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8の扉 デヴァイ
その 理由
しおりを挟むよく晴れた空が見える気持ちの良い魔女部屋には、今日もハーブ達が姦しくお喋りする声が響いていた。
「今日も 」
「そう ね」
「満ちてる」
「沢山 ね 」
「溢れているよ 」
「おいしい 」
「そう おいしいね 」
そうハーブ達が噂をしているのは、私が「ピッカピカな件」に、違いなくて。
「まあ、喜んでくれるなら…」と開き直ってぐるりと部屋の中を見渡した。
私は、と言うと。
「私達が 繰り返すこと」
「隠されている なにか」
「自分の 道」
そんな漠然とした大きな課題が目の前をフワフワと漂っている、気がして。
ボーっと朝食を食べた後、落ち着かずに早速魔女部屋へ向かう事に決め、やって来たのだ。
ここなら、ゆっくり考え事ができる筈だ。
そう思ってすぐにバーガンディーへ沈み込んだのだけど、意外と花達の声が大きくていけない。
集中しようと思っても、花達の話している内容が可愛らしくてなんだか笑ってしまうのだ。
クスクスと一頻り笑った後、考え事をするのを諦めた私は花達を眺めながらなんとなく「花言葉」について考えていた。
この世界では、あるのだろうか。
あったとしても、私の世界とは。
違うの、かなぁ??
花言葉と言えば、花びらをむしりながら花占いなんてのも、ある。
うーん、でもああしてお喋りしているのを毟るのはちょっと問題があるよね………?
でも公に「占い」が無いよね、この世界には。
あ、カードはあるか………でも。
ウェストファリアやイストリア、フリジアの所でしか見た事が、ない。
あの人達は少し、特殊だ。
普通の人は持っているのか、今度訊いてみようか。
私が相談室をやっていた時も、みんな「おまじない」については知らなかったしマデイラが「懐かしい」と言っていたのを聞いたくらいだ。
昔はあったけれど、廃れてしまったのだろうか。
でも科学とかそんなものが発展、発達していない世界って。
そういうのが、流行るんじゃないの??
古今東西、女子達が好きなのはそういうのじゃ、なくて??
うん???
なにかが引っ掛かる気がして、頭の中を探してみる。
なんだ、ろうか。
ありそうなもの、が無いこと?
そのくらいはそんなに、おかしな事じゃないかな………。
うーーーーん?
ぐるぐる、ぐるぐると考える頭の中、少しだけ集中が途切れた頭の中に「ポン」と浮かんだ「こたえ」。
「まじない」
「占い」
ん?
あれ?
確かに??
私的に、「まじない」と「占い」はとても近い匂いがするものだ。
それこそ切っても切れない、「自然から導き出されるなにか」、「世界の智慧」、「私達の存在以上が知ることのなにか」の様な、もの。
「まじない」とはその「チカラ」を行使する事で、「占い」はその手引きや手順、方法の様な気がする。
でも?
「無い」んだよね??
いや、「知られていない」のか。
でもマデイラは知っていた。
それなら?
「…………う、わ。最近、聞いたと言うか、言ったわ………「隠蔽」って???えっ………。」
なんとなく繋がったピース、しかし私の直感はそれをそのまま、「繋げて」と言っている。
「途切れた歴史」
「魂について」
「まじないが私の世界には無いこと」
「占いがこの世界には 今は無いこと」
「チカラ まじない 」
「見えない もの 」
「否定される 理由 」
えっ?
占い、だとか。
オカルト、だとか。
馬鹿にして否定されるのは、これの、所為なんじゃない??
「繋げられない よう」
「本当のこと」が バレるから
「私達が 同じことを繰り返す理由」
「すぐ答えに 辿り着くから」
「ゴールに辿り着くのが 早いから」
「みんなが 自分の道をスムーズに歩き出すから」
そう、占いは統計だ。
星の動きや、これまでの経験と記録から導き出される道、パターン、それを紐解いて容易に人生を楽しく、歩む為の。
「道標」や「助言」と、なるもの。
だから?
「知られると困る」って、こと?
「それ」が、「近道」だって。
「私達が知ってしまう」こと
「それにより不都合になる 誰か」
「迷わせたい 惑わせたい」のか
え?
でも、誰 が?
なに が?
「そんなこと」を???
っ。
言葉にできない興奮、心臓がドキドキと早鐘を打っていて。
多分。
いや、絶対。
これは。
「本当のこと」だと、私の真ん中が、言っている。
ずっと、ずっと昔から、古代から読まれてきた星の動き、それを活用した統計学や人の道のこと。
生まれた星から導き出せる、属性や傾向、それを生きることに利用すること。
統計学が学問だと言うならば。
何故、占星術は学問には認められていない??
何故、オカルトだと。
怪しい、インチキ、現実的じゃ、ないと。
どうして 認められなかった?
誰に 認められなかった?
誰 が。 認めさせたく なかった??
目に映るバーガンディーが、私の記憶を自分の世界にふと引き戻す。
この、色は。
あの学校にある、重苦しいカーテンの色に似ているからだ。
私達が生まれてからずっと押し込められる、空間や学校、押し付けられる、ルール。
それは。
「何の為に」「誰の為に」ある ものなのか
「みんな」が「同じ」だとされ、「違え」ば
はじかれるような、そんな空間。
だって、元々「違う」のに?
