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7の扉 グロッシュラー
赤い髪の 私
しおりを挟む「覚えているか?以前、シャットで赤い髪になったであろう。」
うん?
赤い髪?
最近見たな?
先日、お風呂を出る時に一筋赤い髪を見つけたこと。
それが、何か関係しているのだろうか。
シャット。
赤い、髪。
ビクス…………だよね?
確か最初にあの、橙の迷路で赤い髪になって………。ベオ様が「結構いい」とか言ってて、エローラに見せた時も喜んでたよね?
気焔…………は、どう、だった………っけ??
ぐるぐるしていると、思い浮かんだあの映像。
真剣に私を見つめる、少し憂いのある金の瞳と覆い被さる身体、下りてくる金髪と背中に走るゾワゾワ………。
えっ。
アレ?
あれ、が、何、か??
え?
えーーーーーーーーーーーー????
背中に走るムズムズも思い出されて、居た堪れなくなる私。
しかし気焔の懐にいる私に、逃げ場は無い。
あの時は「なんだかよく分からない」感覚で、確か「こわい」と感じて弾かれた筈だ。
でも、今は。
どうして自分が「ああなった」のか、解るから。
に、逃げなきゃ。
急にジタジタし出した私を、しっかりと捕まえくるりと自分の方に向ける。
いつもの様に、頬を挟まれた私は何故だか「あの瞳」にしっかりと捕らえられて、いた。
「何処へ、行っている?」
「緩く、なっているのは、何故だ?」
「この娘は、あなたのものでは、ない。」
「「ふん。お前のものと言うか?」」
あれ。
なんで。
あの人が喋ってるんだけど。
何がどうして、どうなったのか、サッパリ分からないが多分、気焔はこの話がしたかったのだ。
それを理解した私に、口は挟めない。
しかも、何を言っているのかよく解らないし?
いつもと違う、金の瞳は冷たく、硬い。
そう、まるで石の様に。
そうしてその、硬い瞳を見た私は。
普段、どれだけ彼が私の事を想ってくれているのかを、解ってしまった。
だって。
今この瞳に映る、その「色」が。
全くもって、冷たく美しく、輝いていたからだ。
私を見つめるいつもの瞳とは、全く違う美しさがある、その色。
しかし、いつものあの金色を思うと胸がギュッとして、その違いに驚くと共に胸が熱くなる。
そうしてそれは、必然的に私が、勝る状況を作った。
そう、「あの人」から私に戻ったのだ。
「あ、あれ??」
「…………。」
「ご、めん??」
話、終わってなかったよね?
でも。
「ちょっと、どういう事?何が、起きてるの?」
そうして今度は逆に私が気焔を物理的に捕らえて、質問が始まった。
誤魔化せない様、ガッチリホールドする。
多分、瞳には諦めの色が浮かんでいるので話す気にはなったのだろう。
私にカップを持たせると、冷めているであろうハーブティーをパッと温め、飲む様促す気焔。
その間に、何やら考えている様だ。
話す気になったなら、いっか。
そう思い、ありがたく温かいお茶を啜って待っていた。
いつもの優しい金色になった彼は、何やら色々と考えている様だ。
少し考え、先へ進み、しかし再び戻って顔を下げ、チラリと私を見たと思えば、再び悩み始める。
一体全体、彼とあの人の間に何が起こっているのだろうか。
しばらくその瞳の変化と彼の様子を楽しんでいた私だったが、少し、心配にもなってきた。
でも、ある意味彼があの人の事で悩むのはいつもの事だ。
何故だか、気焔は「これ関係」の問題を悩む傾向にある気が、する。
だよね………?
以前は、私に「姫様の事は秘密」だからだと、思っていた。
しかし、今は知っている。
それなのに?
そんなに悩む、内容??
なんだろうな…………。
でも、「赤い髪」って言ってた。
赤い髪の、何が関係あるんだろう。
シャットで………赤い髪になった。
うん、なったよ?
あ、あとこの前いつだかビクスがちょっと赤にしなかったっけ??
あれいつだったかなぁ…………。
ん?
もしかしてそれがいけなかった?うーん?
でも、あの時って誰もいない時だったよね…?
自分の部屋だったと思うんだけど………。
チラリと金の瞳を確認する。
どちらかと言えば、「肯定」の色だ。
と、いう事は。
私が、赤い髪になった時に何かがあったのかも、しれない。
「どう、したの?」
何が、心配なの?
