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7の扉 グロッシュラー
運命の 二人
しおりを挟む「運命の二人って、いいよね…………。」
ポツリと呟き、考え始めた。
視線は感じるが、気にしない。
うん。
気焔が安心する、方法。
あの人も、安心する方法。
あっちには、訊きに行かないとな………。
もしかしたら、私の知らない何かがあるかもしれないし?
それは、私達があの扉を閉じる事ができれば、きっとある程度解決すると思う。
多分、中途半端がいけないんだよね??
うーん?
今迄は、会わなかったから平気だった?
でももう、知ってるから…ねぇ。
どうしたらいいんだろう。
でも。
もし。
私が。
「気焔に会うのは我慢しろ」って。
言われた、ら???
ザワリとした。
あ。 まずい。
駄目だ。抑えなきゃ。
何とも言えないザワザワが身体の中から生まれ大きくなり、私を拡げてこの館、そしてグロッシュラーの地面へ届くのが、判る。
あの、禁書室で大地と、繋がった時と同じ。
私が震え、大地も震えようとしているのが分かる。
だめ。 だめだよ。
大丈夫。 ああ、でも…………
ぐるりとチカラが廻り、島の底面へ廻っているのを感じる。
まずい。
届いて、しまう。
目を開き、金色の瞳に助けを求める。
「これ」が足りないから。
そう、この金色。
だから、大地を捉まえようとしてる。
そう感じて、「早く」と伝える私の意図が解るのだろう。
立ち上がり私を抱きすくめると、始めから全力でチカラが、入って、きた。
ズワッと自分の中に金色が拡がり、私の中の廻っていた回路がプツリと切れる。
同時に島を巡っていたチカラもプツリと切れ、その場でキラキラと消化されていくのが、解った。
徐々に、ジワジワと、隅々まで浸透していく金色。
私の中のゾワゾワが綺麗に解消され、嫌なものが段々と金色に塗り変わっていく。
「あんな事」にはなりたく、ない。
あれは、危険だ。
そう思って、金色が満ちるまでじっと待っていた。
そう、多分。
あの、私のチカラが、廻ってしまったら。
隅々まで行き届き、ぐるりと廻って繋がって、しまったならば。
なんだか、恐ろしい事になる様な、気がするのだ。
気がする、というか、多分。
そう、なるんだろうけど。
どうなるのかは、分からないけれど、それは確信だ。
間違いない。
それに。
中々に、気持ちがいいのだ。
チカラを、解放すること。
思いのままに、チカラを通して、それが出来ること。
多分、あの、地階で思った様な。
「この世界をぶっ壊してやりたい」そんな、気持ちも。
きっと、実現できてしまうと、解るから。
あれはきっと。
危険な、チカラなのだ。
そこまで考えて、金色が満ちた事が知れる。
全身がホンワカ、温かくて満ち足りているし、なんだか私も気焔の様にムズムズしてきたからだ。
うん?
なんだろな、これ。
う、んん?
む。
むう。
う うん。
ええ。
あの?
き、気焔さん??
もう、お腹いっぱい………
いっぱい
あ。
「もう!!」
なんだか違った意味で爆発しそうになった私は、思いっきり彼の胸を押し、逃げ出した。
いや、腕の中からは、逃れられないのだけれど。
キロリと睨み、意識をして深呼吸を、した。
うーん。いい匂いするな、この金色。
なんだろう、慣れ親しんだ毛布………うん?違うかな………?
私が落ち着くまで待って、再び出窓に腰を下ろした気焔に抱えられる。
やっと、深く息を吐いた。
落ち着く、この空間。
私だけの、場所だ。
私だけの…。
私だけの、場所。
「私だけの場所」、?
それ?
それか?
それじゃない?
二人の場所を、作る?
うん?
何処に?
可能か?
うーーーーん??
「どう、した?」
私が懐に入ったまま、じっと黙っているので心配になったのだろう、金色の瞳が揺れて、いる。
確かに。
私だけ、いつもこの空間にいるのは狡いかも、しれない。
そう思った私は、金色の瞳が揺れない様に、しっかりとそれを見つめて口を開く。
不安にさせたくは、ない。
でも。
あの人の、想いだって少しは。
叶えてあげなきゃ、不公平じゃ、ない??
そうしてゆっくりと口を開いた。
「私は、気焔が好き。」
あっ。面白い。
金色の瞳がまん丸になり、ホワッと柔らかく、なる。
「でも、シンの所にも、行かなきゃ。」
いや、待って。
違うから。
瞬時に変化する瞳が、怖い。
「いや、違うの。あの、ね。」
そうして私は、説明を始めた。
多分、あの人がシンに会いたいと思っていること。
それは仕方の無いことで、それは「私と同じ」だということ。
「さっきね?私が、「気焔に会っちゃ駄目」って言われたら、って想像しちゃって。」
まだ、ゾワゾワする気がして腕を摩る。
それを見て、薄い焔で包み、髪を梳く気焔。
一息吐いて、また話し始める。
「だから。もし、出来るなら、って言うか出ちゃってるから何かしなきゃいけないとは、思うんだけど。会えるようにする、か。何か、代わりのモノ?うーん?相引き………フフ、それはちょっと面白い………。」
安全な、時間や場所があるならばそれが一番いいとは、思う。
でも………?
やっぱり、それは難しいのだろうか。
少し顔を上げ、色の具合を確認する。
「微妙、だね。」
駄目、かな?
嫌、だよね…?
でもな………。
ふと、窓の外へ視線を移した瞬間、私は脇に寄せられた。
「「狭量に、なったものよな?」」
「………。」
「「良いではないか。この娘は、解っているから、そう言っておるのだぞ?」」
「「お前の。それは。」」
少し、間が空いた。
何故だか、分からないけれど。
くっきりとした雲の影が、床にある窓をゆっくりと横切る、そのくらいの時間はあった。
私は気焔が、スッパリと切られるんじゃないかと思ってドキドキしていた。
そう、あの時、イストリアに言われたみたいに。
我慢しろって。
自分で、何とかしろって。
特に、「あの人」は容赦無い。
それは「そういう存在」だからなのだろう。
しかし、思いの外長かった間の後に私の口から出てきた言葉は、意外なものだった。
「「まあ。「同じ」なのかもしれぬな。」」
「「我、人の事は預かり知らぬが。この娘の事は多少知れるしお前は、人では無いからな。」」
「「人では、無いのだぞ。」」
「承知している。」
「「ならば、良い。良い方法はあちらが知っていよう。」」
そうして私は自然に交代し、そのままただ、彼を見つめていた。
何と言っていいか、分からない。
それに、きっと。
金色の瞳の中で、燃え盛る焔が見えたからだ。
揺ら揺らとゆれ、しかし勢いは消えぬ美しい、焔。
多分、大丈夫。
それを確認すると少し落ち着くまで、そのまま胸の中にいた。
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