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8の扉 デヴァイ
神殿 2
しおりを挟む時間が 経てば
景色は変わる
しかし 変わらぬ青い空
緑の山々 深く 美しい湖
それが あれば。
なんでも 良かった
そうして 日々
祈り 謳い 時には 踊り
美しいもの に
魂を 震わせる
それで いい
それが いい
そんな 日々に
新しい 「いろ」が加わったのは
いつの頃なのか
外 に 人が増え始め
動物より 人間が目立ち始めた
少しずつ 大気の「いろ」が 変わり始め
あまり外へは 行かなくなって 暫く
「違う色」「見たことのない色」を
持ってきた者が いた
この神殿は ずっと ずっと ここに「在る」だけで
なにということは ない
ずっと 在る それだけ
しかしいつの間にか
誰かしらが 供物を 置く様になり
いつの間にか
それが 続くこととなった
昔から 人々は
私を 認識してはいない様だったし
私も 人々を気に留めてはいなかった
ただ いつも いつも
美しい花を供える者の なかみは
その美しい花そのままの 色をしていたし
銀糸の旋律を謳う者の なかみは
そのまま美しい銀が渦巻く様な 色を
していたのは知っている
そんな 程度
そうした ある 時
神殿内に 「違う色」が発生したのを 見に
祭壇前へ向かっていた
誰かが なに か 叫んでいる
初めて見る 「いろ」だ
なんだ ろう
その 初めて見る「いろ」は
とても興味深く 眺めていて飽きることはなかったのだけど
少し すると 神殿内に「いろ」が
拡がってきたのが分かり その
「なかみ」に耳を傾けてみる事にした
その「いろ」は
神殿に加えるには 居心地の悪い 「いろ」だったからだ
「祈っても良くならない!何にも変わらないじゃないか」
ふぅん?
どうやら この者は 神殿へ
祈りを捧げているらしい
供物を持ってくる者が 時折祈るのは見ていた
しかし
なにを 思うでもなく 手を合わせるその姿しか
見たことの無かった私は
初めて
「なにか」を「願う」人を 見たのだ
ふぅん?
面白いな
その 時は
そんな程度だった
その 時は。
しかし それから
「そんな者」は 徐々に増え始め
「心地の悪いいろ」が 増える事となる
人間が 増える
それ は
「個」と「個」が
ぶつかり 混じり 絡まり絡れ
新しい 「いろ」が 生まれるということ
それを。
じっと 見ていた
ずっと
じっと
見て いただけだった
そうして沢山の「いろ」を 覚えた私は
徐々にその「心地の悪い」いろにも 慣れ
「いろ」が 増えることを
楽しく 思っても いた
神殿が 白 ならば
私はどこまでも 謳うことが できるし
心地よくいられる
「外」に どんな「いろ」が
増えようとも
神殿が 保たれていれば。
きっと 大丈夫なのだ
それだけは 分かっていた
心を 震わせ
大気を 走り
その 光が 繋がる
小さな 「ふるえ」が
繋がり 道を 創る
そうして また 光が増え
この 世界が 循環る
その 「繋がり」に
綻びが出始めたのは
やはり 「いろ」が 増えてからだろう
遠くで
小さな 光が 消えたのが分かる
「繋がり」が 一つ減る
そうして また ひとつ
徐々に 消えてゆく 光を
ただ
感じることしか できない
どう して。
消えるのだろうか
消えたのだろうか
私もまたいつか。
消えるのだろうか
いや
消えるのだろう
このまま いけば。
それを 嘆くつもりはない
だが
もう 美しい色を 映せなくなるのは
少し
少し。
「淋しい」だろうか
だが それも また。
「流れ」なのだろう
そう 私 私たちは
きっと
ただ この世界を
揺蕩い 流れ
揺れ 謳い 受け取り 溢す
それだけ の もの
ただ それだけ だから。
なにが あろう と
ただ そうする だけ
そう 思って いた
そんな ある 日
そんな 心を「震わせる」ことは あっても
心を 「捉えられる」ことは無かった 私を
「捉えた」ものが あった
これまでには 見たことが無かった
来たことが無かった
新しい 「いろ」「ひかり」
ひと は みんな「いろ」だけれど
きっとそれは そう 「ひかり」でもあって
なにか そう 特別な 「ひかり」だった
ただただ 強く光る それ は
何を供えるでも
何を祈るでも 願うでもなく
ただ
祭壇の前に立ち
ただ
私の方向を見つめて。
立っていた
見えるのだろうか こちらが。
大概 空を見て 祈るか
ただ手を合わせ 立ち去る人が多い
そんな 祭壇前で
真っ直ぐに 私 を 見ている様な瞳
その ただ 在る 強い光に惹かれ
しばし 動けなかった
美しく 強く そして その
「存在」自体 が 強い 光
ああ 新しい光が 生まれたんだな
そう思うことが 精一杯で
その 強い輝きに 圧倒されてしまった
これまでには 感じたことの ない
光だったから
しかし 新しい光が生まれたことは 単純に嬉しかった
「心地良くない光」が増えることは あっても
新しく 「純粋な光」が 増えることは無かったから
ああ 良かった
これで
そう
思ったんだ
その
金色の 光 を 見て。
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