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8の扉 デヴァイ

それが齎すもの

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えっ

 か、関 係

  関係 が

    す  進む?


それって??

あの  その あの


        ってこと ですかね???

ソフィアさん?????


ぐるぐると言うか、ぐらぐらと頭が揺れている私の隣で。

変わらず落ち着いた様子のソフィアは、まだじっと何かを考え込んでいる様だった。


何をどう、訊いていいかも分からない私は、そのまま頬をピタピタと冷ましながら青の道を眺め、頭も同時に冷やそうとしていた。

しかし。

そこにキラリと見えたのは極彩色の毛並み、ずっと遠くに佇んでいるあの、狐は。

一応、私達の話が済むのを待つつもりはある様だ。


…………でも。
あれ絶対、聴こえてるよね………。


今更かも、知れないけど。

でも、この話題………。
帰り、めっちゃ恥ずかしいやつじゃない???


しかしあれを追い払う事はできない。

きっとソフィアに気付かれない様、あの位置で止まっている筈の狐は、余裕でくるりと回り私に「解っている」ことを示している。


…………うーーん。
なら。

仕方無い、よね………。


そうして小さな溜息を吐いて諦めると、極彩色から視線を外し隣のフワリと波打つ髪を眺めて、いた。
月明かりで見るソフィアの灰色の髪は、銀髪に見え私の髪色にも、近い。

「どっちが青いか」なんて事を確かめて遊んでいるうちに、顔を上げた青い瞳と目が、合った。


「あのね。多分、だけど。」

「はい。」

「その、わだかまりは「今のあなた」がなって、癒される事で解消するんじゃないかと、思うわ。」

「…………。」

えっ。
「今」の、私 が

 そう  そ  そう?  なる?


思考停止の頭、しかし青い瞳は真剣だ。

ピタピタと叩いていた手を頭に当て、ぐりぐりと揉み解す。


うん。
大丈夫、大丈夫 えっと?

私と あの あの金色………

関係が進む………        なれ ば

うん?

癒される………



 スポンと堕ちた、自分の「なか」。


 そう  


 もう   わかって るんだ


   あの 金色の とてつもなく美しい焔が

 私の  なか に   侵ったときの

   あの  心地良さ

   あの  安心感  満たされた 感覚

 なんでも できそうな

 あの  溢れ出す 光 で

 ありったけの  「なにか」で



 そう


 「光」でも  「愛」でも  

 なんだって 降らせられる


  あれ が    あれば。



想像だけで満ちる感覚、私達はまだ「あの方法」でしかチカラを伝え合うことは、していないけど。

それを。

あの、もっと、夢で見ている様なで伝え合ったならば。


白い部屋での、夢の、様に。


 お互の 境目が   


      わからなくなる くらいに


     解け合って  しまった  なら ば






「…………え。」

無理。

いや待って。

うん、わかる、分かるのよ、感覚ではとてつもなくいい感じよ??
でもさ、ほら  なんて言うの

まだ  ねえ

 ねえ  はや  早くないです?

ソ  ソフィア  さん?????




でも。

まだ、なんとなく横は見れない。


恥ずかしさに顔を覆い、「うぅ」と呟き足もジタジタ、する。

とりあえず自分の中が落ち着くまでそうしていようと、深呼吸する様に努めていた、その時。

「あら、まあ。確かに、これは…………。」

ん?

少し驚いた様な、声。

しかし感心した様に納得の色に変わり、きっと隣は頷いているであろう事が分かる。

どうしたのだろうか。


とりあえずは再びピタピタと頬を冷ましながら、顔を上げ、くるりと向き直った。


「あっ。」

「ねえ。…………素晴らしいわね………「想像だけ」で、これなんでしょう?フフッ、なんだか楽しみだわ。」

「えっ。楽しみ………」

「まぁね。私だって、見たいもの。あなた達が。のを、ね。」


そう、辺り一面には金色の星屑がキラキラ、コロコロと拡がっていて。

私から未だホワホワと溢れる、白金の金平糖、青の道は途中まで金色の星の道になっていて。

発光している星屑、照らされる青のタイルはこの不思議な夜に、更なる幻想的な空間を創り出している。
とんでもなく美しい景色、それを見て再び溢れる星屑はまだ、止まる気配を見せない。


しかし。

ただ、ただ美しいこの光景を目に焼き付けたくて。

また、わたしがいつでも「ここ」へ来れる様に「楔」を置いておける様に。

そのままじっと、まるで夢の中にいる様なこの空間に、見惚れていたのだった。







「でも、ね。」

少し落ち着いた頃、私の顔色を見て再び口を開いた、ソフィア。

すっかり終わった気でいた私は「えっ?まだ??」とアワアワしていた。
だが、その美しい形の唇から発せられたのはぐるりと一周した、元々の疑問に対する、解答だったのだ。


「あのね?私達は、やっぱり。まだ、何も分かっていない、動物に近いのだと、思うの。」

「?………動物?」

月を映す美しいその瞳に、じっと見つめられて。
「こんな美しい動物…」と脱線する私の頭の中、しかしソフィアの話は続いていく。

「やっぱりね。中身肉体外側は、別々で、あって。が混同されているうちは、難しいのかも知れないわ。だって、私達はきっとまだ。その中身の喜ばせ方を、知らないのだもの。………いいえ、気が付いていない、の方が近いかしらね…。」

「………魂。」

また、魂の話が出た。


まだ、頭の中の整理はできていない。

でもソフィアの言っていることは、解る。

はやはりブラッドフォードが言う、「それ」と「これ」の、様な話で。

私達の中で混同されている意識、魂という概念が広く認識されていないこと、肉体の持つ欲求、心を埋める為の、「愛」。


沢山の事が、複雑に絡み合って。

今は、糸口が見えないだけなのだと、思う。


「私達は、自分達のことをよく、知って。「バランスを取る」必要があるわ。どうしたって、この世界に存在する為には体を持つものだし、中身が無いと、それはきっと存在できない。だから。繋いできた、私達ができる事をやっていくしか、ないのよね………。」


呟く様に、そう言ったソフィア。

彼女の持つ石には、「記憶」が入っているのだろう。
それは魂の記憶なのか、持ち主からの引き継がれる記憶なのか。

私の「夢」と同じ様な、ものなのか。

それは分からないけど。


静かに星屑を眺めるソフィアの隣で、私も自分の中の靄をもう一度、しっかり見つめようと自分の中に入る。

この、星屑に包まれていれば。
安心の中、いい感じで物事が整理できそうな気がするのだ。



そう、ソフィアもブラッドフォードも、言っている事に、そう違いはない。


「魂をよろこばせること」

肉体からだをよろこばせること」

それは。

両方とも、必要なことなんだ。


それと共に、確かに。

両方を持つ、私達は「バランス」を取らなければ。

きっと、両輪が上手く回らないのだ。


私達は、もっと。

自分達のことについて、知らなければならない。

「魂」「心」「体」

似ている様で違う、魂と、心のこと、体との関係性も。

難しいけれど。

多分、ここを理解しないと、次へは進めないしきっと貴石あそこの問題も、解決しないだろう。


「うーーーーん。感情が入ると………やっぱり………こんがらがりますよね。どうすれば良いんだろ??でも、やりたいからやる、のを止める‥のもな…………でもな??うーーーーん?」

そうして、私の疑問が振り出しに戻った頃。

再び青い瞳に見つめられていることに気が付いて、座り直したのであった。






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