透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

私のモヤモヤ

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そのままいつもの様に、金髪を撫でて、いた。


この部屋、窓が無いから金髪が透けないな………?

グロッシュラーの部屋を思って、既に懐かしく感じてしまう。

あの、夜の暗くはない絶妙な雲からの明かりで。
照らされる、この金髪はとてつもなく綺麗だったから。


ウイントフークに言えばまじないの窓を作ってくれるだろうか。

うん?
でもお風呂には。

大きな、窓があったよね??

もしかしたら、やっぱり「想えば」。

「創れちゃうの、かなぁ…。」

でも、「実際」の外が。
なっているのか、確かめてから創りたいかも?


それが例え、闇夜に小さな星しか無い、暗い空であっても。

実際の「空」、「自然」、「宇宙」に敵うものなど。
存在、しないのだと。

やはり、思うからだ。



さあて。

どこから、切り崩そうか。

金髪をわしゃわしゃと撫でながら、そう考え始めた。



でも。

私は。

気焔を、問い詰めたい訳では、ない。


いつだって、「彼が言わないこと」それには私を思う、理由があって。

でも………。

いくら、千里が狐だと言っても。

別の人と、寝るんですけど??
いいの?
それ?

私、逆だったらめっちゃ、嫌なんですけど………。


そう、それが腑に落ちない一番の理由だ。

多分、自分がずっと、一緒にはいられないから。
あの子(いや、大分大人だったけど)に、頼んだ、そう思ったんだけど。


隣に座って、くるりと顔をこっちに向ける。

いつもの、金の瞳は。

静かだ。

しかし、気味が悪い程。

凪いでいる、その焔を見て逆に私が不安になる。

「………いいの…?」

口を突いて出る、言葉。

こんなこと、言いたくない。
ヤキモチ、焼いて欲しい訳じゃないし。

いや、焼いて欲しいのか?
うん?
でも、だって。

いやいや、だってが出てきたよ………まずいな。


自分の中で、沢山の感情がぐるぐると渦巻いて。

綺麗じゃない、複雑な、が。

嫌だと、思うけど。
失くしたい、訳じゃ、なくて。

なんだろうな………。


そう、あの子たち。

あの、蝶みたいに、飛ばせば。
いいかな………。

そう、「どうしようもないけど、置いていけないもの」は。

美しく、飛ばせば、いい。

祈れば。

そうか。


祈れば、いいんだ………。



あの、新しく創った、何者をも浄化し変化させてくれそうな、あの白い空間で。

祈れば、きっと。


私の想いを、あの空間に巡らせる。

そう、自分の中から抜け出して、ふわりふわりと足取りも軽くあの部屋へ滑ってゆく様に。

そうしてじっと、目を、閉じていた。


自分の中から、フワリと蝶が出て行くのが、判る。

一匹、また一匹と、飛び立つ度に。

心が、軽くなるのが分かる。

だからそれが、「正解」なのが分かって。

やはり、「想えば」、「祈れば」。

がカタチになって、嫌なものではなく、美しいものにも変化して、が、できて。

「想う」という事が、悪いものではない事が分かる。

それが、どんな感情だとしても。


私達は、「人」というもので「想う」生きもので。

それ故に、美しいということ。


きっと、生まれた時はみんな美しくて、途中道を外れ、暗い色を纏ったとしても。

最後には、きちんと。

美しく、なれるということ。

戻りたいとさえ、「想えば」。

いつでも、美しく、なれるということ。



「だって、「人」から「想う」ことを失くしてしまったら。つまらない、よね?」

一人辿り着いた答えを、ポツリと口に出す。

「何を言っているのだ」という顔を抱き締めて。

そうして思いの外自分がスッキリしている事を、知る。

「あれ?私、もしかして。自分で、消化しちゃった??」

いつもならば。

グダグダとこの腕の中でクダを巻いて、散々愚痴って、チカラを注がれて。

元気になる、パターン。
だよね?


抱えていた金髪を離すと、確かめる様に覗き込んだ。


うっ………。


しかし、金色の、方は。

消化できて、いなかった様だ。


まあ………蝶、出せないしね?


トンチンカンな事を思いながら、心地良さに身を委ねる。

こうして注がれていると、自分の中の金色がかなり減っていたのも、分かって。

うーん、充電。
補給?


心地良い、その流れを感じながら身を任せて、いた。



うん。

撫でられてる、けど。

あちこち。

なんで?

チカラを注がれながらも、私の身体を這う、心地の良い腕。

少しくすぐったいけど?
どうしたの………?

そう、思っていると返事が、来た。

「………何処を?」

ああ、千里ね………。

一緒に寝るのは止めてって、言っておいた方がいいだろうな?

狐なら、いいけど。
なんか、フワフワだし。
朝と一緒に、足元で寝てくれれば。

あれ?
そういや朝、何処で寝たんだろ………?


次第に強くなる腕からのゾクゾクに、耐えられなくなって慌てて、返事をした。

「大丈夫、抱き締められてただけ、だよ。………あの人、揶揄ってただけ、でしょう?」

そう、私が言うと。

手の、動きが止まりギュッと抱き締められた。



あぁ、落ち着く………。

やっぱり、ここが一番いいな………。

寝る時だけ、来れないの?
うん?
無理?
そう、なんだ………。

じゃあ我慢する。


なんとなく伝わってくる、焔の色に返事をして。

そのまま、暫く微睡んで、いた。



「やっぱりね。」

そう、いつものツッコミが、来る迄は。

「…………ん?」

「もう、朝よ。お風呂入るんじゃないの?今日も仕事が溜まってるわよ?」

「あ、そうか。………ん?お風呂?」

そうだ!

ガバッと起き上がった私に些か飛ばされ気味の気焔、白い目をしている朝。

生成りの絨毯の上に、ちょこんと座って。

いつもの様に、呆れた顔でこちらを見ている。

「………ま、じゃあ。仕方無いものね。起きたなら、早くなさい。朝食もあるのよ?」

「そっか……。待たせちゃうもんね?じゃあ………。」

くるりと振り向くと、頷いて仕方の無い目をした気焔。

「あ、でもご飯は一緒に。食べよう?」

「まあ。ウイントフークに話も、あるしな。」

そう言って、ぐっと抱き寄せられた、私。

「えっ??え?」

何故だか、首筋を嗅がれて。

何かを、確認され解放された。


うん………?
なに?
ドキドキするから、止めて欲しいんですけど??


そうして暫く、閉じられた扉を見ながら。

誰もいなくなった部屋で佇んで、いたのだ。


いかん。
お風呂に、入らなければ。



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