「違う」のに「同じ」である事を強要され、「合わせられなければ」「おかしい」「変わっている」「異端」「不気味」「理解できない」ものとされ「生き辛い」、社会とは。
私達に与えられていると思っていた、「知ること」「学ぶこと」「知る権利」「選択すること」、それすらも?
限られた物の中から、「これだけならば」と、与えられた物の、中からしか選べていないのだと、すれば。
「………辻褄が、合う、じゃん…………。」
説明できない思い、しかしぐるぐると渦巻く自分の「なかみ」はそれが「本当のこと」だと、大きな音で言っていて。
「えぇぇ…………。だから、やっぱり…………。」
先人達の智慧は正しかったし。
「占い」「オカルト」そんな事として、書店であれば「趣味」の棚に括られてしまう様な、ことが。
「本当のこと」を 指し示す 道標になること
「……………………………なにそれ。いい。」
ここに来てどんどん明らかになる、自分の道、好きなもの、こと、何故それが好きなのかという、「意味」の様な事柄。
晴れていく行き先、進むべき道、進みたい道を示す「これ」は?
一体?
「なに」のチカラ、なの…………?
目の前にフッと浮かぶ、自分の「なか」の沢山の、想い。
「祈り」に チカラがあると思っていたこと
「占い」が 好きなこと
「それぞれの色」で 輝く様が 見たいこと
「繰り返す 魂」
「辿る道」「知ること」「わかること」
「善悪ではなく」「愛」
「それぞれが それぞれの場所で 懸命に輝くこと」
「困難」「障害」「長い道のり」
「勇気」「続けること」「そのものの真実を見る 見ようとすること」
「連綿と続いてきた星からの情報」
「続いていることには 意味があること」
「智慧」
「歴史」
「儀式」
「祭祀」
「祝祭」
沢山の想いと色、水鏡の様な光景がくるくると自分の中を、過ぎる。
そうして、降りて来る、想い。
「知って いる」
実際、「体験」はしていないのだ、今の私は。
でも。
いっぱい、あるんだ。
子供の頃から「なんとなく」解っていること、「知っている」様な感覚、「当たり前」だと思っていたそれは。
「…………智慧?」
勉強は、そんなにできる方じゃない。
得意不得意が激しいし、特に数学ならぬ算数は嫌いだし。
データを無視する事は無いけれど、どちらかと言えば自分が経験したことから導き出される推論と「直感」。
それだけで、ここまでやってきた様なものだ。
何度も何度も、ここに来て覚える「知っている」という、感覚。
それも、また。
私の中の誰かの、「智慧」なのだろうか。
「………それなら、素敵だね??」
目に映る長机の上、透明の石、内包される気泡と何か土の様な生命の、カケラ。
全てのものが、固有に持つ「それそのものの」情報、蓄積されている「チカラ」なのか「エネルギー」なのか。
それは何かの「チカラ」かはたまた、「情報そのもの」か。
……………うぅん?
チカラ、情報、持っているもの、含まれている、それとは………。
待って、ちょっと難しくなってきたけど………?
チラリと青空の窓を見て、思考を元に戻した。
この辺りはきっと、あの本部長やベイルートの管轄の、筈。
私はもっと、うん、占いとかのこと考えるのよ…そう、占星術が実は「本当のこと」の近道だ、っていう話よ。
そうそう。
くるりと向き直り、壁に美しく並ぶ沢山の引き出しを眺める。
整然と並ぶその同じ大きさの引き出し、下の方には大きめの棚も、設えてある。
確かあの教会の小部屋にも、こうして棚があって。
並んでいる本の中に見つけた、「呪」の文字、中身はセフィラの書いた青の本だったこと。
その中には、この世界の「星占い」の様なものが記されていたこと。
…………ん?じゃあ、あるって事じゃん。
セフィラはデヴァイ育ち、という事は………??
「………うーん、とりあえずはフリジアさんかな??」
私の伝手は、まだそう多くない。
しかしなにしろフリジアならば、星占いの断片程度は知っている事、間違い無さそうである。
てか、まじないやる人はみんな必修科目にした方が、いいと思うけどね??
「えー、もしかしてシャットにあったらどうしよう………でもあれば絶対、気付くよね…?」
ぐるぐると考えるが、あの最初の説明で「おまじない」はあったが「占い」は無かった筈だ。
「なんとなく………シンが、何か言ってた、様な………?ああ、でも生まれ月で石が決まるのなら、やっぱりある程度は普及してるよね??うーーん?」
とりあえず私が一人、ここでぐるぐるしてても始まらない事だけは、確かだ。
「よし!」
とりあえずフリジアに約束を取り付ける事、そして。
勢いよくバーガンディーから立ち上がり、この部屋の中を見渡す。
きっと私の予想が当たれば。
この部屋の中には、なにかヒントになりそうなものが眠っている筈だ。
それなら。
そうして嬉々として腕まくりをした私は。
とりあえず端から目に着いた棚を、探索する事にしたので、ある。
うむ。
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