380 / 1,684
7の扉 グロッシュラー
雨の祭祀 幕引き
しおりを挟む「つーか、やり過ぎだろ。」
「まあ、そうか?」
「しかし、あの子が狙われたからね?ある意味予想通りだったけど、仕方があるまい。しかし、お咎め無しとはあの子が納得、するかどうか。」
「仕方ない。向こうに行ってからだな。ここで揉めても、どうにもなるまいよ。」
「まぁね。なにしろ、死人が出なくて良かったよ。」
「それにしても、あの光の柱………。あれは自在に動かせるものかの?」
「ウェストファリア、その話は後で………。」
「あれは、「あの時」のアレと同じか?」
「そうだろうな?デカさは違ったが、その類のものだろう。しかし、最後の光。あれはな………。」
「そう、それだよ!シュツットガルトから連絡が来たぞ?前代未聞だ。」
「………しかし、面白くなってきたね?」
「ほうほう。」
「面白がっているのは貴方達だけですよ。もう………これから、向こうに行ったら大変じゃないですか。やはり、姫には私のサポートが必須ですね。」
「しかしあれはヨルの仕業とはバレていないだろう?」
「まあ、表向きは、な?しかし。」
「うーむ。」
「そうだな………。」
「しかし、凡そ。人の、仕業とは思えまいて。」
「「それは、ある。」」
そうしていつものメンバーはガヤガヤと勝手な事を言ったり、これからの相談をしていたり、した。
結局、あの後私は走って行ったけど。
レシフェやシュレジエン、レナが子供達を誘導して私はその後の子供達を安心させる役を引き受けた。
みんなはまたあの池の周りに走って行って、後始末をした筈だけど。
正直、あの光の柱の外側は結構、平和だった。
危険があるといけないから、子供達を神殿の階段上まで連れて行って、上から様子を見ていたけれど。
あの、柱は空から地面へ降りているので中が、どうなっているのかは、さっぱり判らなかったのだ。
レシフェ曰く「まじない道具を爆発させた奴を捕まえたけど、その後の光の柱の衝撃で逃げられた」と言っていて。
現行犯じゃなくなった怪しい男達は、柱が消えるとなんて事ない顔をして、光が降りるのを見ていたらしい。
いや、多分顔は充分、驚いていたとは思うんだけどね。
結局向こうから来た男達は、殆どが立場が上の狡猾な奴だった。
レシフェは捕まえた男の顔を覚えていて、光が降った後問い詰めようとしたみたいだけど「証拠でもあるのか」と突っぱねられたらしい。
それを見ていたウェストファリアに止められたレシフェはブツブツ言っていたけれど、ウェストファリアに言わせれば「今はこちらが不利になる」そうで、黙っているしかなかった様だ。
そうしてなにしろ、怪しい動きの男達はお咎め無し、爆発についてはこれから調査、という事になったのだ。
「ヨルは?」
「ああ、預かってもらっている。大丈夫だよ、私の庭の所だから。」
「それならいいか。後始末が終わってからでもいいしな。」
「それに、向こうへ行く準備を進めねばなるまいて。」
その一言で、みんなももうそんなに時間が無いと思っているのが、分かる。
確かに。
依るがここに、もう長くいない方がいいのは分かっていた。
アラルエティーが青の少女をやるならば、尚更だ。
あの子が側にいることで、バレる可能性が高くなるのは、間違いない。
なにしろうっかりなあの子が嘘を突き通せるとは思えないし、ブラッドフォードの事もある。
それに、きっとこの祭祀を壊そうとした犯人を。
依るが、放置するとは思えないからだ。
うーん、嫌な予感。
「しかし、「天啓」とはな。上手い事を言うものだ。」
「お前さんがそう、指示していたのか?」
「いや。あいつはいつも。そうなんだ。」
「だろうね。あの子には、神様でもついているのかな?ハハッ。」
ちょ、「ハハッ」じゃないよ、イストリア………。
ドキドキしながら笑う彼女を見ていたけれど、もうそれを笑う者はいなく、どちらかと言えば納得の表情の者が多い。
ラガシュ、クテシフォン、ブラッドフォード。
ミストラスは流石に事後処理でいないけれど、メンバーは祭祀前と同じだ。