教えて?
そんなに、言い淀む事って何?
じっと、色を確認しながら考える。
でも多分。
あの人が関係しているのは、間違いない。
それに、気焔はあの人と話したがってた。
「私」じゃ、ない?
でも違う。
彼の気持ちは、疑ってない。
何か話さなくちゃいけない事が、あるって事だ。
ん?でもそれが赤い髪と、関係あるの??
それって。
あの人が、赤い髪にしてる………の??
あ。
ゆっくりと、目が閉じた。
多分、そうなんだろう。
でも?
どうして?
全く、意味が分からない。
赤い髪で?別に変化するだけなら、いいよね?
でも駄目っぽい。
って事は?
もしや………?
見、見られたって事?!?
誰に?
しかも、なんで???
いつ???
「全然、意味が分かんない。」
いつの間にか自分の頭を抱えていた。
その、私の手を外して持ち真っ直ぐに目を見る気焔。
彼の金色の瞳には、自分の姿が映っているのが見える。
大丈夫だから。
教えて?
あの人の事は、解るか、分かんないけど。
そう、思ってそのままじっと、見ていた。
多分、私のハッキリとした意志を確認したからだろう、瞳で頷くと形の良い唇が開いた。
「夜の間、赤い髪に変わったお前が彷徨いていると噂になっている。」
「いや、お前だとは判っていない。だが、「赤い髪の女が現れる」と話されているのだ。」
「何処へ、行っているのか。」
そこまで言うと、一度口を閉じた。
しかし、それは疑問系では無い。
彼は、その答えを知っているのだ。
と、いう事は……………まさ、か?
「そう、あそこだ。」
その、彼の瞳を見て私は全てを理解した。
そっか。
それは、嫌だよね。
嫌?
まぁ、嫌か…………。
それは、言い淀むな………確かに。
私は立ち上がり、ふわりと彼の頭を包む。
優しく抱きしめて、いつもの様に髪をふわふわし始めた。
そうして、考え始める。
自分の、中で。
話せる、のかな??
ねえ?
私の中の、あなた。
どう、して?
でも。
訊くまでもなく、私には解っている。
だって。
そんなの、仕方ない。
「会いたい」んだよね?
「会えて」る?
大丈夫?
充電できた?
でもね、見つかっちゃうと駄目なんだって。
そう、困るの。
私も、気焔も、多分、彼もよ。
多分、怒ると思うよ?いや、会いに来てるんだから知ってるか………。
ちょっとあっち、行ってみないと駄目かもな………。
そう、私には解っている。
だって。
私だってきっと、耐えられない。
「そこ」にいるのが分かるのに、会えないなんて。
もしかしたらあの時だろう。
あの、扉を閉じた、時。
私達は二人に頼んだ。
私達が、出来なかったから。
そうして再会した二人が、会いたいと思うのはごく、自然だ。
だってあの二人は。
私達と、同じだから。
いや、敢えて言わせてもらうけど「同じ」って。
だって。
あっちは元々、ペアなんだろう。
あの、感じ。
それにあの人も「対」と言っていた。
チラリと金の瞳を見る。
あ。
心配してる。
その、揺れる金色に問い掛ける。
「だって。私達だって、ねぇ?「対」だよね?」
ニッコリ、笑って言ってやった。
だって。
私達だって、あの二人に負けないくらいの間柄でしょう?
えーと。
対。それもいい。
恋人。それもいいな………。
カップル………ナンカチガウ?
彼氏。…………やだ!恥ずかしい!
「運命の相手、とか?…………キャーーー!!無理無理、恥ずか死ぬ!!」
ん?
一人ジタジタしているとブワリと金色に包まれ、抱き寄せられた。
「何を、言っているのだ。」
そう言って私を抱きしめ、座ったままの気焔の顔は見えない。
でも、思いの外その腕の力が強くて、彼の気持ちが落ち着くまではそのままでいる事にした。
いつもの様に、元気な髪をフワフワ、サクサク撫でる。
出窓のガラスに映る、金色の焔の中の彼と自分。
私達だって。
出来る、もん。
さて、どう、しようか。
どう、伝えよう?
金色に染まる自分の姿を眺めながら、考えて、いた。
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