透明の「扉」を開けて

美黎

文字の大きさ
上 下
253 / 1,700
7の扉 グロッシュラー

想ってしまえば、こっちのもの

しおりを挟む

もう、沢山想ったんだ。私。

ここに来て。
いくつも、扉を巡って。

いい事も、嫌な事も、沢山あって、でもやっぱり来てみたら楽しかったりもして、大切な友達もできた。
ラピスを思えば涙なんてすぐ出るし、シャットにだってまた行きたい。


いつ、行ける?
いつ、繋がる?

私達は、前に、進めるよね?

大丈夫、だってみんな。
光は降ったし、扉も開いた。
石も、創る。

できる。

木も、伸びた。
きっと緑も、戻る。
また祈れば、空だって見える。

ここが、緑になったら。
いいよね?

そうか、緑にすればいいんだ。
そうして増やして、豊かになればみんながいいよね?


奪い合うのでなく。
自分達で協力し合って、進む事。

「無い」から奪うんだよ。


でも、「無い」と思っているのは決めつけじゃない?


石だって。
みんなで協力して祈れば、きっとできる。
力が、大きくなくても。
みんなが、集まれば。

そうしてきっと、少しずつ、成長して空が見えて。
、すれば。

きっと、空からは沢山の力が降る筈だ。

ここなら、きっと。

だって、「空の島」だし「空中都市」だし。

を生かさずして、どうするの??


なんとなく、私は分かっていた。
その、場所場所で力を受けやすい祈りの場所は、あるけれど。

そもそも、力をくれる「与えてくれるもの」って?

いや、「与えられる」訳じゃないな。
なんだろう。「チャージする」?
いや。
多分。

「受け取る」かな?


だって。

きっといつだって、どこだって、多分「今」だって。

「力」は降り注いで、いるんだろうきっと。

私達が気付かないだけで。

気付くことを、忘れてしまった、所為で。


目の前の事に惑わされ、欲を掻きもっともっとと欲した挙げ句、「奪う」事に気付きそれに取り憑かれてしまった。

そうなればもう、自然に力を受け取る事は不可能だろう。

それでなの?
忘れてしまったから?

空すら、見えなくしてしまったの??



薄く差し込む光は、何も応えない。
ただ、淡く美しい、だけ。



まだ、今の私には分からない。
時間ときがくれば分かるのかもしれない。
でも、今。

知りたいんだ。

 だから。


「頂戴?いいよね?あげるから。私の、「想い」。」


ぐるぐると考えた自問自答の間に、私の周りには大分モヤモヤが溜まっているのが判る。

プラスだって、マイナスだってあるよ。
だって、仕方ない。
モヤモヤだってきっと、時にはエネルギーになるよ。そう、想ったもん勝ち。

よし。

飛ばせ。    行ける。



 「よし!」


  
バッと腕を振り上げ、モヤモヤを円窓の外へ放り投げる様に飛ばす。

泳いでいる様に腕をかき、くるくると回って全部、飛ばす。



    行け。    



ニヤリと口の端が上がるのが分かる。


 フワリ 風が起きた。



それが、合図。


 よし。     


        そう



   行ける。     飛んで?


     ぜんぶ。       

          ブワッと、



 あれもこれも、ぜんぶ、飛ばして。



   飛ばすけど       でも。


  その分、返して。

  

 私は欲張りだから。


   色にして、返して?  


          みんなに渡すの。




くるり、くるりと回ってモヤを全部飛ばすと、真ん中に「ドン」と音を立てて立つ。

わざとだ。

「ほら、私は飛ばした。石を、寄越して、そして私達を導いて。「その場所」と、「本当のこと」へ。あなたには、それが出来るでしょう?」

そう呼び掛ける。


これくらい、要求してやればいい。


強気でいい。


こちとら、ずっと扉を渡って、旅をしてるんだ。

頑張ってるんだ。

結構、心細かったりするけど、金の石はいるしみんなも、いるけど。

だって、私だって。

ただの、女の子なんだ。

「道標」くらい、頂戴よ?


