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8の扉 デヴァイ
二人
しおりを挟む「側へ。行った方が、いいか?」
レナを見送り、そのまま桟橋を歩いて腰掛けた金色は、まだ私を抱いたままだ。
その腕の中から見る美しい紺色の夜空は、再び増え始めた星がキラキラと瞬き、私の目を楽しませてくれている。
チカチカと瞬く星を数え始めていた私は、その、言葉を聞いて。
「多分デヴァイでの事だろうな」と思い、それについても並行して考え始めた。
あの星が一番大きいかな………
で?
フェアバンクスに、来るって事だよね?
可能なのかな………
あれも中々綺麗………えー、幾つ迄数えたっけな?
ん?でも毎日また一緒に居られるなら、嬉しいけど………。
てか、そもそも何で別々なんだっけ?
理由あるんだよね………?
「えー、20までは覚えてるんだけどな………。」
それなら。
やっぱり。
空を見上げていた視線を背後へ戻し、夜の明かりに透ける久しぶりの金髪を楽しむ。
ここは、まじない空間だからなのか。
「紺色」と言っても、青に近い紺でしかもかなり透明感がある「いろ」なのだ。
「明るい夜空」といった態の空を背負った金髪の美しさと光る瞳に、今し方考えていた事が頭からすっぽりと抜け、そのままじっとその瞳を見つめて、いた。
「側に。行こうか?」
再びそう言った金色の瞳には、心配の色が見て取れる。
いつの間にか治まっていた燃える焔、その代わりに浮かぶ少し曇った色が胸の奥をキュッとさせる。
でも。
あなたはそっちで。
やる事があるから、そうしたんだよね?
それか、その方が都合が良いからの筈だ。
「ううん、まだ。大丈夫。」
多分、私が「まだ」と言ったのが気になったのだろう。
探る様な目をした金色がぐっと近づいてきて、思わず後ろへ下がる。
とは言っても、抱えられているからそう離れる事はできないけれど。
だって………。
ここ、外だよ?
流石にここで注ぎ込まれると、恥ずかしいじゃん………。
それに。
いつ、ウイントフークがあの扉を「カラン」と開けるか分からないのである。
お父さんに見られるのと同じくらい、気まずい自信があるが、ふと「今更なのか?」と一人首を捻っていた。
きっと、私がピンチの時。
この人は所構わずそうしていただろう、から。
そこまで考えて、再び視線を金の瞳に戻す。
幾分落ち着き、凪いだ様に見える焔の瞳は今日も美しく輝き、私をその中へ誘っている様で。
吸い込まれない様、抗いながらもその小さな揺めきを見て、考えていた。
私
私 たち
この人 この 石?
なんだろうな? さっきの
「絶対 大丈夫」 「この光 」
「これが あれ ば 」
そんな気がした 暗闇の、中。
私と、この金色は。
どこから、どう、繋がって?
繋がって る? の?
「どう、なんだろうな………。」
でも、この人。
石だし。
ただ黙って私のぐるぐるを見守る彼を、首を傾げて見る。
この?
抗えない程、美しい「人ではない」もの、が?
「…………私、の………?」
何なのだろう、な?
わからない。
分からない、けど。
「ま、そのうち。判る、かぁ………。」
なんとなく繋がる「金色の光」、夢なのか妄想なのか想像なのか、頭の中に拡がる景色と感覚の中。
「おんなじ」 「いろ」
「筋」「糸」「光」
「道」 「軌跡」
その中に共通する、その「いろ」が指すもの、とは。
多分、これだよね………?
星を見ていた目線をチラリと金の瞳へ戻すと、珍しく金色も空を見上げて、いた。
「あの歌は、いい。」
「え?」
急にそんな事を言い出した金色。
「あの歌」とは?
何の歌の事だろうか。
「あれだ、あの。お前が「星」の。」
「ああ!あれね。いいでしょう、「私 は 小さな~星 ♪」」
そうして小さく謳い始めた私を、何とも言えない瞳で見る、彼。
ぐっ。
無理。
駄目、もう。
その、瞳の「いろ」を受けて、これ以上の言葉を紡ぐことができなくなった。
「どう、した?」
「 」
なんでもない、と。
言いたかったがその訊き方も、好きな、私。
少し首を傾げる様な仕草が珍しくて、少し可愛いのだ。
この瞳でそれをやられると、たまったもんじゃないのである。
「むぅ。」
そうして、意味の分からない言葉を呟くと再び空を見上げて頬を冷ます事に、した。
ピタピタと頬を叩きながら、その濃い青を見つめ静かになってゆく自分の中を、改めて見つめる。
そうして。
凪いだ「なかみ」を少し眺めると
そっと目を閉じ、また開く。
そうして、再び。
美しい星を見て、口を開くのだ。
この、何処よりも安心する、腕の中で。
「あの時」の様に星空を眺めながらゆっくりとできる時間、瞬く星達は私達の行く末を応援してくれている様に、見える。
ずっと始めから、変わらない、この空気。
何処に、いても。
何時でも。
この金色が側にあって、空で星が瞬くならば。
きっと。
私は
謳わずには
思わずには いられないのだろう と。
思う のだ
そうしてそっと、口を開く。
静かに息を吐き出す様に、「こえ」を
この 空気の中に そっと 吐いて
ジワリ ジワリと。
沁み込ませるのだ。
「 私 は
小さな 星 」
「 みんな で 瞬き 合う 」
「 そう して
瞬きが ふえ 光 会えば
小さな 星の 大きな 空も
ひとつ に な る 」
「そういう歌、なのか。」
私の謳を聴いて、そう呟く金色。
実は歌詞は、始めの言葉が同じだけで。
その時々で、私の気分だ。
でも、返事の代わりに。
その温かい胸に、ポスリと背中を埋め続きを謳い始めた。
いつでも どこ でも。
変わらぬ、この温かさを確かめながら。
ずっと、ずっと、謳って。
いたのだ。
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