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8の扉 デヴァイ
石たちの、ミッション 再々
しおりを挟む「いや駄目よ」
「でも」
「この場合は、仕方ないでしょうね」
「流石に過去を変え過ぎてはならないわ」
「この変化は大き過ぎる」
「依るの気持ちは解るけどね」
「こればっかりは。ちょっと、厳しいよ」
「でも。クルシファーが止めたのは意外だったわ」
「それはありますな」
「ね」
「僕だって………解ってるんだ。」
「そうよね。人には人の。理が、ある」
「賢明だわ」
フォーレストがあの子を背負って、帰って来てから。
石達は何か相談をしている様だったけど、勿論その内容は私に丸聞こえだったの。
まあ、隠す気は無いんだろうけど。
それにしても。
訊いても、いいものかしら………。
午後になって、お昼になっても食堂にやって来ない依るを探しに魔女部屋へ行ってみた。
でも、あの子は居なくて。
「どこ行っちゃったのかしら。」
そう言いつつホールをウロウロして、青の通路を見ていたら、あの扉から。
帰って来たのはフォーレストと、依るだった。
「部屋まで運ぶ。」
「大丈夫だよ。」
上の頭と下の頭、それぞれがそう話してとりあえず部屋までついて行ったんだけど。
「多分、寝てるだけだと思うのですが。後で、ウイントフークさんに来てもらいましょうか?」
「あ、それはいいわ。」
途中でシリーを呼び、着替えと少し汚れていた手足を拭いて貰った。
フォーレストの様子から判断して、本当に依るは寝ているだけなんだろう。
シリーを見送ると、とりあえず足元に丸くなる。
起きるまで様子を見ようと思っていたら、なにやら石達の話が突然、始まったのだ。
「ねえ、あなた達。」
「何ですか、朝どの」
「何があったか聞きたいんだけど、話せる事?」
「まあ」「朝ならいいんじゃない」
「話しておいた方がいいわ」
「多分起きたら泣くよ」
なんか、嫌な予感。
まあ、こうしてこの子が寝こけている時点で普通の状態じゃないんだろうけど。
「気焔か千里、呼んだ方がいい?」
「どうだろう」
「千里は知ってるんじゃない?」「そうかも」
「気焔は必要かもね」
「まあ、とりあえず話してよ?」
そう言って石達の話を聞き始めたんだけど。
その、話はやはり中々に重たい話だった。
「………それはこの子、凹むわね…確実に。仕方の無い事とはいえ、納得するのは難しいかも。でも、少しは成長してるだろうから…うーん?」
「でも多分。気持ちの、問題なのよ」
「それはあるわね。割り切れるか、割り切れないか。割り切れない子だから、ここまで来てるってのもあるし。微妙。やっぱり気焔必要かしら………。」
「噂をすれば。お出ましよ」
あら。
物音一つ立てず扉の前に立つ、黄色の石は最近依るが「金色金色」と言うので私にも金色に見えてきた。
「丁度良かった。聞こえたの?」
「ああ。あれだけ騒げば、気が付く。」
それなら任せた方がいいかもね………。
石達は既に大人しくなっていて、気焔はベッドへ腰掛けた。
私は代わりにベッドを抜け出し、猫用扉へ向かう。
一応。
一言、言っといた方がいいかしら………。
まあ、いつもの事なんだろうけど。
「あのさ。」
返事をせずに、顔だけ向けた気焔。
見た目は、殆ど初めから変わっていないけれど幾らか大人っぽくなったと思うのは私の贔屓目だろうか。
最初は、おっさん言葉の快活な少年だったけど。
今は、きちんと青年に見えるのだ。
だから、心配でもあるんだけどね………。
「程々に、しなさいよ?この前、光り過ぎて焦ってたから。まあ、暫く外出の予定も無いから別にいいっちゃ、いいんだけどね………。」
「分かった。」
ホントかしら…。
既に視線は依るに注がれていて、私の話なんてきっと聞いてるだけなんだろう。
まあ、いいけど。
一応、私は言った。
任務は果たしたわよ?
そうして扉を潜る前、もう一度振り返ると。
寝ている依るに顔を寄せる、金髪が見えた。
全っ然、聞いてないわね………。
ま、放っときましょ。
そうして斜め向かいの、書斎へ入って行った。
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