透明の「扉」を開けて

美黎

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7の扉 グロッシュラー

カラフルとぐるぐる

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結局もって。

誰が、何を考えていて。

どんな目的で、何をしたいのか、何をしているのか。


ツンツンとフォークでミニトマトの様な野菜を転がしながら、ぐるぐると考えていた。
白い皿の上でコロコロと転がるそれを、ボーッと目に映す。
その、黄色の、ツルッとした、玉。

「依る。」

「ああ、ご、めん。」

少し、咎める様な声にフォークを一旦トレーに置く。
確かに、お行儀が悪い。

一応、私は銀の家のお嬢様なのだ。
見た目だけで、言えば。



今日の食堂も彩りの良い食事とローブが行き交う、賑やかな空間である。

祭祀がいよいよ近くなって、「そろそろ無理じゃない?」と私が思うくらいは人が多い、この食堂。

ローブだって、青以外は沢山の色が行き交っていてそれは私の目に嬉しい光景なのだけれど。

その分、沢山の思惑が渦巻く気もして、少しだけ滅入ってしまうのは仕方が無いと、思う。


私は、さっき思い付いた「祈り」の件について未だぐるぐるしながら、食事をしていた。


そう、ミストラスの言っていたこと、ラガシュのこと。

アリススプリングスの思惑、ブラッドフォードの立ち回り。

沢山の人が、この祭祀に訪れていること、その目的。

アラルエティーの、今後のこと。


いかん。

どうしたって、混乱する。


しかし、私の目の前にはいい香りのスープが「冷めるよ?」とスプーンを待っていた。

「そうだ、とりあえずお腹がいっぱいになれば。イケる、かもしれない。」

向かいの目が冷ややかなのは、気にしない事にしよう。

何しろとりあえず、食事を優先することにした。

温かいうちに頂かないと、このスープさんにも失礼だしねっ??
うん、現実逃避じゃないのよ………?

そう、自分に言い聞かせながら食べ始めたのである。



しかし、程なくしてそれが正解だったことに気が付き始めた、私。

お腹がいっぱいになってきて、ふと思い出した事があるのだ。


『全ての物事には表と裏があり、お前が今見ているものが表なのか裏なのかを知る必要がある。表と裏が混ざるから、反射して見え辛いのだ。」


「其々主張している者の「考え」と「歴史」を分断せよ。』


そう、あの時シンが言っていた。

あれだ。

「そっか、だから歴史を勉強しろって言ってたんだよね…。」

あの二人が、早々に歴史を終えて畑に行ってしまった為に私の勉強は当然の様に止まっていた。

うん、一人でなんて、できる気がしない。
絶対、眠くなるに決まっている。

「どう…しよっかなぁ………。」

そう、言いつつも最後のお茶を飲み辺りをぐるりと、見渡していると。



中々、面白い光景が見れるこの食堂をここの所私は気に入っても、いた。

当然、未だ私たちに対する視線は感じる事が多いのだけれど、それ以上に他の色のローブを観察するのが面白いのだ。


実は、神殿ではそう、色での格差が無いネイア達。

一応、あちらと同じに順序はある様なのだが話している時に感じる事は少ない。
年齢差で少し、感じるかという所である。

赤ローブの若者二人はいつも自由だし、それを注意するラガシュは青ローブ。
ニュルンベルクは適当な所をいつも赤ローブに突っ込まれているし、クテシフォンとニュルンベルクは意外と仲がいい。

ミストラスだけはみんなのお守り役、といった感じだがアリススプリングスやブラッドフォードとは全然違うのだ。

まあ、簡単に言えばみんな仲がいい、という事だろうか。


しかし、この祭祀でデヴァイから来たローブ達は違っていた。

勿論、アリススプリングスやブラッドフォードへの態度は固い。
あの二人に対しては別格だ。

色でそれぞれ順列はハッキリしているのだが、その家の中でも色々、違うのが見ていて分かる。

まず、色ごとに座る位置が決まっている。

どうやら奥が上座の様な感じで、銀が一番奥で手前に赤がいるのできっとそうなんだろう。
その、色ごとに纏まって食事をしているのだ。

その中でも、白は厳しそうだ。
ダーダネルスが沢山いる様な感じだが、それよりもう少し、固いと思う。
みんなの動きがキビキビしているし、食事中も静かな事が多い。
たまにセイアが叱られていたりもする。

私から見れば、どこが悪いのか全く分からないのだけど。
だから、相当厳しいって事なんだ。

ううっ、私は絶対無理そうだよ………。


黄の家は、なんだかが無い感じである。
表現が難しいけれど、立ち回りがうまそう、と言うか何というか。
多分、周りをよく見て上手く動いているのが、解る。一番、他の家の人に声を掛けているのも黄の家だろう。

ニュルンベルクが黄の家なのが、よく、分かる光景である。
何となく「マメ」な感じがするのだ。

ちゃっかり、美味しいところ持って行きそうな感じがするんだよね…。
間違いないよ。うん。


赤の家。
これは、なんか、面白い。

兎に角向こうから来ている人と、ネイア二人は歳が離れていてあの二人と並ぶと孫とおじいちゃんと言ってもおかしくない。
結果、いつも緩い二人が叱られているので見ていて面白いのである。
ハーゼルなんかはセイアよりも叱られてたりするのだ。

まあ、アレは仕方ないかもね………。


こうして各家を観察していると、少しはデヴァイの事も、分かった様な気もしなくもないのだが。

「まぁ、そんな簡単じゃ、ないよね…。てか、本当に青の家は誰も来ないの………?ん?来るんだっけ?」

ラガシュはなんて言ってたっけ…?

本は、貸し出し禁止って言ってたけど?


食堂を一周した視線がテーブルに戻った頃には、そこは片付けられて綺麗になっていた。

「あれ。」

「そろそろ、行くぞ?」

どうやら待っていてくれたらしい金色は、立ち上がり私の椅子を引く。


そうして私は色を楽しんだだけの食事を終えて、仕方無しに図書室へ向かう事にしたのである。




どうしようかと、思ったけれど。

多分、ラガシュに訊くのが一番早そうだ。
ミストラスは、もう私は向こうに行くのだろうと納得していた様だし。

その他の人は、自分の立ち位置からの思惑だ。

そう、それは事実や歴史では無くてその人の考え方や家の方針の、話で。

ラガシュが言っている事が、きっと事実を含んだ、現状。
今のところ、私が歩むであろう、道を一番予測できそうなのがきっと彼なのだ。

その「生贄」も、犠牲も、結局「光を灯すもの」も。

何も、解決はしていないのだ。

彼が、どうやら私の絶対の味方に、なったであろう事、それ以外は何も分かっていない。


うーーん。

ちょっと………気が進まないけど………。

行くしか、ない、よね………?

いや、歴史はやらないけどね??
ラガシュに、話を聞かなきゃ。
うん、できるだけ簡単な方法で、行こう。
うん。


そうして自分をなんとなく励ますと、傍らの青いローブをキュッと握って歩いて行った。



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