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7の扉 グロッシュラー

雨の祭祀 幕引き

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「つーか、やり過ぎだろ。」

「まあ、そうか?」

「しかし、あの子が狙われたからね?ある意味予想通りだったけど、仕方があるまい。しかし、お咎め無しとはあの子が納得、するかどうか。」

「仕方ない。向こうに行ってからだな。ここで揉めても、どうにもなるまいよ。」

「まぁね。なにしろ、死人が出なくて良かったよ。」

「それにしても、あの光の柱………。あれは自在に動かせるものかの?」

「ウェストファリア、その話は後で………。」

「あれは、「あの時」のアレと同じか?」

「そうだろうな?デカさは違ったが、その類のものだろう。しかし、最後の光。あれはな………。」

「そう、それだよ!シュツットガルトから連絡が来たぞ?前代未聞だ。」

「………しかし、面白くなってきたね?」

「ほうほう。」

「面白がっているのは貴方達だけですよ。もう………これから、向こうに行ったら大変じゃないですか。やはり、姫には私のサポートが必須ですね。」

「しかしあれはヨルの仕業とはバレていないだろう?」

「まあ、表向きは、な?しかし。」

「うーむ。」
「そうだな………。」

「しかし、凡そ。の、仕業とは思えまいて。」

「「それは、ある。」」



そうしていつものメンバーはガヤガヤと勝手な事を言ったり、これからの相談をしていたり、した。

結局、あの後私は走って行ったけど。

レシフェやシュレジエン、レナが子供達を誘導して私はその後の子供達を安心させる役を引き受けた。

みんなはまたあの池の周りに走って行って、後始末をした筈だけど。


正直、あの光の柱の外側は結構、平和だった。

危険があるといけないから、子供達を神殿の階段上まで連れて行って、上から様子を見ていたけれど。
あの、柱は空から地面へ降りているので中が、どうなっているのかは、さっぱり判らなかったのだ。


レシフェ曰く「まじない道具を爆発させた奴を捕まえたけど、その後の光の柱の衝撃で逃げられた」と言っていて。

現行犯じゃなくなった怪しい男達は、柱が消えるとなんて事ない顔をして、光が降りるのを見ていたらしい。
いや、多分顔は充分、驚いていたとは思うんだけどね。


結局向こうから来た男達は、殆どが立場が上の狡猾な奴だった。
レシフェは捕まえた男の顔を覚えていて、光が降った後問い詰めようとしたみたいだけど「証拠でもあるのか」と突っぱねられたらしい。

それを見ていたウェストファリアに止められたレシフェはブツブツ言っていたけれど、ウェストファリアに言わせれば「今はこちらが不利になる」そうで、黙っているしかなかった様だ。

そうしてなにしろ、怪しい動きの男達はお咎め無し、爆発についてはこれから調査、という事になったのだ。



「ヨルは?」

「ああ、預かってもらっている。大丈夫だよ、私の庭の所だから。」

「それならいいか。後始末が終わってからでもいいしな。」

「それに、向こうへ行く準備を進めねばなるまいて。」

その一言で、みんなももうそんなに時間が無いと思っているのが、分かる。


確かに。

依るがここに、もう長くいない方がいいのは分かっていた。

アラルエティーが青の少女をやるならば、尚更だ。
あの子が側にいることで、バレる可能性が高くなるのは、間違いない。
なにしろうっかりなあの子が嘘を突き通せるとは思えないし、ブラッドフォードの事もある。

