透明の「扉」を開けて

美黎

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7の扉 グロッシュラー

力を与える 光

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普段意識していないもの。

特段気にするようなものではないもの。

ただ、そこにあるもの。


いつも等しく 平等に

降り注いでいる もの。


当たり前が当たり前に あること

のお陰で

沢山のものが 成長すること

大きくなると いうこと

育つ とは

在る とは

生きる

生きている

そこに 生命が  ある ということは。



おなじ なのだろうか

あの 畑の花

私の家の庭の 花

セーさん



エル

館くん


動くもの

生命  まじない  

そこに ある こと

意思の疎通が できること


生命いのちとは

私たち とは。




私はまだ 子供で 世界を知らない

でも

大切なものは あるし 知っている

それに

生命いのち それが

どういうものだとしても

等しく 大事だし みんなが 幸せであればいい


迷うこともある

勿論 泣くこと 怒ること 我儘を言うことも

でも

こたえは 知っている


どうするべきか どれが正しいか

それは 知らないけれど


自分が どう  したいかは

知っているんだ

わかるんだ

私が 私の道を進み それが 私を作ること

それが

私 だということ




だから。


等しく。

大切な、みんなに。


生命いのちの、光」を。


降らせるって、決めたんだ。





そう

ただ

ただ

そこに

みんなが

あっていいのだと


示す  ために。










「まず、扉を出して。全ての、みんなを。あそこに送ります。」

「それから空を開いて。ん?雲を?開いて。光を、降らせるんですけど、黄色の。いや、橙かな?」

「あ、じゃなくて。ですよ、万物に必要な。。」

「えっ?ありますよね?ありますよ。そりゃ。だって「空」だし。」



どうして、「荒唐無稽だ」って顔、してるのかな?

おかしくない??

だって、「空」だよ?

あるに、決まってるじゃん。

朝になれば、明るいんだから。



をしているウイントフーク。

イストリアはただひたすら、楽しそうだ。

気焔は、目を瞑り腕組みをして、ダンマリ。

一体、どういうことだろうか。


私は、ただ。

「どうするつもりだ?」と言われたから、「生命の光を降らす」と言っただけなのに。


「暫く。見ては、いないな。」

そう言ったのは、イストリアだ。

イストリアは一時期ラピスに居た。
だからきっと、見た事があるのだろう。

恐ろしい事に、この世界の人達は。

「ちゃんとしたお日さま」を見た事のある人が、少ないのだ。

「空を、開いて光を降らす。この前も、光は降りましたけど。アレだって、結局多分、太陽から降ってるって事ですよね?」

「まあ。そう、なるだろうな?」

やっと返事をしたウイントフーク。
何がそんなに問題なのだろうか。

雲を退けて、空が見えたら。

お日さまが、出る。

それ、至極当然の事だと、思うんだけど………?


「まあ、確かにね。心配な事は沢山あるよ。何しろ見た事がないものが現れるんだ。問題には、なる。が、どういうものなのか。皆、頭では分かるのだろうが。実際目の前に、あった時どうするのか、ちょっと興味はあるな。」

「興味どころじゃない。は。奴等が欲して止まないものだ。」

「そうだね。しかし。「時代ときは来た」、という事なのだろうよ。この変化を恐れては、何にもならない。」

「……………。」

「あの………?」

二人が、何の話をしているのか。


ウイントフークが渋って、イストリアは賛成の様だ。

その、「空を開いて太陽を出す」ということ。

でも、結局「空」は開く。
祈れば。
自ずと。

だから、私が「降らす」と決めなくとも。

結局は日は降り注ぐのだろうけど。


でも、なんとなくだけど祈りを溜めて空を戻すには時間がかかると思うのだ。
少しずつ、雲が晴れて。

青空が、出てくるのだと思う。

でも、今回は意識的に、空を。

全ての雲を、取り払ってお日さまを、太陽を、あの力強い、光を。

降らせて。

「欲を言えばそれであの子がやる気を出して、草とか生えちゃったりしてあの木達も大きくなるだろうしこれで緑が戻って花とか咲いちゃったりして、そうすれば食べ物も作れるだろうし最終的には畑、そして自給自足のハッピーライフを…」

「何を言っている。」

ポスンと頭に手を置かれる。

さっきから、賛成なのか反対なのかずっと目を瞑っていた金色だけど。

どっちでも、いいの、かな………?

