透明の「扉」を開けて

美黎

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7の扉 グロッシュラー

解放って

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もうすっかり紺色になった空には無数の星が瞬き、所々カラフルな星が、夜空に彩りを加えていた。


真っ直ぐに立ち、空を見上げる。



なんかね、こう、ふわっと、軽やかに風を起こして。

あの、遠くに輝く星を時々確認する様に。

目的を確認して。

こうして時々、美しいものを見て、浄化もして、言いたい事も言って。

スッキリして、明日から、また笑顔で。


みんながみんな、「いつだって自分自身が、自分に魔法をかけられるんだ」と、思えるように。

そう、したいんだ。



できる。

そう、自分自身が信じれば。




そうして私は、気焔が焔に変化するときの様子を思い浮かべゆっくりと腕を上げる。


「杖を出して、キラキラを撒くよ」そう、願いながらくるくると腕を振り弧を描いていく。

腕の先にふわりとした杖が見え、キラキラが溢れ始めた。


「ふふっ。」

それをそのまま、くるりと回り、辺りに蒔いていく。

ふわり、ふわりと桟橋の上を、また落ちない様に気を付けながら。




私だって、綺麗に飛びたい。

あの人、みたいに。…フフ、渋い顔してる。


落ち込む事もある、どうしようもない事だって、いっぱい、ある。

そんなのばっかりかも、しれない。

でも。


飛べない、と思ったらそれで「終わり」で。

でもいつだって、私たちにチカラは降り注いでいるし、可能性だって「みんなが」持っていて、気付いていない、だけで。

だから。


ここで、一皮、剥けて。

パァーっと、蝶々みたいに。


キラキラと、飛びたいんだ。
いや、空は飛ばなくていいけど。
うん、それはちょっと一人ではいいや…。



「心」を飛ばすの。「想い」を。



自由に。

そう、私達は何者にも縛られなくて、何にでもなれて。

自分で自分に、魔法をかけられると、いう事。


誰の許可でもなく、自分が、「自分の心」を。


そう、「解放」、するんだ。






「あ。これだ。」


そう思った瞬間、杖の先から出ていた星屑がブワリと全身を包み、私はなんだか光の繭の様になる。
自分の手のひらから零れ落ちる小さな星を見ながら、ストンと落ちてきた、その意味。


そうか。


祝詞の言葉の、意味が解る。



これだ。



祭祀の時の、祝詞で先に来るのは「開放」だ。
開け、放つ方。

だから?
、扉が出た?

でも、私が出したのは。「可能性の扉」の筈だ。

「神の扉」と関係があるのかどうかは、判らない。

でももし、祭祀が「扉を開く目的」で開かれるのだとしたら。

「開け放つ」という意味が、しっくりくるのだ。



でもこれは、私の解釈だしな………。


しかし、普段の祝詞。
これは完全に「自分」を「解放」するという事なのだろう。

実際、今は石に吸い取られて解放どころじゃないけど。
だから、やっぱり。

「あの絵」に、祈るのは。

「違う」んだ。


だって、自分を解放して力を吸い取られるなんてある筈がない。


本当なら、して。

力を受けて、そうして還元、出来る筈なんだ。



空に向かって手を広げ、降ってくる何かを受け止める様、目を閉じた。

空間に溶け込むよう全体を意識して瞼にあの美しい景色を投影する。


「それ」が、全部、私の糧に、なるんだ。


全部がぜんぶ、全て、この足元の桟橋からあの美しく不思議な魔女の店、煌めく周りの木々とこの幻想的な宇宙と星、揺蕩う湖、ふわりと流れる風。
それらが小さな小さな光の粒で出来ていて、全てが色の違う同じものであるという、意識。
全てと、同化するということ。

私は私であるけれど、「ぜんぶ」でも、あるということ。




やっぱり、「自分」だけじゃ、駄目なんだと分かるんだ。



そうしてきっと、私の事を見ているであろうあの、金の彼も。
取り込んじゃおう。うん。


そうして少しずつ、自分に「何か」が溜まっていくのが、分かる。


目を開け、さっきよりも大きな繭状になった自分から、手を伸ばし意識してキラキラを飛ばしていく。

すっかり深くなった夜の中に、金色の星屑がふわふわと飛び立ってゆく。
それすらもまた、糧にして。



ねえ。

ふわり、ふわりと、この夜空に舞って。

夢を、見させて?

私の、夢を。


私はちゃんと、ゴールに辿り着くし「あの人」の在るべき場所も見つけ、還る場所に帰して、私だって、と。



くるりと振り返り、私の金色を探す。

少し、離れた場所で私を見ている彼は、やはりとても美しかった。
離れていても、燃えている瞳がよく分かる。



「今は」。


まだ。

あの、人ならざるものの美しさには触れられない、届かない私だけど。


決めたんだ。私の欲しいもの。


だけだって。
あの、金色があれば。


世界だって要らないし、そんなのは欲しい人にあげればいい。

そうして私も。


どう、やるかは知らないけど。

あの、美しい金色とずっと一緒にいられるよう。


   「私が」、やってやるんだ。





「よし!」
 

「カチリ」とスイッチが入る。

なら、思いっきり飛ばせる。


いけ、行け、どんどん、飛べ。


そう、みんなで。

飛べば、いいんだよ。




そうして私は一人で納得し、気焔に「何が」「どう」なのかを全然説明しないまま、くるくる、くるくる回って星屑を飛ばしていたのだった。


そう、「いや、そろそろ帰るぞ。」と言われるまで、ずっと、ずーっと。












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