それに、きっとこの祭祀を壊そうとした犯人を。

依るが、放置するとは思えないからだ。

うーん、嫌な予感。



「しかし、「天啓」とはな。上手い事を言うものだ。」

「お前さんがそう、指示していたのか?」

「いや。あいつはいつも。なんだ。」

「だろうね。あの子には、神様でもついているのかな?ハハッ。」


ちょ、「ハハッ」じゃないよ、イストリア………。

ドキドキしながら笑う彼女を見ていたけれど、もうそれを笑う者はいなく、どちらかと言えば納得の表情の者が多い。

ラガシュ、クテシフォン、ブラッドフォード。
ミストラスは流石に事後処理でいないけれど、メンバーは祭祀前と同じだ。

「俺が言ったのは。「好きな色だけ」って事だ。で、充分だったろう?」

「確かに。」
「間違いないですね。」

「神の一族、と豪語している者たちが。出るのか楽しみですよ。」

「いや、一応青の家だって神の一族の中には入っているのだろう?」

笑いながらイストリアが、ラガシュに言う。

「いいえ。僕達は、意識の上では大分前に、降りてますよ。「神とは」。そんなもの、とうの昔にね。」

「しかし、時代ときは来て神の意志は降りた。いやが応にも変わる事にはなるじゃろうて。」 


静かになった部屋。

しかし、ウイントフークが沈黙を破る。

「さ、その話はまた後だ。兎に角安全に事を処理して向こうへ移動する必要がある。アラルエティーがこちらへ残る様には、できるだろうがその辺りの事はお前さんに頼んでいいかな?」

「………ああ、大丈夫だろう。」

少し、考えて返事をしたブラッドフォード。

ウイントフークは「目耳」を飛ばしていたけど。

この人は、「こっちで何があったのか」は今大体の事を聞いただけで、後は物凄い光が降ったのは、見た筈だ。
多分祈りの途中で依るが消えて、その後光が降ったという認識だと、思うんだけど。


チラリとウイントフーク達を、見る。

もう、あっちは別の話をしていたので、片隅にいる彼に少し訊いてみる事にした。

婚約者のフリをする、彼が。

「あの光」の原因、依るを思ったのか。

それは、結構気になる、内容だ。


それに「あの声」は。

向こうまで、聞こえたのだろうか。



  「祈りを。想いを。忘れた者たちよ。」


「お前たちが「神」を名乗るのならば。

 をそのまま返そう。

         受け取れ。

    が、「神」の意志だ。」



そう、「神の意志」として依るが降らせた、光は。

青の光の柱を超える、物凄い光で且つ、島の全体を覆うものだった。


青の光の柱は、あの池の周りを囲む位の大きさでそう、広い範囲ではない。
とは言っても、青い稲妻か龍かと見まごう光が天地を行き来するさまは充分、神のみ技の様だったけど。

それを上回る、多色の光が島全体に降ったのだからもう、どうしようもない。
いや、どうしようもないっていうのも、おかしいんだけど。


その、依るが「天啓」として降らせた多色の光は。

ウイントフーク曰く「好きな色だけ」という、依るのほぼ無意識の選択によるものだ。
しかし何色が降って何色が降らなかったのかなんて、分かりようがない程のど偉い事態だったから、結果は始め判らなかった。

だけど事態を収拾するに当たって、人々が上げていた歓声が聴こえない一群が、あった。

色々あったものの、最後に以前よりも多くの光が降ってみんなは歓声を上げ喜んでいた。
特に前回の祭祀参加者は、慣れたもので受け取った力を確認したり、話し合ったりして賑やかだったのだ。

ネイアや客人達は、割と静かに喜んでいたけれどやはり光が受け取れなかった人は。

明確に、判ったのだ。


ヒソヒソと話す一団、手のひらを見たり目を瞑り自分の中を確認する者。

そう、変化が無かったのだ。

実際、依るがどうやって判別したのか。
全くもって判らなかった私達は、戸惑ったけれど。

何故だか上手い具合に、怪し気な一団に光が降らなかったらしいのだ。

とりあえずそれは帰ってから聞こう、という事になり後回しにはなっている。


そうして明確に分かれた、光。

その光が降らなかった一団には、銀ローブ、黄、茶、白、赤と、「青以外」のほぼ全ての色が含まれていたらしい。

私達には、その名や家の中での事は、分からないけど。
この男はきっと、何かしら思う所はあると、思うんだけど?


尻尾を揺らしながら近づくと、チラリと私に目を向けた青い瞳。

「確かに、似てるわね。よろしく?お兄さん。」

そう言った私を見て、少し眉間に皺を寄せたけれど。

話す気が無い訳じゃ、ないみたいで目を逸らさずに真っ直ぐ、私を見た。

ふむ。

とりあえずは、合格。


そうして私はブラッドフォードに事情聴取を、始めたのだ。
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