その手から伝わる温度は可とも不可とも、取れずに温かい、だけ。

好きにしろと、いう事だろうか。

それに、しても?


「ウイントフークさんは、何がそんなに心配なんです?」

そう、どちらかと言えば反対とでも言いたそうなその口ぶり。
面白そうな事には目がない、ウイントフークが渋る理由は何なのだろうか。

私のその言葉に、俯いて肘をついていた彼は目線だけを私に投げる。

そうして一つ、溜息を吐くと仕方が無い、という風に話し始めた。


「お前、シャットでもまじないの空を作っただろう?その時、レシフェと話したんだが。」

「はい?」

「「空」は、奴らの欲して止まないもの。遠い過去に失った、しかし自分達の所為だとは気が付いていない、ものだ。ここと同じく、向こうには空が、無い。喉から手が出るほど、欲しいもの。人はそれを、欲して止まない。もう、思い出せる者もいない、言い伝えだけの、それを。」

「現す事ができる、現実のものにする事ができる、者。そんなのがいたら、お前………。」

「えっ。だって、雲取っ払うだけ………。」

「まあ、お前にしてみればそうなんだろうが。………どうするかな………。」

そう言って再び、考え込み始めたウイントフーク。

しかし、「どうするか」は悩んでいる様だが「駄目だ」とは、言っていない。
多分、駄目なら。

この人、それ一番に言うよね………。

だから、駄目ではないって事なんだ。

でも、危険がある、と。


その、考えてくれている様が嬉しくて、ついついニコニコしてしまう。
見つかったら怒られそうなので、口元を隠したまま薄茶の瞳を、見た。

楽しそうに一つ、頷いたイストリアは新しいお茶を淹れてくれるらしい。

いつもの戸棚から取り出される袋を、浮かれない様に見つめ、それを待っていた。
次は何の、茶葉だろうか。




少し円やかで甘い香りが漂う。
しかし、甘いと言ってもスイーツの様な甘さでは無く、葉が、甘いのだ。

うーん、これはニルギリっぽい感じ………。

ポットから注がれる、紅い色を見てそう思っていた私に、硬い声が降ってきたのはその時だった。

「一つ、確認だが。」

「はい?」

「お前は、あの子を青の少女にするつもりか?」

うん?

茶の瞳を確認すると、至って真剣だ。
アラルの事を、言っているのだろう。

きっと、何かある。
ウイントフークは私がアラルを守る為に、そう言っている事は気が付いているだろう。
その上での、この確認だ。

嫌な、予感………? 


私の顔だけで、返事を確認したウイントフークは言葉を続ける。

「まず、空を出し太陽が現れる。それをやったのか、分からない様にする事は可能だろう。それで、お前はデヴァイへ行くつもりだ、と。あの子はどうするのか知らんが多分、ミストラスは一人、こちらへ置いておきたい筈だ。まあ、本当はお前がいいのだろうが承知していたんだって?なら、いい。」

「それで。あの子が残る、理由はまぁ祈りの事でも何でも、何とでもなる。まだ来たばかりだしな。そこはミストラスとの話でいいが、お前が向こうに行く理由、「あっちでなければならない」理由は、無い。正直、このままだとあの子が向こうでお前がこっち、とアリスに言われれば。それが通るだろうよ。」

「えっ。私があっちに行きたいから、とかじゃ駄目ですか?」

「「お前の意見」は、聞かれないものだと思え。アリスが、どうするかなんだ。全ては。どう、奴に考えさせるか、なんだが………。」

「何ですか?」

きっと、本部長には計画が思い付いているに違いない。
でも、言い淀むような、内容の。

珍しいな…。

基本的に必要な事はズバズバ言う人だ。

逆に、気になるんですけど………。


チラリと目線が、動いた。

え?
そっち?

そう、なの?

それは確かに………。

ヤバい、かも…………?


ウイントフークの目線が動いた先は、私の僅か上。
金色の、場所だ。

と、言うことは。


なんだ、ろうな?
私絡みの?
気焔が、納得しなそうな、こと?

うーーーーん??

危ないって、事だよね?


くるりと振り返って、金の瞳を確認する。

しかし、その瞳が見ていたのはウイントフークではなく、私だった。


うん?

私??

余計に、分からない。


そうして私はとりあえず、目の前の紅茶を温かいうちに手に取ったのだった。

うん、嫌な、予感。


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