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8の扉 デヴァイ
解放
しおりを挟むある日の青い、空の下。
あの人の友達に呼び出されて、丘の下で待っていた。
何か、相談でもあるのだろうか。
何故だか昔から、村の人達は私に相談事を持って来てくれる。
私は、「うんうん」と頷いて。
話を聞く、だけなのだけど。
そう思って見えてきた彼に手を振ったら、駆け出してきた彼に抱き締められてしまった。
「え?えっ?」
「いや、だってセレネは。俺の事も、好きだろう?」
えっ?
いつ?
そんな事、言った?
頭の中は混乱していたが、嫌悪感が勝って懸命に腕を振り解き少し距離を取った。
向かいには、貼り付けた様な、笑顔。
いつもと違う、笑顔だ。
この人は 始めから
私を 諦める気は無い
まさか この場で?
一瞬にして過ぎる、悪寒と周囲が暗くなる様な感覚、別世界に来た様な。
この、感覚。
知ってる。
何故か、そう思った。
誰にも害された事は、無い。
今まで。
この、村では。
この、生では………
この 生 では ???
「ごめんなさい」
とりあえずそれだけ叫んで、走った。
この場から逃げなければならない事だけは、分かっていて。
頭の中の混乱、いつもと違う彼、いい友達だと思っていたのは。
私だけ、だったのだろうか。
あの人とも、仲の良い、人。
それすらも?
棄てて?
私?
私が?
え なんだ ろうか
この 既視感
でも。
この 想いに 記憶?に
こびりついた 「信念」の ようなものに
私は 縛られたく ない
「信じてもらいたい」
「奉仕」 「当たり前」
「証明すること」 「示す こと」
これまで当然の様に自分もやってきた、
「筋を通す」様な、当たり前のこと。
でも。
これは、違う。
違う なにが
どこが 違うのか
同じ では? 証明しなくても?
いいの?
本当に いいの?
「駄目。できない。」
いつの間にか丘のてっぺんに座り込んで、いた。
辺りは一面、いつもとからわぬ緑と青と、美しい私の景色。
全てを受け入れてくれる、その色と景色に少しずつ気持ちが落ち着いて、くる。
なんで。
どうして。
でも。
「私」は。
「応えたい」し、拭えない「そうすべき」という気持ち、しかし抗いたい「私のなかみ」。
どっちだ?
どっちが 正しい?
いや 正しい 方が 正解?
え 正解とか
正しい とか
待って
それ は。
「私」なのか
「誰」の 正しさ 正解 なのか
ずっと
座っていた
暫く。
少し、空の色が染まって、くるまで。
その時。
物凄く鮮やかな鳥が、頭上を過ぎて行った。
キラリ キラリと
羽を 煌めかせながら。
「綺麗。美しいな。」
「「私」も。美しく、在りたい、な。」
そう 口に出して 初めて。
気が 付いたんだ。
やっぱり、無理だ。
嫌だもん。
穢れる、とかじゃないけれど。
それは、違う。
あの彼が大事じゃない、訳でもない。
でも。
何より、「大切にしなければならないもの」が。
解ったんだ。
やっと。
ずっと、ずっと、間違ってたんだ。
私。
いや、間違いとも、言いたくない。
だって、やってみなきゃ分からないから。
ちゃんと、頑張ったんだ。
いつでも。
どこ、でも。
だから、この決断が、できるんだ。
やっと、気が付いた。
そうだったんだ。
それなら、これで?
終わらせる、ことができる?
どうだろうか。
でも。
まずは、一歩、だ。
家に帰れば大丈夫。
明日は何か、言われるかも知れない。
けれど。
「私」は「私」を大切にして。
護り、繋いで行く必要が、ある。
なんとなく、だけど。
それは、解るから。
顔を上げ、赤く染まり始めた青を取り込む。
めいいっぱい。
明日からまた、笑える様に。
私の笑顔を、待っててくれる、人がいるから。
それを、信じて。
立ち上がるんだ。
何度、でも。
そうしてまた、暫く。
充分、美しい色を取り込んだ、私は。
しっかりと立ち上がり、丘を降り始めた。
明日からまた、全開の笑顔で。
微笑む 為に。
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