透明の「扉」を開けて

美黎

文字の大きさ
上 下
362 / 1,700
7の扉 グロッシュラー

考えること

しおりを挟む

「でも、なんだかんだ、結局。」

そういうこと、なんだと、思う。


光るものが、見たい。

キラキラした、もの。

明るいもの。

何かもう、兎に角、キラッとした、もの。


そう思ってお風呂に入っている、私。

今は夜だ。

あの後普通に、図書室へ行って色々して食堂へ行ってご飯を食べ騒めきの中でぐるぐるし、再び図書室でウンウン唸った後、夕食を済ませて部屋へ帰って。

「なんか、光が見たい。」

突然頭の中に閃いた、キラリとした眩しい光。

そんな明るいものが見たくて、でもここには、ない「それ」。


もし、太陽があれば。

きっと明日の朝にも、見れたろうし何かを反射して光らせたり。
前庭の池にでも行けば、水に映るキラキラが沢山見れるだろう。


しかし、今現在は「無い」それ。

だから代替え案として、お風呂に入ってキラキラを降らせているところなのである。


「でも。大丈夫、大丈夫…。」

二人と話して、明るくなって。

でもふと不安にも、なる。

けれども確実に明るい未来を描こうとしている二人の気持ちも嬉しくて、笑顔になって。

また、ぐるぐるも、して。


「おんなじ所を、ぐるぐる………。」

そう、回るのである。


それもこれも、もう祭祀も近づいてきっと準備もラストスパートで。
自分の中で迫り来る何かがあって、心が落ち着かなくて。

まだ、迷っているのかも、しれない。

どうするのかは、決めた。


お兄さんと「フリ」をするのも、決まったし。

ギフトの内容も、あれにする。

あとは、心を込めて祈るだけ。


「いよいよ、か。」

「不安なのかな?」

「でも。それも。仕方ないし、それも含めて、祈っていい。」

「とりあえず、あるもの、全部。出して、いいんだから。」


そう、私が我慢してちゃ、始まらない。

不安だって、口に出す。

いい事も、悪い事も。

全部抱えて、祈る。



「何だろうな、でも。何が、…………うーん?どう、思う?」

私が話しかけているのは、目の前に並べた石や小物達だ。

お風呂の中にはお気に入りの石や、小物が相変わらず沢山あって今日も私の癒し担当を買って出ている状態だ。

湯船に渡した銀板の上を、一つ一つ、確認する。


マスカットグリーンの原石、ピンクと紫が可愛い原石。
自然のままの形に心が癒されて、それと共に自然の偉大さも、思う。

カットが凝ったアンティークの小瓶、滑らかな肌の陶器の小皿。
金銀だけの彩色が細かく入った、派手だが落ち着いたその佇まいが気に入って貰ってきた新入りの彼。

自分で作った余りの石は、乳白色のマーブルが柔らかく私を迎えて。
「意外と自分も癒せるかも」なんて、思う。



なんだろう、今、私の心が。

求めている、もの。

何か光る、もの。

圧倒的に眩しい、「それ」が見たくて。


わかっている。

心の声を聞く事の、大切さ。

何を意味しているのかは、分からないけど。

でも多分。

意味がきちんと、あって。

きっと、それをして私が感じて、自分の中で、それが成れば。

「ちゃんと、カタチになって。何かが、生まれるんだよね………。」
 

それが、何なのか。
祈りなのか、光なのか、力なのか。

それともまた別の、何かか。

それは、分からない。


でも意味の無い様な事に見えても、きちんと心の声を聞いて実行すること。

それをする事によって、「自分が満ちて」何かが生まれること。

自分から、何かを生み出す事が、できる、こと。


「どうして、「知って」るんだろう…。」

混ざり合う色のお湯を、掬う。

両の手から溢れるそれは、やはり透明で何の色も、無くて。

しかし湯船に戻ると、あちらはグリーン、こちらはピンク。
なんとも不思議な、色の共存。

目の前にあるそれを不思議な思いで見つめながら、この頃の自分についても、考える。


「成功体験」があるからだろうか?

いつも、ぐるぐるしているから?
なんとなく、分かるのかな?

経験から、なんとなく?

何故、わかる?

何を、私は、知っているの?


