透明の「扉」を開けて

美黎

文字の大きさ
上 下
554 / 1,700
8の扉 デヴァイ

目醒め

しおりを挟む

あったかい

ここは?

ああ、きっと金色の腕の中だ

あの 安心の。

私の、空間。


うん?
いつの間に?

…………まぁいいかぁ。

あったかいし きっとまだ夜だ。

このままぬくぬく。
していよう。
うん。





うん?
えっ?

あれ………??

そういや?
私、時の鉱山に行かなかったっけ?

それで?
何故、何が、起こってこうなって………???


あの時、確か。

確か「何か」を聞いてからの記憶が、無い。

「えっ。…………なん、だっけ………?」

とても、大事なことだった様な気は、するんだけど…………。


すると、私を抱える金色が気が付いて、ゆっくりと胸元から取り出される。


 その瞬間、自分の真ん中がブルリと震えた。


見た事もない「いろ」に輝いたその人は、私の事を舐める様に検分しているけれど。


なんだ。

これは。

えっ。

光って、る?
色が、違くない???


明らかにこれまでとは違う色を纏った金色、私に対する圧が増している彼の存在に言葉が出ない。

つい先日、感じた圧とも違う、その、色。

少し青みががった様な色に見える金色は、変わらず私の事をまだチェックしているけれど。


えっ。何、これ。

私だけ?
私が、おかしいの??


しかしその青い金色を見ているで、自分の中が満ちてきて、「なにか」が漏れ始めたのが分かる。

私の中が金と青のキラキラで充満して、勝手に溢れてゆくのだ。


言葉も出ずにそのまま彼を見つめていると、チェックが終わったのか「パチン」と、その目が、合う。


「っ」


「ブワリ」と、より一層勢い良く溢れたは、とうとう実体を伴い出しキラキラの金平糖が私の周りを埋め尽くし始めた。

そう、あの図書館で出したキラキラの金平糖だ。
ただ、色は金と青の光だけれど。


「どう、した?」


 「カチン」

再び嵌った「なにか」、を聞いて私の中が「これだ」と言っているのが、わかる。

ただ、その所為で漏れ出すキラキラの量が更に増え始め、辺りが騒がしくなってきた。


「喜ばしいこと。」

「大丈夫ですか?」「ヨル」
「うっわあ、これだけあればお腹いっぱい!」

「これは素晴らしいですね。」

何やら色々私の周りで騒めき出したのは、スピリット達だ。

どうやらこのキラキラに引き寄せられて集まって来たらしいこの子達は、ほぼこのウエッジウッドブルーの部屋に集合している。

ハクロにマシロ、リトリにイリス。
お気に入り棚の横にちょこんといるのは、ジュガだろう。
キラキラに遮られ、半分透けてはいるものの見え辛いのだ。


天井には色とりどりの鳥達が飛んでいるし、天蓋の柱をリスの様な小動物が走っているのも、見える。

暫くその光景に見惚れていたのだが、流石に気が付いて自分の身体を確かめ始めた。


「う………ん?変わってない、よね?」

チラリと確認した金の、瞳。

それがいけなかった。


「ブワリ」と再び、増殖した私のキラキラはもう部屋を埋め尽くさんばかりに膨らんでいる。

「えっ?えっ??………ど、どうしよう。」

頼みの綱の、金色を見るとこの状態なのである。

私に解決策は全く、思い付かない。


すると、大きな手に目を塞がれ、そのまま金色を流し込まれた。


始めは私のキラキラ優勢だったが、徐々に侵攻する金色の、焔。
私の中を優しく包みながら、金平糖を取り込んで溶かしていくのが分かる。



ああ、大丈夫。

還って、きたんだ。


ジワリ、ジワリと染み込んでいく色、私の中でも「なにか」が繋がって。


「ここだ」「そう」「やっと」


自分の中で解る部分、しかし頭では全く理解していない現状、それももうどうでも良い程の光の渦。

そう、私の頭の中はいつものぐるぐるとは違った光の渦に、支配されて。


再び何も、見えなくなったのだ。







「これまた、派手にやったわね。」

「喜ばしいこと。」
「ふぅん?思ったより、早かったな。」

「………ここには無いかもな。いや、ちょっと待ってろ。」

「こんな時にあの人………まあ、私達にはどうしようもないから勝手にさせときましょうか。」
「大丈夫でしょうか。」

「ああ、大丈夫、大丈夫。あの中に、入れとけば万事解決、するから。シリーはご飯でも作ってて。多分、起きたら五月蝿いからね。」

「分かりました。」

クスクス笑う、シリーの可愛い声が聞こえる。

何か気になる事を言っていた声もあったけど、頭はボーッとして内容は覚えられなかった。

何か、重要なことを、言ってた気が、するんだけど…………?



目が、覚めたのか、なんなのか。

寝ていたのかすらも、分からない。

何処かへ行っていた様な、気はするんだけど。


うーん?


安心するいつもの匂い、できれば目は開けたくない。

朝はなんだか揶揄う様な声を出しているし、本部長の声からして事件の後って感じだし?

