に、首を捻っているのかと言うと。
そもそも私はずっと「祈りには力がある」と、思っている。
だから神社や教会も好きだし、「人の意思」には力があると思っているのだ。
ぶっちゃけ、理由は分からない。
以前、大きな礼拝堂で考えた「謳うこと」「舞うこと」で光が降りること。
それは関係あると思うし、私達はきっと光だし、そうして力が循環するのだと、思うんだけど。
実際のところ、デヴァイではどうなのか分からないし。
わからないん、だけど。
………でも。
これだけ続いてきた「祈り」という「行為」、それに「力がない」なんて。
嘘だ。
あるよ。
空が、無くたって。
外が、無くたって。
絶対。
「だから、「祈り」を無くさない為に神を作ったんじゃないかと思うんだけど………でも自然は神だろうしな…?こっちは「ある」と思ってたあの絵は礼拝堂には無かったし??でも吸い込まれるって事は、やっぱり力として吸収されてるの…?どうなんだろう、か………グロッシュラーとここでも違うのかな。フリジアさんの所行こうかな………。」
「ふぅん。あながち、間違いじゃないと思うけどね。」
その時、背後から声を掛けてきたのは朝だ。
「あっ、珍しいね?ここに来るのは。」
「だってなんだか声が聴こえて来るからさ。まあ、また唸ってるなと思って覗いたんだけど。」
「そう………。ねえ、でもやっぱり。朝も、そう思うよね?」
私が問い掛けた声に、小さく首を捻る朝。
「でもさ。私達の世界だと、自然が「神」な事も多いからねぇ。元々は、そうだったんだろうけど。どこからが創られた神か、ってのはまあ、複雑な問題よね。祈りに力があるのは間違い無いとは思うけど。」
「うん………なんて言うか、「忘れないよう、廃れないよう、最後の砦」として残ってるって、言うか。だって、祈らなくなっちゃったら困るわけじゃない?感謝の念とかさ、光とか、やっぱり祈りに込める「想い」っていうのは「世界」に伝わると思うんだよね………。」
そこまで話して、ふと考える。
「祈り」に関しては、以前から色々と思っていたけれど。
しかしこの頃、私の「なかみ」に追加されてきた様々な事柄、沢山の謎。
そうして私の中でも少しずつ、「祈り」への見方が広がってきたのだと思う。
「無に帰した」という過去と神のこと、実際祈られていた対象が「長以外」かもしれないこと。
形の変わった祭祀、葬り去られた歴史。
私の世界ともリンクする事柄、実際あっちでも。
「祈り」自体は、廃れようとしている訳で。
なにに 祈られてはいけなかった?
祈りが浸透し 皆が祈る事によって弊害があるとすれば?どこに?
もしかしてこっちの世界でも 自然に祈っていたの?
以前はあって 今は無いもの?
止まっている 循環
チカラの 元
別れている 世界
「えっ?やっぱり?繋がる、よね??うーーーーーーーん???」
ずっと前から「祈りには力がある」と思っていて。
「祈り、謳、踊り」からは光が溢れて、結局は「私も」光なんじゃないかと、思うし。
それに行き当たると、結局「みんなが、私達が光」という事にも、繋がると思う。
だから「祭祀」があるし、季節の節々で祈り、歌い、踊って。
力を、送って。
力を、受け取って。
全部と、繋がって循環して、私達は続いてきた筈なんだ。
きっと。
「えーー、謳い、舞ったりして光が降りるからそれが力で、溢れ出すもの、それは「愛」でも、あって………?」
「私…は、光で?愛でも?ある、の??うん?みんな、なのか………?」
ぐるぐる、ぐるぐると、案の定私がいつもの様に唸り始めると、途中で茶々が入った。
「ほら、もう漏れてきてるわよ。その辺にしときなさい。」
「ん?」
その、朝の声に顔を上げると。
いつか見た、正面扉の「打出の扉」からキラキラとした石が、パラパラと溢れ始めていた。
「あっ!えっ?うん、とりあえず………拾うか………。」
「じゃ、あまり悩まなくていいと思うわよ。」
「うん?はぁい。」
パタパタと祭壇へ向かう私にそう声を掛けて、朝は礼拝室を出て行った。
「うん………?謳って、ないんだけどな?」
首を捻りつつも、少しだけ開いた隙間から漏れ出している石をスカートで受ける。
見られたら、確実に怒られそうだけれど。
まあ、誰もいないしね………。
そうして集まった小石を両ポケットへ入れ込むと、美しい意匠の扉を見上げ「ありがとう」と言う。
平和を象徴する様な、鳥が描かれリボンが美しく舞う、小さな白い扉。
謳ってないけど。
祈っても、いないのだけど。
こうして石を出してくれた事に感謝しつつ、手を振り礼拝室を後にした。
「祈り………謳、図書館は誘うように謳ってみれば、いいかな。占いは密かに宣伝するでしょう?………それで祭祀は私が誘ってもアレだし待つしか無いけど、謳いに行くのはまだ連絡来てからでしょう…それから歴史…は、なんか分かんないかもしれないし??」
ポケットの小石をチャラチャラと鳴らしながら、独り言を言いつつ青の廊下を歩く。
クスクスと笑っている調度品達、「あら」「おや?」と声が聴こえるのはきっとこの石に反応しているのだろう。
明るい雰囲気の礼拝室から、青の廊下を抜けると私の複雑だった頭の中も幾分スッキリしてきた様な、気がする。
「うん?「気がする」だけ???」
青のホールで立ち止まり、大きな窓から見える空を眺めていた。
でも?
結局。
「今 私にできる事」は、そう多くないし。
そもそも。
「変えたい」とか
「変えよう」とか。
そういうのは、辞めるって。
うん、思ったんだし。
「今の私」が、できることはやって、後はまた
「その時」が、来れば。
自ずと。
動くんだ し?
そう、だから、ジタバタしないでリラックス、して。
「そう、確かめっちゃ初めの頃にイストリアさんから「ただ 在ること」みたいな手紙、貰って納得したんだし………。」
魔女部屋への、通路へ入りそのままブツブツ言いながら、歩く。
うーーん
だから
色んなこと 沢山のこと
難しいことも 簡単なことも 苦手も得意も
沢山、やりたいことも、ある、けれど。
「とりあえず、全部。「流れ」に、身を任せて来た話を順に、ちゃんとこなして行くっていう、覚悟を決めて………」
ジタバタ しない
身を任せる
「そう なるように できている」
そう
誰が なにが 誰を なに をも
変えようとせず
真っ直ぐ 前を 見て。
だから。
私は、こうして一歩一歩。
進めば。
いい、んだ
「えっ?あっ??」
その、瞬間。
「ゾゾゾ」と、自分の頭から剥がれ落ち、星屑に変化してホロホロと床へ流れ出してゆく「なにか」。
その「なにか」は複雑なモノだったのだけど。
頭から落ちた瞬間から、身体を伝い星屑に変化して自分から出てきたのが、分かる。
「えっ」
なん で??
いきなりの展開、しかし私が溢す「それ」は何か美しいものを見た時と変わらぬ、いつもの星屑である。
歩きながらの考え事、そうして自分の中で「納得できた」と、思った瞬間、起きた事件。
そう、私の中では。
事件、だった。
「あっ、だからだ?まずい。」
そう、瞬間的に。
悟った、からだ。
えっ?
でも、なにが?
何で?まずい、の???
自分でも訳が分からず、そのまま歩き続け、魔女部屋へとりあえず入る。
そうして落ち着くバーガンディーへ、倒れ込むと。
「うーーーん?」
と再び、唸る事になったのだった。
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