透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

繋がり

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なんだか問題は増えた様な、気もするんだけど。


何故だか私の心は、スッキリとしていた。

いや、を注ぎ込まれたからでは、ない。
多分。

いや、ちょっとはあるかもだけど。


でも、きっと。

「問題が大き過ぎると、もうどうでも良くなるって言うか、なんて言うか…………。」


一旦起き上がった身体をドサリとベッドに横たえ、ゴロゴロと転がるのだ。

そう、気の済むまで。


「喜ばしいこと。」

「あっ、おはよう。」

優しい緑の瞳を四つ、確認すると身体を起こして柔らかい毛並みを撫でる。

「うーん、癒される。」


昨日、沢山の美しい焔を取り込んで眠りこけた所までは覚えているけれど。

起きたら、金色は既に不在であった。
呼び出したのも急だったから、きっと夜のうちに帰ったのかも知れない。

一抹の寂しさは感じたものの、私の中には「喜ばしい」アレが沢山詰まっている。

「やっぱり。かなぁ………。」

再びドサリとベッドに寝転ぶと、星図になっている天井を眺め始めた。


結局。

問題は何一つとして解決していなし、どれもこれも、簡単にすっきりできる、話でもない。

先日ベイルートと朝とも、話した。
そのどれもが一筋縄ではいかないものばかりだ。

つらつらと金色の房を数えながら、溜息を吐いた。


「………まあ。なるように、なるって事か………。」

結局、私の頭の中なんて、そんな物なのである。

うむ。

ただ、大事な事だけを分かっていれば、いい。

まあ、それ以外できない、とも言うけど。


「私は。扉を巡って、姫様を探しているし「みんな」を。在るべきところへ、還す、だけ。」


確かめる様に口に出して、頷いた。

「うん。えっ。あ?あれ??」

すると頭上に描かれた星図がキラリと光り、点滅し始めたのが見える。

チカチカと光る、小さく煌びやかな光は私に「なにか」を齎してそして「今」するべき事が、分かった。

「えっ。なんで?でも。………とりあえず、行くか…。」

何が起こったのか、頭では理解していない。
しかし、私が「今」あの扉へ行かなければならない事だけは、解る。


手早く着替えを済ませ、青の鏡にチェックを貰うとすぐに向かう事にした。

「ごめん、一応ついて来てもらってもいい?」

「勿論。」

そうしてフワフワを一匹、伴うとウェッジウッドブルーの部屋を出て、青のホールを目指したのだ。






「開け、ごま。」

誰も居ないホールを横切り、花達に挨拶をするとすぐに扉を開けた。

スルリと滑り込んだ先は、勿論あの岩肌の暗い場所。
時の鉱山である。

何故だかあの天蓋のサインが「ここへ行く印」だと感じた私は、必要があると思ってここへ来た。

多分だけど。

あの部屋はあの「青い女の子」の部屋だった筈だ。
あの子もこうして、あのサインによってここへ呼ばれて来ていたに違いない、と私の「真ん中」は言っているのだ。


「さぁて。何が、あるのか。」

「ゆっくりね。」

「うん。」

薄暗い中で少し発光する白いフワフワと、私を気遣う下の子の声。

その背中にいつもの様にフワリと手を乗せると、ゆっくりと足元を確かめながら、進んで行った。

そう、いつだって。

行き先は、この靴がからだ。




多分、大分進んだと、思うんだけど………。

特に何も起こらないし、誰も、居ない。

いやまさか、ここまで来て何も無いとか、無いよね………?

そう、思い始めた時に人の気配がした。
いや、声だ。

立ち止まり耳を澄ますと、少し遠くから聴こえる女の人の声。

じっとその内容を聞いていると、どうやら独り言の様である。


「…………かしら。ここはこのくらいね。後はあの子の分も見つけやすい場所がいいかしら………。」

その、内容を聞いてピンと来た。
多分、この人は石を埋めている筈だ。


あの時もここで、セフィラは石を埋めていた筈だ。
でも、腕輪をしてここへ来たのは、一度だけだって………。

うん?
そもそもこの人がセフィラかどうか、分かんないな?


そのままじっと気配を探っていると、少しずつ動きながらも独り言を言い、石を埋めていっているのが分かる。

「よし、これでいいわ。」

「おーい、セレネ!」

「、っはぁい。ここよ。」


 「ドクン」  と心臓が跳ねた。

その、「名」と男の声、返事をした女性の声が、はっきりと聞こえた、瞬間。


 自分の真ん中が、ブルリと震えて。


私の中の「なにか」が合わさり、プツリと意識が、途切れた。






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