透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

その絵

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「だって絶対。美しいと、思うんですよね………あっ、自分で言うのも、なんだけど。」

そう本部長の前で宣った私は、自分の「自画自賛ぷり」に気が付いて頭を掻いていた。


「…………確かに。興味は、あるな。」

「ですよね?!やった!!」

「五月蝿い。まだ、決めた訳じゃない。大体どうやって取り替え………いや、案外?どうだ………」


しめしめ。

やはり、予想通り乗り気になった本部長にほくそ笑んでコソコソとカウンターへお茶を貰いに行く。
ああなったらそっとしておいた方が、いい。

それを解っている私はシリーに目で合図すると、お茶の支度をしてもらい自分は大人しくテーブルへ戻る事にした。
まだ、テーブルでは人型になった千里が座っているし、今日は珍しく朝も食事を一緒にしていたからだ。


「なぁに?今度は一体、何を始めるつもりなの?」

器用に椅子の上でスープを飲んでいる朝は、顔も上げずにそう言っている。
「またやってる」的な言い草にプリプリと言い返してみるが、きっと説得力は無いだろう事は自分でも解っている。


しかし、私には。

あの、金色以外の栄養源が必要なのである。

それも、とびきり美しくて、ワクワクする様な、できれば楽しいものが、いい。

それを考えるとやはり、三人の絵を並べるという事自体がなんだか楽し気なこの企画は外せない気がするのだ。

もし他にあれば、それも平行してやれば良いし??

「ねえ、だって。夜空に星を、パァーーーッと光らせるにはやっぱりかなりのモノが必要だと思うんだよね………絵を並べたら絶対面白いと思うし、それ以外にも何か…うーん、カードも幾つか見せて貰おうかな??」

「ふん?それは俺も見たいな。」

「へぇ、意外。興味あるの?」
「そりゃ。」

私が一人でぐるぐると独り言を言っている間に、二人は何やら絵の話になった様である。
千里は他の二つを、見た事があるのだろうか。

でも、もしかしたら?

この人、見たこと、あるんじゃないの…………??


今日も鮮やかで豊かな髪を揺らし楽しそうに話をしている極彩色は、その深い紫の瞳をくるりと回して一瞬、こちらを見た。

「知ってる」という、「色」を宿したその瞳は。

やはり、幾つもの「人の生」を見てきているのだろう。
そんな気が、する。


きっと持っているだろう「なんでも見通す千里眼」、この頃時空がバラバラの夢、「想えば行ける」という、自分の中の、確信。

それを、思えば。
千里が他の二人を直接知っていると考えても、不思議じゃない。

それに。
これ私の石は。

そもそも、人間ひとでもないし。

じゃあなんなのかと考えると、「なにかチカラの塊」の様なものに、感じられるのだ。


私達は、きっと。

どんな物でも其々がこの世界を構成する「なにか」の一部で、形が違うだけで。
石は、その中でも「純粋なエネルギーの塊」の様な物だと、思う。



大地を巡りみんなを探して、謳い、舞う、祭祀も。

誰かの「なか」に、入ってみたり。
「なかみ」だけが飛べる、時空旅行も。

あの気持ちの良い、揺り籠で揺れている時も。

旧い礼拝堂で謳い、光が降りて包まれた、時も。


全部世界に溶け込むことで、解る様になってきた「世界の仕組み」、なのか「全部すべてのなかみ」なのか。

この頃感じる、私を取り巻く「もの」達のこと、チカラのこと、世界の、こと。

それを考えると、すんなりと「わかる」、石達のこと、みんながみんな、「近い」存在なのだということ。

そう、「全く違う」存在だと思っていたこれまでとは、明らかに考え方が違うのが、自分でも解るのだ。


、言い表したらいいのか適切な言葉は見つからないし、自分でもしっかりとその内容を把握できていないのだと思うけれど。


「でも、多分。説明できないからって、解らない…いや、沁み込んでない、って事じゃないと思うんだよね………。」

その言葉を受けて、きっと私の頭の中身を解っているであろう極彩色が、続きを述べる。

「まあ。では。上滑りだし、なんとでも言えるからな。のかどうかは、別の話だ。お前はまあ、………」

「えっ。まあ、なに??」

「いや、いい。いいんじゃないか、で。」

「あっ。今いつもの台詞で煙に巻こうとしたでしょう??駄目だよ、ちゃんと教えて?」

「だからとりあえず絵を頼むという事だろう?」
「いや、違うよ!ん?違くないのか??」

首を捻っている間に、私たちの分の食器も片付けさっさと席を立つ極彩色。

引き止めようかと思ったが、「根回ししてやる」と白衣を指されてしまったら、私に不満は無い。

「ちゃんと、お願いね?」
「俺を誰だと思ってる。」

「ハイハイ、とりあえず今日はどうするの?」

わちゃわちゃと小競り合いをしている私達を解散させ、今日の予定を確認する朝。
しかし、多分予定は無い筈である。

「うーん?決めてないけど、とりあえず魔女部屋へ行って他にいい物がないか探そうかなぁって。」

「じゃあそうしましょ。とりあえず目の届く範囲にいて頂戴。この頃、意外な人が来たりするからね。」
「ああ、それはあるかも…。」

なんだかんだ、アイギルがいきなり訪問して来たり、あの長い名前の人が来たり………??


再び忘れたあの人の名を考えながら、青の廊下を出て、ホールへ向かう。

そうして私の中では決定事項になった「夜の祭祀」への準備を進めるべく。

魔女部屋へ、美しく楽しいものを探しに向かったのである。

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