上 下
287 / 1,483
7の扉 グロッシュラー

部屋で。

しおりを挟む

実際、不思議だけど不思議じゃない、事がある。


それは、「あの二人」の事だ。


私は始め、「赤い髪で何処かへ行っている」と言われた時。
気焔の言葉を聞いてすぐに、何の事だか解った。
「私」が知らない間に、何処かへ行っていること。
会いたい「人」、もしくは「場所」が、あるとするなら。

ピン、ときたのだ。

しかし、よくよく考えるとそれが、不思議なのだ。

自分でも。


「なんで知ってるんだっけ………?」

もう、自分の中で自然な事になっているので、いつから思っていたのか、思い出せない。

でも…………?


多分。

あっちの、神殿で。
私と「あの人」が、違うものだけれど、「同じ」だって事が、解って。

そう、私達は。


二人とも「還るべき場所」を求めている。 


あの時は、私が気焔を見失っていたし。


それで、かなぁ?

多分その時、直感的に「それ」が私にとっての気焔だと、思ったんだ。
と、いう事は。

「あの人」の、好きな人っていうか求めてる人って事だもんね?
それで?
いつ、シンが出てきたんだっけ…………?


「ああ!」

ポン、と手を打つ。

「祭祀か。そうだよ、そこじゃん!」

時。

そう、シンが来てくれて、そのまま自然に私と交代した時に。

解ったんだ。

あの、感覚。

何かどこかが温かくて、ホンワカして、ずっとぬくぬくしていたい、あの、感じ。

私が気焔の腕の中で眠っている時に、よく似ているのだ。


そう、考えると…………。
辻褄が、合うか。



チラリと、目だけを動かす。

そう、私は部屋へ帰ってきてお風呂へ入ってからの、寝室で気焔に抱えられているところである。

うん。
それ以外は、今のところ大丈夫そうだ。


大丈夫そう、ってどんなだって感じだけど正直このアザに、気が付かないワケが、無いのだ。
多分、隠れていても分かるに違いない。


気焔が出るのか、ドキドキしていた私。

無言で手を広げ、私を腕の中に迎え入れた彼はそのままベッドで私を包んだ。
そうしてずっと、この状態なのである。

危うく寝そうなんだけど………?
寝ろ、って事?
違う、よね…………???



とりあえず、言い訳するのも変かと思ってそのまま抱えられているのである。
それに、居心地もいいし私にとっての問題は全く無い、この状況。

眠くもなるってもんだよね…………。


ウトウト、していた。

「依る。」

ん?

久しぶりだな?依る、って呼ばれるの。
フフ、なんかいい…………。

顔を「クイ」と上に向けられて、寝ぼけながらも半分、目を開けた。


「…………ん??」

チカラ…………じゃ、なかった??

恥ずかしながら、気焔がチカラを流し込むと思っていた、私。

しかし、彼は私の目の前でピタリと止まり、何故だか苦い、顔をしている。

「ん?どうしたの??」

「これ、か…………。」

「うん?なに?大丈夫??」

「いや、まあ、…………よく、は、ないが。」


???

よくはないけど、何なの??


何か、おかしな所でもあるのだろうか。
気焔はその、苦い顔のまま私のネグリジェの胸元を少し、ずらした。

あー、やっぱり?なにか、あったんだ?

「何?大丈夫?具合悪くなるとかじゃ、無いよね??」

その私の言葉に、少し苦笑いしながらこう、答える。

「いや。多分、ずっとなのかは判らんが、吾輩からチカラを注ぐ事が出来ないのだと、思う。」

「えっ?!どういう事??」

それって…………?

ん?でも?「吾輩から」?
と、いう事は…………。


金色の瞳が翳って揺れ、それを見て胸が「キュウ」とする。
そのまま目で「いい?」と訊いた。

頷いた彼にゆっくり、近づいてそっと、触れてみる。

ほんのり、金色が入ってきた。

パッと離して、肩を見る。
多分、変化は無い。 


私からは大丈夫みたいだし、でもこのアザが薄くならないと多分駄目だって事だよね………?

うーん??

でも、私からは「できる」から、いいの、か??
うん??


「仕方が無い。譲歩したのであろう、これでも。」

そう言って私の肩を戻す気焔。
ネグリジェの紐も、結び直している。

この二人って、結局どう、なってるんだろう?

以前は、主従関係?だったよね??
今は?違うって事なのかな??
ライバル………じゃあ、ないしね?

まあ、二人が納得してるなら、私は口を挟む事じゃ、無いんだけど。


なんだか、一件落着したような、してないような微妙な感じは否めないが気焔がいいなら、いいのだろう。
そう、思う事にした。

うん。


そうして私は「おやすみ」と、向かい側の彼と自分の中に呟き、目を閉じたのだった。









しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

甘灯の思いつき短編集

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:234pt お気に入り:5

evil tale

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:22

レナルテで逢いましょう

SF / 連載中 24h.ポイント:455pt お気に入り:1

黄色いレシート

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:228pt お気に入り:0

無表情な私と無愛想な君とが繰り返すとある一日の記録

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:454pt お気に入り:0

如月さん、拾いましたっ!

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:512pt お気に入り:1

処理中です...