「俺が言ったのは。「好きな色だけ」って事だ。それで、充分だったろう?」
「確かに。」
「間違いないですね。」
「神の一族、と豪語している者たちが。どう出るのか楽しみですよ。」
「いや、一応青の家だって神の一族の中には入っているのだろう?」
笑いながらイストリアが、ラガシュに言う。
「いいえ。僕達は、意識の上では大分前に、降りてますよ。「神とは」。そんなもの、とうの昔にね。」
「しかし、時代は来て神の意志は降りた。いやが応にも変わる事にはなるじゃろうて。」
静かになった部屋。
しかし、ウイントフークが沈黙を破る。
「さ、その話はまた後だ。兎に角安全に事を処理して向こうへ移動する必要がある。アラルエティーがこちらへ残る様には、できるだろうがその辺りの事はお前さんに頼んでいいかな?」
「………ああ、大丈夫だろう。」
少し、考えて返事をしたブラッドフォード。
ウイントフークは「目耳」を飛ばしていたけど。
この人は、「こっちで何があったのか」は今大体の事を聞いただけで、後は物凄い光が降ったのは、見た筈だ。
多分祈りの途中で依るが消えて、その後光が降ったという認識だと、思うんだけど。
チラリとウイントフーク達を、見る。
もう、あっちは別の話をしていたので、片隅にいる彼に少し訊いてみる事にした。
婚約者のフリをする、彼が。
「あの光」の原因、依るをどう思ったのか。
それは、結構気になる、内容だ。
それに「あの声」は。
向こうまで、聞こえたのだろうか。
「祈りを。想いを。忘れた者たちよ。」
「お前たちが「神」を名乗るのならば。
それをそのまま返そう。
受け取れ。
これが、「神」の意志だ。」
そう、「神の意志」として依るが降らせた、光は。
青の光の柱を超える、物凄い光で且つ、島の全体を覆うものだった。
青の光の柱は、あの池の周りを囲む位の大きさでそう、広い範囲ではない。
とは言っても、青い稲妻か龍かと見まごう光が天地を行き来する様は充分、神のみ技の様だったけど。
それを上回る、多色の光が島全体に降ったのだからもう、どうしようもない。
いや、どうしようもないっていうのも、おかしいんだけど。
その、依るが「天啓」として降らせた多色の光は。
ウイントフーク曰く「好きな色だけ」という、依るのほぼ無意識の選択によるものだ。
しかし何色が降って何色が降らなかったのかなんて、分かりようがない程のど偉い事態だったから、結果は始め判らなかった。
だけど事態を収拾するに当たって、人々が上げていた歓声が聴こえない一群が、あった。
色々あったものの、最後に以前よりも多くの光が降ってみんなは歓声を上げ喜んでいた。
特に前回の祭祀参加者は、慣れたもので受け取った力を確認したり、話し合ったりして賑やかだったのだ。
ネイアや客人達は、割と静かに喜んでいたけれどやはり光が受け取れなかった人は。
明確に、判ったのだ。
ヒソヒソと話す一団、手のひらを見たり目を瞑り自分の中を確認する者。
そう、変化が無かったのだ。
実際、依るがどうやって判別したのか。
全くもって判らなかった私達は、戸惑ったけれど。
何故だか上手い具合に、怪し気な一団にだけ光が降らなかったらしいのだ。
とりあえずそれは帰ってから聞こう、という事になり後回しにはなっている。
そうして明確に分かれた、光。
その光が降らなかった一団には、銀ローブ、黄、茶、白、赤と、「青以外」のほぼ全ての色が含まれていたらしい。
私達には、その名や家の中での事は、分からないけど。
この男はきっと、何かしら思う所はあると、思うんだけど?
尻尾を揺らしながら近づくと、チラリと私に目を向けた青い瞳。
「確かに、似てるわね。よろしく?お兄さん。」
そう言った私を見て、少し眉間に皺を寄せたけれど。
話す気が無い訳じゃ、ないみたいで目を逸らさずに真っ直ぐ、私を見た。
ふむ。
とりあえずは、合格。
そうして私はブラッドフォードに事情聴取を、始めたのだ。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる