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7の扉 グロッシュラー

金の、羽

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ああ、もうすぐだ。


あの、私の光。
それが、もう、すぐ近くなのが分かる。



うん?

怒ってるかな?


え ヤバい?

どうだろう………。



でも。


迎えに来てくれたんだよね?



なんか、心なしか燃えてるな………。

大丈夫だろうか。

まあ。

でも。


どうする?

そーっと

いや

ドーンと

行く?


てか、どこに出るんだろう?


まあ、いっか。


「感じるままに」って、言ってたし?


それなら。



そう、一つ頷いて。


「ただいま!」


そう言って、金色の光に飛び込んだんだ。













うっ

む?

ん?


焔の、中?




飛び込んだのはいいものの、周囲はなにしろ、橙しか見えない。

どうやら再び彼の焔の中の様だ。


そう、激しくもないがチラチラと燃え入れ替わる金と紅、橙の羽。

不死鳥の羽の様なその焔は、煌めきながらも燃えていて見ている分にはかなり、美しいものだ。

うん。

そう。

見てる、だけなら………ね。



熱くは、ない。

しかしその羽にびっしりと取り囲まれている私は、身動きが取れなかった。


何これ?
新しくない?

気焔は?
どこ?


目だけを動かしてみても、彼は見当たらない。


もしか、して?

チラリと胸元あたりの焔を、見た。

多分、

いつも、あの瞳の中で燃える美しい焔が、ある。


えええー?

これ、どうやって戻すんだろう?

「戻って」って言えば、戻るかなぁ?


しかし、口を開けても声が、出ない。


これは…………困ったな。


しかし、チロリチロリと燃える焔は私の周りも回り出して、どうやら激しくなっている模様である。


うーーーん??

どう、する?


何で声、出ないの?
口は、開くんだけど?


あ。


パッと閃いて、口を大きく、開ける。

そしてチロチロと煌めく小さな焔が、眼前に来た、瞬間。


「パクン」


ん、むう。



まず  っ


た?





自分の中が焔に侵食されたのが分かって、私は目を閉じた。

だって。

物凄く、体の中に熱い焔が巡っていっぱいいっぱいだったし、なんだかきっと彼の顔は見れないと、思ったから。


うん。
寝たフリ、しようっと。


そう、多分。

私の中が、満たされたから。

きっと、人型に戻る筈。



そうして狸寝入りを決め込んだ私は、いつもの様にそのまま、寝ていたのだった。













「………ほぼ終わりだ。」

「他には?」

「今のところは、無い。まあそう心配するな。とは言っても無理だろうがな。相手が、あいつじゃ。」

「………。」


声が、聞こえる。

多分、ウイントフークと気焔だ。
気焔の大きな溜息が聞こえたのは、もしかして私の話だろうか。

なんだか失礼な事を言われた様な気がしなくも、ないけれど………。



うん?
この、ベットカバーは。

赤の繊細な刺繍と紋様、凝った造りの木の天井。

イストリアのベッドだ。

それならやはり、向こうの店の方で二人が話しているのだろう。
イストリアもいるのだろうか。

そう思って、目だけで辺りを見渡す。
この部屋には、誰もいない。


てか、ウイントフークさんは何処で寝てるんだろう?

あまり広くなさそうな、この店の大きさ。

奥の部屋は、ここしか見た事がない。
しかし、まじない空間であるこの店もきっと拡大をする事は可能なのだろう。

あとで見せてもらおうっと。


モゾモゾと身体を起こし、異常が無いか確認する。

どこも、大丈夫そうだ。

とは言っても、あの子の中にいただけだから。
何、という事はないのだけれど。


そう、心配性に金色を満たされた事、以外は。


なんだか自分がキラキラにピチピチしている気がして、恥ずかしい。
隣の部屋へ行きたかったけれど、少し躊躇うくらいだ。

えー。
どうしよう。

もう少し待ってたら、治まる、かな?



「ああ、起きたね。これを飲むといい。」

そうして私がぐるぐるしていると、イストリアが飲み物を持って入ってきた。

「ありがとう、ございます。」

ホッとして、トレーの飲み物を受け取る。

まだ、本人に会うのは避けたい。

このキラキラはイストリアに見えているだろうかと思いながらも、グラスに口をつけた。
今日は甘い、アイスハーブティーだ。

「うん、美味しい。」

じわりと染み込むその甘さに、ホッと一息つく。

そうしてニコニコしているイストリアに視線を移すと、「良かった。」と言い楽しそうに話し始めた。

「いや、先に行ったと思ったのに姿が見えなかったから。心配、したよ。まあ大丈夫だとは、思ったが。途中で彼が飛んできて、何かと思ったけど呼んだのかい?」

「呼び………ました、ね?いや、探してたのかな?」

「そうか。少し焦ってやって来た様だったから。木の中へ入って、出てきた時にはもう君を抱いていたからね。大事無かったのだろう?」

「はい。………ですね。」

まあ、何も、無かったと言えば、無かった。

そう、ちょっと。

金色で、満たされている、だけで。


「あ、の………。」

「うん?」

迷ったけど。
、見えているかが気になって、イストリアならいいだろうと確認をしてみることに、した。

だって、もし。

なら。

これから、考えた方がいいかも、しれないから。

「あの、私。今、普通ですか?」

「うん?普通?」

そう言って、まじまじと私を眺めるイストリア。

ぐるりとベッドの周りも、周って見ている。


ううっ。
どうしよう。
何とも無ければ、いいけど。
でもそしたら「なぜ?」って訊かれちゃうかな??
でもキラキラしてるとか言われても………。

どう、だろうな?


その、薄茶の瞳は楽しそうにくるくるしていたけれど、私と目が合うと悪戯っぽく、笑う。

そうして「さて、見た目は、普通だけどね?」と、言うのだ。
それは、どう言う事だろうか。

「えっ。「見た目は」ですか?」

「まあね。中身は、判らないけど。」

「えっ。」

そう言って再び、笑い出す。

あー。
これ多分、揶揄われてるだけ、だ。

そのイストリアの笑い方を見てそう判断した私は、起き出す事に、した。


私達の話し声が聞こえたのか、隣は静かになって。
あの二人に、こちらに来られるよりは私が行った方がいいと思ったからだ。


髪を整え、服もチェックする。

うん、多分大丈夫。

イストリアを確認すると、頷いてくれたので大丈夫だろう。


そうして私達は店の方に移動する事に、した。

そう、私はミッションを遂行せねば、ならない。


ちょっと、寄り道しちゃったからね………。
ここからが、本番だよ?


そうしてポン、とベッドから降りるとイストリアの後について沢山のスワッグの下を、潜ったのだ。
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