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7の扉 グロッシュラー
朝の時間
しおりを挟む「ん……………。」
ふんわりとした、白い、光。
多分、朝なのだろう。鈍く光る刺繍が一番に目に入る。
いつもの、ベッドだ。
「んん………、ちょっと、寒い?な………。」
モゾモゾと白い生地を引っ張ると、隣の金色が見える。
珍しく、目を瞑っているのだ。
「…………。」
声を出したら、起きるかもしれない。
いや、さっきもう喋ったんだけど。
しかしいつも私が起きると、大体目を開けて見ている気焔。
今日は、私が見てやるんだ。
ウキウキしながら体勢を整え、そうっと向きを変える。
(よし、オッケー。でも、これ寝てる…訳じゃないのかな?)
心の中で呟きつつも、こんな機会は滅多に無いのでとりあえずは観察をする。
起きてる時は。
逆にじっと見られてしまうので、私が目を逸らしてしまうのだ。
(これで見放題だよ!)
そんな事を考えつつ、やはり美しい金の髪に目が行ってしまう。
フフフ。
わぁ………光が白いからまた透けて、凄い…なんか、毛なの?これ??でも、触るとそれなりに硬いしな…?
でもなんか………まぁ、人じゃ、無いし…。
生え際とか!
可愛いんだけど!
ちゃんと?短い毛がある~。
眉も、スゴイね………綺麗。毛並みがいい。
羨ましいな。
鼻なんてスーってなってるし。何コレ。
いやいや、睫毛!睫毛だよ!
金髪睫毛!
長っ!
ひゃ~、バッサバッサじゃん。だから、あんなに薄いけど濃いのかなぁ?
色も、白いわけじゃないんだよね…黒くもないけど。丁度よく、焼けてる??
だからアラビアンナイトが似合うんだよなぁ。
うーん。
この辺の顎のラインが………なんか…。
うん。鎖骨も綺麗だな~!なんか、ズルいな?
なんなの?
私なんて………ん?自分じゃ見えないな………?
よっ、こら、…
「何をしている。」
「キャッ!!」
「イタぁ!」
「………。」
驚いた私は、思わずパッと離れると同時に背後の壁に頭を打ったのだ。
気焔が手を出していたけど。
珍しく、間に合わなかったのだ。
「何をやっているのだ………。」
めちゃくちゃ仕方の無い目をしているけれど、あなたが驚かすからじゃない?
多分、恨めしい目をしていたのだろう「悪かった。」と溜息を吐いて、頭を撫でてくれる。
見てたの、バレてたよね…………?
多分………?
少し薄い金色を出してくれたベッドの上はさっきよりも暖かく、頭を撫でられている所為もあってかなり心地よくなってきた。
ま、何も言われないからいっか………。
ウトウト、していた。
どのくらい経ったろうか。
「コンコン」とノックの音がして、驚いて飛び起きた。
「え?」
すぐに気焔の顔を確認したけれど、なんて事ない顔を、している。
ん?知って、るの?
誰?シリー?でも、それなら私の事起こすよね………?
しかも、ノックされているのは寝室の扉だ。
部屋の外の、扉じゃない。
…………んーーー?
もう一度、金の瞳を確認する。
起きる、気は無いらしい。
「あー。」
分かった。
「レシフェでしょ?」
ベッドから下りて、扉へ向かう。
「コラ。」
「ん?」
あ。
そう、まだ寝起きの私はネグリジェ姿だ。
「え?でも?洗面室あっちだし??」
キョロキョロしながら焦る私に、また仕方の無い様なものを見る目を向ける気焔。
起き上がり、パッと身なりを整えると「白い廊下で待っている。」と言って、扉を開いた。
「レシフェ、って事は?貴石?!は、無いか………。造船所かなぁ?」
洗面室で身支度をしながら、ブツブツ独り言を言う。まぁ、いつもの事だ。
四角く白い、鏡の枠は以前よりも少し凝った作りに変化した気がする。まじないの、所為だろうか。
まぁ、可愛いからいいんだけど。
顔を洗い、保湿をしながら美しい小瓶を眺め、いつもの癒しタイムだ。この為に、少し奮発した美しい小瓶が二つ、化粧水と保湿液が並んでいる。
「少なく、なってきたな…。」
カットガラスの小瓶は中に濃いピンクの石が入っている。中身の化粧水は無色なのだけれど、量が減ってくると何故だか色が薄く見えるのだ。
保湿の方も量を確認して、今度イストリアに聞いてみようと頭の中にメモをした。
きっとあの辺にあった筈だ。化粧品の類が。
「今日………髪型、変えようかな?」
何故かは、分からないけど。パッと閃いたのだ。
でも多分、レシフェが来たからだと思う。
多分、今日は外へ行くのだろう。だから迎えに来たのだ。
と、いう事は?
「ポニーテールにしよっ。」
もしかしなくても造船所の可能性が、高い。
それなら。
きっと、動き易いこの髪型は好都合だし、髪型を変えるのは気分転換にいい。
なんとなく、だけど。
きっと、ここの所噂も回ってるし昨日はブラッドフォードの事もあった。
図書室には行かない方がいいという事なのだろう。
そう自分で解釈すると、サクサクと髪をまとめて縛る。しかしこれが案外、難しかった。
「てか、ゴム、無いと無理じゃない??」
そう、普段は髪を全て上げる事がない。
だから気が付かなかったが、量が多いと紐やリボンでは束ねられないのだ。
「何コレ。致命的。」
まだ初めの頃は、ゴムも生きてたんだけど。
結局伸びてしまって、だいぶ前に捨ててしまったのだ。
以前嵌めていた、腕を見る。
そう、この子達の隣で。
あの、リュックに入っていたゴムが並んでいたのだ。
「一緒に、有ったんだけど。意外と、ここも長くなってきたねぇ………。」
ゴムが伸びるほどとは。
しかも、ダメになったの結構前だし?
「ん?結局?私誕生日どう、なった?あれ?でもどう考えても15にはなってるよね???」
少し項垂れたポニーテールをぶらりと下げ、首を傾げていたのだけれど、ふと、二人を待たせている事に気が付いた。
「やば。」
パタパタと片付けて、部屋を確認しローブを手に取る。
「ん?ご飯?」
「まあ、それは気になるわよね。」
「あ、おはよう朝。」
すっかり忘れていたが、朝は私の支度を待ってくれていた様だ。
て事は、一緒に行ってくれるのかな??
「ねぇ、今日造船所だと思う?」
「さぁね?でもレシフェが来たって事はそうなんじゃない?朝ごはんどうするのかしらね?あの人食堂入れるの?」
「いや、私もそれ思った。でも、お弁当でも良くない??」
「まぁ、とりあえず行きましょ。レシフェは文句言うわよ。」
「はぁい。」
そう、多分気焔は何も言わないと思う。
何故かいつもそうなのだ。
私の事だから………って諦めてるのかな………?
そんな事を考えつつも、多色の房を掴みカチリと鍵をかける。
「さて。」
振り向きながらポケットに鍵を仕舞う。
同時に朝のしっぽが階段に消え、「待ってよ!」と慌てて後を追いかけた。
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