透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

私は というと

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何かがすっきりしない。

目が覚める前に、そう、思った。


何故だか「今目覚めるちょっと前」だということが分かっていた私は、今し方見た夢の内容を反芻していた。



えっと?

なん、か??

色々やったから、「気が付いた」みたいなこと、思ってた気がしたんだけ、ど?


夢の中では、納得していたんだ、ちゃんと。
それで。

「次はきちんとやろう」的な?
「もう繰り返さない」的な。

事を、思った気がする。


「うーーーーん?…………でもな???」

なんっか。

なんだろうか、何かが。

足りない?
違う?
スッと落ちない?


なんだろうか、この、胸のモヤモヤ。
すっきりはしていない、納得した筈なのに「言い聞かされて我慢した子供」の様な、感覚は。


「一体…………何なのだろう、な?」


自分の。

奥、深く。
深く、とても深い所まで。

潜ると、決心してから見ている、夢の様な「なにか」。
いやきっと。

私の「なかみ」なんだろうけど。



は、男だったり女だったり、時代や背景も曖昧で色々ある。

こうしてきちんと思い出そうと考えてみれば、辻褄が合わない部分や背景は色々見えて来るのだけど。

夢だからなのか、なんなのか。

「その中」では、それが「本当」だし何らおかしなところは無い。

ただ、もし、が。


 私の「本当のこと」なのだと、すれば。




「いや。…………そうなんだろう、けど。」

知らない部分、自分にはまだ分からないと思っていた部分も多い。
特に、男女の「あれこれ」とか。

これまで学校でも、友達との会話でも。

積極的に入る事は避けていた、だ。
私達の間では、そう忌避される事なく話されていたその「彼氏彼女」という話題に、私が積極的に入っていく事は無かった。

「恋愛話」は好きだし。
そんな漫画や、物語も、好きだけれど。

「自分」が。

「誰か」と「どうこう」なること、それ自体が想像できなかったというか、避けていたというか、興味はあれども口にするのは憚られる、という様な。


それをふと、思い出した。

誰に叱られることの、ない。
罵られることも、誹られることもない場所、よく見知った仲間と居ても。

しのぶに、さえも。

、その。


 「感情」?「感覚」?


なんでだ、ろうな?


ずっと

ずっと

蓋をされて いた

この  感覚  想い   抑圧された


       「なにか」



多分。

が。


「私、の。固まり?しこり?………なんだろうな。」

でも。

あの、奥底にある濁った色の靄が「それ」で、きっと私のこの感情にも影響を及ぼしているであろうこと、は。

わかる。



「……………ふぅ。」

胸がぐっと押されている感覚があって、細く息を吐いた。

長く考えるのは危険かも、しれない。

なんとなく、そう思う。


解決するまで、ぐるぐるしたいのは山々だけど。

この、「重さ」に引き摺られて思考能力が下がると共に、自分が暗く深い谷に向かって堕ちていくのが分かるのだ。


「…………とりあえず。一旦、終了、かな。」

まだ、夢の中なのか。
それとも。

パッと、目覚めれるのか、分からないけれど。

どう、しようか。


そんな時は?
あれだ。

を、思い浮かべれば。


いつだって。
大丈夫、だから。


 心に燈った金色の灯りを、心底愛おしいと思うのは仕方が無いだろう。

 どんなに深い、谷に落ちたと、しても。

 どんなに荒れた海で、何も見えない嵐に放り出されたと、しても。


きっと「想えば」見える、光があるということは。

こんなにも、心強いものか。


こんなにも。

小さな、光でもって、私を満たす。
もの なのか。




不意に口を突いて出る、言葉。


「ああ。美しい、な。」

「「 そうであろう 」」


 あれ? 久しぶりだな??


小さな光を辿りながらも、そう思って自分の「なか」を探る。

この頃、出てくる事のなかったこの人はどうしていたのだろうか。

「あっ?」

もしかして?

すっかり、「そっち方面」の事を後回しにしていた事を思い出して肩を落とした。



「「 いいや。 お前は 「私」 」」


「「先ずは  己が満ちねば 」」


「「なにも 為すことは ままならぬ 」」



その、響いてくる言葉を聞いて。

安心すると共に、確かにとも思う。


この間、感じた筈だ。

まずは。「私」が、「満たされ」ること、それが。
きっと、先へ進む糸口であり、始めの一歩であるということを。



「うん。ありがとう。」

確かに、自分のこともよく分かっていないのに他に色々手を出しても、仕方が無い。

まずは、きちんと「私」を全部、回収して。

そうして、心置きなく、溢れるがままに、溢せる様に、なれば。


「そう、万事、解・決。」


 「「 そうさね  」」


「「 そう なるように  できて いる 」」



うん。

思った。それ。


あの、雨の祭祀の時に。

なんだ、ろうな?

それこそ、「運命」?

「タイミング」?

 なんて言っていいか、よく分かんないけど。


「「そうなるようにできている」って言うのは、なんとなくだけど。よく、分かるよ。」


そうと、分かれば。


再びぐるりと辺りを見渡して、あの光を探す。
一度下を向いてしまったけれど、見つけたあの光は、もう無くなる事なく。

私の視線の先に、スッと現れるのだ。

まるで。

、そのもの自身が。


「意志」でも、持っている様に。



「でも多分、ってあれだから?そうなら、いいなぁ…………。」


そうして、胸にあの金色の焔を思い浮かべながら。

再びゆっくりと、真っ直ぐに。

それに向かって、進んで行ったのだ。
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