透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

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どうしようもない、思いは。

飛ばせば、いい。

それに気が付いてから、私の心はぐるぐるする時間が短くなってきていた。


グロッシュラーから連れてきた蝶達は、「私の想い」では、ない。

しかし、それも。

茶色が生成りになる頃には、私の中へ溶け込む事ができるようになっていた。

濃い色の時はまだ、私の中に居ても「中にいるだけ」で、影響はないのだが溶け込みもしない。
だが、色が薄くなり私の虹色と馴染む様になると溶け込んで、その一部に。
なる事が、分かってきたのだ。


「みんな元気だね~。」

白い礼拝室で、色とりどりの蝶が舞う様子を眺めながら、一人ボーッとしていた。

まだ、あの事がやや尾を引いているのは間違いない。

けれども、朝や石達が心配する程私の状態は悪くなかった。
寧ろ「意外と大丈夫そうね?あいつ、注ぎ込み過ぎたんじゃないの?」と、朝に金色が疑われていたくらいだ。


以前は礼拝室で歌ったり、踊ったり、何かを発散して蝶を飛ばさないといけなかったが最近慣れてきていた私は「思えば」飛ばせる様になっていた。

これが意外と便利で、いちいち礼拝室へ行かなくともあの時の様に「どうしようもなくなったら」飛ばせる、というのは大きい。

「便利」と言うのは、違うかもしれないけど。

兎に角気持ちで左右されがちの私にとっては、救世主的な方法なのである。


「それに見た目も。可愛いし、綺麗だしね?一石、二鳥?」

様々な色、濃淡がある蝶達は私の中にある時は特に何かを感じる訳ではないが、飛ばすとスッキリするのだ。

そうしているうちに、徐々に色が薄く、美しくなってきて。

頃合いが来ると、私の中に、還る。


だから。

この方法が気に入っていた。

結局最後に私の中に、還るならば。

どの、気持ちも、想いも。

置いて行くことには、ならないからだ。


「結局、何処に。行くんだろうね………。」


 在るべき場所

 還る場所


そう、約束した。

未だ、その影は見えないけれど。


「でもまだ。途中だ。」

そう、私達の旅は。

終わりに、近づいてはいるけれどまだ終わりじゃ、ない。

色んなことが。まだ。

セフィラのことも、この世界の力の源の、ことも。


「っしゃ!ご飯食べよ!」

ぐるぐるが始まりそうになって、丁度お腹が鳴った。

手を広げ伸ばし、蝶達を集める。

「綺麗ね。」

そうして残らず、また私の中に収めると。

白い、光の中を振り返らずに歩いて行った。




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