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8の扉 デヴァイ

目醒め

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あったかい

ここは?

ああ、きっと金色の腕の中だ

あの 安心の。

私の、空間。


うん?
いつの間に?

…………まぁいいかぁ。

あったかいし きっとまだ夜だ。

このままぬくぬく。
していよう。
うん。





うん?
えっ?

あれ………??

そういや?
私、時の鉱山に行かなかったっけ?

それで?
何故、何が、起こってこうなって………???


あの時、確か。

確か「何か」を聞いてからの記憶が、無い。

「えっ。…………なん、だっけ………?」

とても、大事なことだった様な気は、するんだけど…………。


すると、私を抱える金色が気が付いて、ゆっくりと胸元から取り出される。


 その瞬間、自分の真ん中がブルリと震えた。


見た事もない「いろ」に輝いたその人は、私の事を舐める様に検分しているけれど。


なんだ。

これは。

えっ。

光って、る?
色が、違くない???


明らかにこれまでとは違う色を纏った金色、私に対する圧が増している彼の存在に言葉が出ない。

つい先日、感じた圧とも違う、その、色。

少し青みががった様な色に見える金色は、変わらず私の事をまだチェックしているけれど。


えっ。何、これ。

私だけ?
私が、おかしいの??


しかしその青い金色を見ているで、自分の中が満ちてきて、「なにか」が漏れ始めたのが分かる。

私の中が金と青のキラキラで充満して、勝手に溢れてゆくのだ。


言葉も出ずにそのまま彼を見つめていると、チェックが終わったのか「パチン」と、その目が、合う。


「っ」


「ブワリ」と、より一層勢い良く溢れたは、とうとう実体を伴い出しキラキラの金平糖が私の周りを埋め尽くし始めた。

そう、あの図書館で出したキラキラの金平糖だ。
ただ、色は金と青の光だけれど。


「どう、した?」


 「カチン」

再び嵌った「なにか」、を聞いて私の中が「これだ」と言っているのが、わかる。

ただ、その所為で漏れ出すキラキラの量が更に増え始め、辺りが騒がしくなってきた。


「喜ばしいこと。」

「大丈夫ですか?」「ヨル」
「うっわあ、これだけあればお腹いっぱい!」

「これは素晴らしいですね。」

何やら色々私の周りで騒めき出したのは、スピリット達だ。

どうやらこのキラキラに引き寄せられて集まって来たらしいこの子達は、ほぼこのウエッジウッドブルーの部屋に集合している。

ハクロにマシロ、リトリにイリス。
お気に入り棚の横にちょこんといるのは、ジュガだろう。
キラキラに遮られ、半分透けてはいるものの見え辛いのだ。


天井には色とりどりの鳥達が飛んでいるし、天蓋の柱をリスの様な小動物が走っているのも、見える。

暫くその光景に見惚れていたのだが、流石に気が付いて自分の身体を確かめ始めた。


「う………ん?変わってない、よね?」

チラリと確認した金の、瞳。

それがいけなかった。


「ブワリ」と再び、増殖した私のキラキラはもう部屋を埋め尽くさんばかりに膨らんでいる。

「えっ?えっ??………ど、どうしよう。」

頼みの綱の、金色を見るとこの状態なのである。

私に解決策は全く、思い付かない。


すると、大きな手に目を塞がれ、そのまま金色を流し込まれた。


始めは私のキラキラ優勢だったが、徐々に侵攻する金色の、焔。
私の中を優しく包みながら、金平糖を取り込んで溶かしていくのが分かる。



ああ、大丈夫。

還って、きたんだ。


ジワリ、ジワリと染み込んでいく色、私の中でも「なにか」が繋がって。


「ここだ」「そう」「やっと」


自分の中で解る部分、しかし頭では全く理解していない現状、それももうどうでも良い程の光の渦。

そう、私の頭の中はいつものぐるぐるとは違った光の渦に、支配されて。


再び何も、見えなくなったのだ。







「これまた、派手にやったわね。」

「喜ばしいこと。」
「ふぅん?思ったより、早かったな。」

「………ここには無いかもな。いや、ちょっと待ってろ。」

「こんな時にあの人………まあ、私達にはどうしようもないから勝手にさせときましょうか。」
「大丈夫でしょうか。」

「ああ、大丈夫、大丈夫。あの中に、入れとけば万事解決、するから。シリーはご飯でも作ってて。多分、起きたら五月蝿いからね。」

「分かりました。」

クスクス笑う、シリーの可愛い声が聞こえる。

何か気になる事を言っていた声もあったけど、頭はボーッとして内容は覚えられなかった。

何か、重要なことを、言ってた気が、するんだけど…………?



目が、覚めたのか、なんなのか。

寝ていたのかすらも、分からない。

何処かへ行っていた様な、気はするんだけど。


うーん?


安心するいつもの匂い、できれば目は開けたくない。

朝はなんだか揶揄う様な声を出しているし、本部長の声からして事件の後って感じだし?

疲れている、とも違うんだけど。

うーん、できれば暫くこのままでいたいんだけど。
駄目、かなぁ………。


「依る?」

その、声を聞いた瞬間、身体がビクッとした。

「ああまた」「駄目」「溢れる」
「痺れる」「いっぱいで少し苦しい」

そんな思いが、瞬時に私の頭を過り身体を硬くさせたが、構えていても変化は無い。

「うん?」

大丈夫、かも?


ゆっくりと目を開け、顔を上げた。


「おは、よう?」

何故だか私を見てパチクリとしている金色。

しかし私はそれに構わずに、自分が金色を見ても大丈夫なのかを確認していた。

また、「あんなこと」になったら耐えられない。
キラキラが溢れ過ぎてこの人に会えないなんて、大事件なのである。


そんな私の心配を他所に、金色は何故か朝を呼んだ。

「朝どの。ちょっと。」

「ええ?どうしたの?」

きっと私達の間に入りたくないであろう、朝は少しだけ嫌そうな声を出しベッドへ飛び乗った。

「これを。」

「…………はぁ。うん、まあ。なんで?」

「分からない。」

「ま、でも。この子だから。」

「そう、であるな。」


何この会話。

金色は私の顔をクイと朝に向け、私は顔を押さえられたまま目だけを二人の間で動かしていた。

しかし二人は、私の顔を見てアレコレ言っているだけで、何も教えてはくれない。


「とりあえず持ってくるわ、待ってて。」

そう言って朝が洗面室から持って来たのはアキだ。

金色が髪を耳の上に寄せ、パチンとアキを留めると「うん」と朝が言う。

「え?何?髪は変わってないよね??」

さっき確認したけれど、髪色はそのままだった。
と、言う事は?

「目よ、目。」

「えっ。まっ金金??」

もしかして、金色とお揃いになってしまったのだろうか。

一人焦る私を呆れた目で見ながら、緑の扉を尻尾で指す。

「それがね。ピンクとか。なんかあんたが好きそうな色が入ってるわよ、それは沢山。見て来たら?でも、大人しくね?」

「えっ、うん!ちょ、待っててね??」

スルリとベッドから下りると、身体に異常が無いのは分かる。

金色に待っていてくれる様に言い、緑の扉へ小走りで向かうと背後から失礼な声が聞こえて来た。


「あの状態で一人にできると思ってるのかしら。」

その、朝の小言の返事を聞く前に。
私はサッと、緑の扉の中へ滑り込んだのだ。
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