疲れている、とも違うんだけど。

うーん、できれば暫くこのままでいたいんだけど。
駄目、かなぁ………。


「依る?」

その、声を聞いた瞬間、身体がビクッとした。

「ああまた」「駄目」「溢れる」
「痺れる」「いっぱいで少し苦しい」

そんな思いが、瞬時に私の頭を過り身体を硬くさせたが、構えていても変化は無い。

「うん?」

大丈夫、かも?


ゆっくりと目を開け、顔を上げた。


「おは、よう?」

何故だか私を見てパチクリとしている金色。

しかし私はそれに構わずに、自分が金色を見ても大丈夫なのかを確認していた。

また、「あんなこと」になったら耐えられない。
キラキラが溢れ過ぎてこの人に会えないなんて、大事件なのである。


そんな私の心配を他所に、金色は何故か朝を呼んだ。

「朝どの。ちょっと。」

「ええ?どうしたの?」

きっと私達の間に入りたくないであろう、朝は少しだけ嫌そうな声を出しベッドへ飛び乗った。

「これを。」

「…………はぁ。うん、まあ。なんで?」

「分からない。」

「ま、でも。この子だから。」

「そう、であるな。」


何この会話。

金色は私の顔をクイと朝に向け、私は顔を押さえられたまま目だけを二人の間で動かしていた。

しかし二人は、私の顔を見てアレコレ言っているだけで、何も教えてはくれない。


「とりあえず持ってくるわ、待ってて。」

そう言って朝が洗面室から持って来たのはアキだ。

金色が髪を耳の上に寄せ、パチンとアキを留めると「うん」と朝が言う。

「え?何?髪は変わってないよね??」

さっき確認したけれど、髪色はそのままだった。
と、言う事は?

「目よ、目。」

「えっ。まっ金金??」

もしかして、金色とお揃いになってしまったのだろうか。

一人焦る私を呆れた目で見ながら、緑の扉を尻尾で指す。

「それがね。ピンクとか。なんかあんたが好きそうな色が入ってるわよ、それは沢山。見て来たら?でも、大人しくね?」

「えっ、うん!ちょ、待っててね??」

スルリとベッドから下りると、身体に異常が無いのは分かる。

金色に待っていてくれる様に言い、緑の扉へ小走りで向かうと背後から失礼な声が聞こえて来た。


「あの状態で一人にできると思ってるのかしら。」

その、朝の小言の返事を聞く前に。
私はサッと、緑の扉の中へ滑り込んだのだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

皇帝はダメホストだった?!物の怪を巡る世界救済劇

ならる
ライト文芸
〇帝都最大の歓楽街に出没する、新皇帝そっくりの男――問い詰めると、その正体はかつて売上最低のダメホストだった。  山奥の里で育った羽漣。彼女の里は女しかおらず、羽漣が13歳になったある日、物の怪が湧き出る鬼門、そして世界の真実を聞かされることになる。一方、雷を操る異能の一族、雷光神社に生まれながらも、ある事件から家を飛び出した昴也。だが、新皇帝の背後に潜む陰謀と、それを追う少年との出会いが、彼を国家を揺るがす戦いへと引き込む――。  中世までは歴史が同じだったけれど、それ以降は武士と異能使いが共存する世界となって歴史がずれてしまい、物の怪がはびこるようになった日本、倭国での冒険譚。 ◯本小説は、部分的にOpen AI社によるツールであるChat GPTを使用して作成されています。 本小説は、OpenAI社による利用規約に遵守して作成されており、当該規約への違反行為はありません。 https://openai.com/ja-JP/policies/terms-of-use/ ◯本小説はカクヨムにも掲載予定ですが、主戦場はアルファポリスです。皆さんの応援が励みになります!

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

THE LAST WOLF

凪子
ライト文芸
勝者は賞金五億円、敗者には死。このゲームを勝ち抜くことはできるのか?! バニシングナイトとは、年に一度、治外法権(ちがいほうけん)の無人島で開催される、命を賭けた人狼ゲームの名称である。 勝者には五億円の賞金が与えられ、敗者には問答無用の死が待っている。 このゲームに抽選で選ばれたプレーヤーは十二人。 彼らは村人・人狼・狂人・占い師・霊媒師・騎士という役職を与えられ、村人側あるいは人狼側となってゲームに参加する。 人狼三名を全て処刑すれば村人の勝利、村人と人狼の数が同数になれば人狼の勝利である。 高校三年生の小鳥遊歩(たかなし・あゆむ)は、バニシングナイトに当選する。 こうして、平和な日常は突然終わりを告げ、命を賭けた人狼ゲームの幕が上がる!

罰ゲームから始まる恋

アマチュア作家
ライト文芸
ある日俺は放課後の教室に呼び出された。そこで瑠璃に告白されカップルになる。 しかしその告白には秘密があって罰ゲームだったのだ。 それ知った俺は別れようとするも今までの思い出が頭を駆け巡るように浮かび、俺は瑠璃を好きになってしまたことに気づく そして俺は罰ゲームの期間内に惚れさせると決意する 罰ゲームで告られた男が罰ゲームで告白した女子を惚れさせるまでのラブコメディである。 ドリーム大賞12位になりました。 皆さんのおかげですありがとうございます

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...