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7の扉 グロッシュラー
魅力の、色
しおりを挟むいつものメンバーが集まり出した午後。
しかし今日は新しい面子が一人、増えている。
あの、あいつだ。
ヨルの婚約者役をするブラッドフォード。
何故だか今日はこいつも呼びつけたウイントフークは、何の話があるのだろうか。
しかし祭祀で祈る際も、旧い神殿に配置される事は決まっているしこれから向こうに行っても共に行動する事になる筈だ。
まあ、居てもらっても差し支えは無いだろう。
いつもの白い部屋、俺は真ん中の白い本の上で飾りの宝石よろしく体を光らせている。
長椅子にはクテシフォン、イストリア。
一人掛けにブラッドフォードとウェストファリア。
ウェストファリアが始めから座っているのは珍しいが、きっと今日は彼の興味を惹く話題なのかもしれない。
気焔はいつもの位置に立っていて、心なしかブラッドフォードを見ている気がするが、気の所為か。
何かヨルとの間にあったのだろうか。
あいつが興味を持つ理由など、それ以外は思い付かない。
そんな事を考えているうちに、ノックの音がする。
思った通り、入ってきたのはラガシュだった。
「やあすいません。お待たせしました。判りましたよ。」
何故だかホクホクした様子のラガシュはいつもの位置に立つ。
チラリとブラッドフォードに視線を投げ、ウイントフークも確認すると頷いて早速話を始めた。
「あの、館の件ですが。僕が行く訳にもいかないのでミストラスに行ってもらいました。」
何時ぞやの訪問から何故か仲がいいこの二人は、どこか共通点でもあるのだろうか。
ちょこちょこミストラスの部屋に出入りしている事は知っている俺でも、少し驚いた。
しかし流石の本部長は気にしてない様で普通に話を続ける。
「で?貴石はどうだった?」
「ああ、それはね………。」
イストリアが話し始めたが、この二人は一緒に住んでいるんだよな?
どうなっているんだ?
まあ人の家の事だからな………。
「エルバの話だと、まぁ「わからない」って事だった。館に伝手なんて無いだろうしね?多分、レシフェが最初だろう、あの子たちの為に行動を起こしたのは。それ迄はただの………。うん。ただ、エクソリプスはもう、亡くなっているが。その取り巻き達。これは、怪しいと言っていた。貴石へ直接来た訳ではないらしいがもしエクソリプスが何か遺していたら。知っている可能性はゼロではないだろう。」
「なにしろエルバの話だと。その、ディディエライトが消えた時の男がエクソリプスだ。」
シン、とした空気。
半分解っていない俺始め、クテシフォンとブラッドフォード。
しかしまだ質問のできる雰囲気では無い。
その「エクソリプス」がアリススプリングスの家の者だという事だけは、辛うじて分かる。
と、いう事は?
まぁその「エクソリプス」が執着をして、きっとディティエライトの子供、セフィラをなんとかしようとして?
自分がモノにしようとしたのか、子供と結婚させようとしたのか。
それにまた失敗して、セフィラはヨルの世界へ行った?
アリススプリングスはその、子供?
「エクソリプス」の孫、という認識でいいだろうか。
俺が考えている間にも、話は続いていく。
「では向こうへ行ったらその辺りも調べねばならんだろうな。そもそもエクソリプスの子がどういった行動をしたかもよく分かっていない。」
「はい。しかしエルバの話だとやはりセフィラを追い掛けていたのはその息子に引き継がれていると見ていいでしょう。この辺りはもう向こうに行かないとこれ以上は分かりません。」
「お前は行けるのか?」
「………なんとか、しますよ。代わりでも見つけて。結構、人気があるのですよ。青は本が好きな者は多いので。」
「そうか。まあよろしく頼む。それで?」
「はい、ミストラスの話ですが………。」
ラガシュの話によると、館は銀の家に招かれた者しか基本的には入れないらしい。
よって、青のラガシュだと希望しても通るかどうか、そもそも通って館へ尋ねたとしても聞きたい事が聞けない可能性が高い。
それでミストラスに頼んだらしいのだが、やはりある程度の話をしなければ頼む事が難しい内容だ。
予め、ウイントフークと相談してあったのだろう。
「長の為」というポイントを突いてうまく頼んだらしいラガシュの報告はやはり、という内容のものだった。
「「絵」が。あったそうです。すぐ解ったようですよ。それを見て。」
「誰かが描かせていた、という事か?」
「そうでしょうね?あそこは続いていますよね?先々代か、先代か。ユレヒドールはその絵を見て育った様で、ミストラスは敢えて言及しなかったそうです。でも、貴石については少し訊いた様なのですが………。」
「ふん?」
「生まれた子は必ずチェックさせている様でした。だからレシフェはよく知っていた様ですね。彼はラピス出身だというのも大きいでしょうが、出入りしていた所為もあるでしょう。」
「………そうか。」
何かを考えているウイントフークと、ラガシュの表情。
多くは語っていないが、ユレヒドールがそれに執着している事は十二分に示している。
「レシフェには既に話を通しておきました。あそこに居るうちは安全でしょう。ただ祭祀は…どうでしょうね?」
「何も無い事を祈るしかないな?祈りの主旨が、変わりそうだ。」
「確かに。」
クテシフォンとブラッドフォードがイストリアに軽く説明を受けていて、俺達は祭祀の並びについて話していた。
今回は、客が多い。
できれば怪しいやつは纏めて並べておきたいし、しかし偏り過ぎてもマズい。
あれこれ話していると、今まで黙っていたウェストファリアが口を開いた。
「して。ミストラスはその絵を見て、「なんと」言っておった?」
「え?「絵」ですか?」
その質問を聞いた瞬間、ウェストファリアがここに座っている意味が判る。
ラガシュもすぐに察したのだろう、ニヤリと悪い顔になった。
「凄かったらしいですよ。僕も見たかったなぁ………。でも姫と同じなんですもんね?それならな………。かなり、だったらしいですよ。「絵だけでも、充分だったろう」と、言ってましたから。」
確かラガシュは「本当の色」を、見た事があったか。
そう考えつつもウェストファリアを見ると、カリカリと何か書き始めている。
もしかしたら自分も館へ行くつもりか。
「ウェストファリア。それは、祭祀の後だ。」
すぐにウイントフークに釘を刺されている。
確かにミストラスならば相手の顔を読んで交渉できるだろうが、この白い魔法使いには難しいだろう。
なにしろ絵に向かって突っ込んでいく事は間違い、ない。
ウイントフークがそう、言うという事は。
祭祀の後は絵が見れるという事だろうか。
本部長の作戦に思いを巡らせながらも、再び家系図が気になり考え始める。
その「エクソリプス」の取り巻きとやらがどのくらい、いたのか。
未だ残るその勢力はあるのか、今の当主アリススプリングスへの影響は。
あの、光の後少しは行動が変わったと聞くアリススプリングス。
アラルエティーの事、ヨルが首を突っ込み過ぎなければいいが。
まあ、無理だろうけどな………。
そうして俺も自分のぐるぐるを解決すべく、ウイントフーク達の中へ入って行った。
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