自分の頭の中にある、なにか以上の。

心の中にある何か、以外の、もの。


まだ、知らない私があるのか。

それとも何か大きな力が働いているのか。

人智を超えた。

おおきな、もの。

「運命」なのか「神」なのか、「宇宙」なのか、それとも「自然」か。

それともやはり、全ては「私」の中なのか。


わからない。

でも。

「分かんないから、面白いのかも、ね?」


全てが解っていたら。

安心だろうか。

つまらないだろうか。

それが私の行きたい道だったと、しても。

ある意味「敷かれたレール」に、見えるだろうか。


例えそれが、成功への道だとしても。

全てが、解っていて。

なぞるだけの、道だとしたら。

「それはそれで。やっぱり、つまらないんだろうな………。贅沢。」

自分で自分にツッコミながらも、色々な考えが浮かんでくるのが面白い。


きっと私の知らない私もまだまだ沢山ある。

だから、みんなの中にも必ず、それは眠っているのが分かるし。

それを、どうやって。
見つけて、もらうのか。

どうやって、気が付いてもらうのか。

考え、試して、迷って、また考えて。

一つ一つ、やっていくしかなくて。

きっと、地道にやるからこそ叶うこともある。


「うん。」



小さい頃から。

何か原因の分からないモヤモヤが、私の中に巣食っている事があった。

「それ」が何だか分からなくて、モヤモヤすること暫く。

数時間の事もあれば、数日、はたまた数週間の、事もあって。

その、「モヤモヤ期間」。

その正体に、気が付いたのはいつだったか。


多分、少し大きくなってからだと思う。

気が、付いたのだ。

そのモヤモヤは、私の越えるべき困難であって、それが終わるまで。
それを、乗り越えるまでは、モヤモヤが続くのだということ。

それが、その状態が嫌ならば。

私は、考える必要がある。
自分の頭の中を総動員して。

できる限りのことを考えて、対策を練り自分を安心させるしかないのだということ。

それを積み重ねて行く事によって、得られる経験値と安心感によって、モヤモヤ期間が短くなる、もしくは無くなるのだということ。

何事も、努力なくして。

なし得ることは、無いのだということ。


小さな事かもしれないけど、そんな事の積み重ねがきっと、今の自分を作っているのがここに来て、よく、分かる。

一つ一つを、選んで。

それをすること。

私を作る、なにか。

しかしそれ以外の働く、チカラ。


「くっ。………これが、運命?いや、それはまだ分からない。」


ふと、イストリアが言っていた言葉が思い出される。


『時には努力と意志だけではどうにもならない、運命の悪戯も訪れるかもしれない。だがね?全てが、思う方向に転がるばかりでも、面白くないだろう?

神の意志など、余興だとでも思っておけばいいんだ。君は、君の輪を軽く、風の吹くままに転がし楽しむ権利がある。』


そうだ。

そうだよね………。

やっぱり、イストリアさん面白いな………。



私が一つ、確実に思うこと。

それは人に恵まれていると、いうことだ。


この、世界に来て。

出会ったティラナとハーシェル。

なんだかんだでここまで一緒のウイントフーク。

初めの印象は最悪だった、レシフェはいつも私に欲しい言葉をくれるし。

子供達との間に入ってくれたのは、シュレジエンだ。

ここ、神殿でも「悪い人」って、本当にいなくて。

未だ分からない事もあるけれど、協力してくれる人もいるし、何より私が信じられる、人がいる。


だから。

きっと。

この、モヤモヤでも、抱えて進めば。

また、新しい道が開ける事も、分かるんだ。



ハラハラと降る、小さな光。

それは今日はピンク、マスカットグリーン、金銀と少し紫、水色。

沢山の色が混ざり合って。

どこから来た色だろうか、でもそれは必ず私の中にあるどこかの色で。

沢山の事に影響されて、私はできている。
沢山の事に影響されて、私は変わる。


手のひらに、小さな星屑を受けて。
また、この光すら取り込んで私の糧にして。


もっと、美しいものが、見たい。

色々な、ものが。

私の、まだ知らないもの。

きっと沢山ある。

私は、楽しみたいんだ。

沢山の、美しいものが見たいんだ。


そうして、感じて、感動して、それを取り入れ取り込んで。

糧にして、再び、光に変えて、放つ。

光でなくとも。

何かに、変えて。

生み出すこと。

自分の中で何かを変換すること。

「自分の色」を、着けること。


そうしてみんなが、それができて。


世界が、沢山の色で、溢れたならば。



「それ即ち、最高であって………。うむ。」


納得。


私の中で一旦決着したぐるぐるを仕舞って、お湯から出る。

うわぁ、結構フラフラするわ………。

思ったより、長湯していた様だ。

暫く落ち着くまで湯船に腰掛け、頭を戻す。
きっとこのまま立ち上がれば、転ぶ自信がある。
うん。


むわり、とした湯気の中ボーッと眺める、白い浴室。

お気に入り達の並びを目に映して現実と繋げる。

パチンと指を弾くと、少し空気がスッキリしてきた。


「うーん、イケる、か?」

のそりと立ち上がり、拭き布を手に取って。

ここからまたノタノタと支度を、するのだ。


並んだ化粧水の小瓶、ルシアの店とイストリアの店がパッと思い浮かんでそれもまた楽しくて。

「よし。」

きっと、待ってる。

長湯をしているから心配してるだろう。

ベッドに座る金色を想像して思わず口元が緩む。


そうしてゆっくりと化粧水を手に取ると、ピタピタと頬に馴染ませまだまだ支度は、続くのであった。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

皇帝はダメホストだった?!物の怪を巡る世界救済劇

ならる
ライト文芸
〇帝都最大の歓楽街に出没する、新皇帝そっくりの男――問い詰めると、その正体はかつて売上最低のダメホストだった。  山奥の里で育った羽漣。彼女の里は女しかおらず、羽漣が13歳になったある日、物の怪が湧き出る鬼門、そして世界の真実を聞かされることになる。一方、雷を操る異能の一族、雷光神社に生まれながらも、ある事件から家を飛び出した昴也。だが、新皇帝の背後に潜む陰謀と、それを追う少年との出会いが、彼を国家を揺るがす戦いへと引き込む――。  中世までは歴史が同じだったけれど、それ以降は武士と異能使いが共存する世界となって歴史がずれてしまい、物の怪がはびこるようになった日本、倭国での冒険譚。 ◯本小説は、部分的にOpen AI社によるツールであるChat GPTを使用して作成されています。 本小説は、OpenAI社による利用規約に遵守して作成されており、当該規約への違反行為はありません。 https://openai.com/ja-JP/policies/terms-of-use/ ◯本小説はカクヨムにも掲載予定ですが、主戦場はアルファポリスです。皆さんの応援が励みになります!

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...