そう、私は空に、円窓に、要求していた。

祈りと想いは途中から何故か脱線して、我儘な要望、自分の要求。


 私の、本音。


   それを、バーンと言ってやったんだ。




ダサくていい。

私はかっこいいヒーローでも、ヒロインでも無いんだよ。

頑張ってんの。

だから。「宇宙」よ。



  
      「ご褒美、頂戴。」





私は最終的に、その円窓の下の鏡面、そのど真ん中を踏み付けながら威張っていた。

両手を広げ、空に伸ばし、いつでも「ご褒美」が受け取れるように。

そう、待って、いたんだ。








「ん、ん??」

しかし、腕を広げ空を仰ぎ、目を瞑って待っている割には一向に何も降って来ず、代わりに何だか足が熱い。

「まさか…………。」

ハッと気が付いて、下を見た。

「ギャッ!!」

可愛くない悲鳴が出たけど、そんな事は構っていられない。
地面が。

そう、あの鏡面が。

キラキラと光り輝いて眩しい光を放ち、私のスカートの中を照らしていたからだ。


咄嗟に飛び退き、まじまじと光を見る。

本当は、感動したかった。
でも。

「ちょ、眩し………!!」


どんどん、光を増すその鏡面が、直視出来なくなるのとパッと気焔が私を抱えるのが同時だった。

「大丈夫だ。」

えっ?なにが??


バタバタとした足音が耳に飛び込んでくる。

現れた彼の言葉の意味がわからないまま、とりあえず私は眩しい「それ」から目が離せなかった。


「どうした?!大丈夫か?」

レシフェが大きな声を出して、二人が走って来るのが分かる。

しかしまだ私の目は「それ」に釘付けで、目の前の鏡面はまだ眩く輝き光線を放つ。

しかし気焔に抱えられているからなのか、少しずつその光に慣れてきた、私。
それに光もなんとなく収まってきた様な気もしないでも、ない。

「大丈夫だ。」

もう一度そう言って、気焔はトン、と私を離し光の方へ押した。
多分、近づいても大丈夫という事なのだろう。

何が、そこにあるのか。

知っている、という事だ。


と、いう事は……………。
もしかして?

少しの恐怖が一瞬でワクワクに、変わる。


そうして一歩、また一歩と近づいたその先に、あったもの。

それは、鏡面が無くなった丸い空間にフワリと浮かぶ、透明なキラキラした、石だった。


「……………………………。」


これ、は。

なんだろう。
風が。

吹いてるんだけど。


その、石は。
浮いていると言うよりは、風に包まれその中にいる様な感じ。

風の巣に守られた、キラキラがそこにある。


くるりと振り返ると、頷く気焔がいる。
多分、手に取っても大丈夫だという事だ。


そっと、風の中に手を入れるが殆ど何も、感じない事に驚く。
ぐるぐると渦巻いている様に見えるのに、私の手を撫でるのは優しい微風。


そう、そのキラキラと輝く透明の石は。

きっと、私達の仲間。
この、7番目の窪みに、嵌る筈の石なのだろう。


「こんにちは。透明のあなた。名前は、あるの?」

そっと触れて、手を広げるとコロリと手の中に収まる様に落ちてきた。
そのキラキラは石たちの中で、一番はっきりと、輝きを主張している様に見える。

そうして落ち着いた声で、それは喋り始めた。

「私は「天啓の石」、ハキ。」

うん。



ちょっと、待ってみたけどどうやらコレで終わりの様だ。

うん、無口?なんだね??

「嵌めてやると、いい。」

手のひらをじっと見つめている私に、気焔が言う。

しかしもう、レシフェもクテシフォンも踊り場に着いていて、朝も既に辺りをチェックしていた。
もう、踊り場の真ん中はポッカリ空いて、いたからだ。


いいの?

金の瞳を確認する。

多分、これを嵌めると光が出るし、そもそも普段、腕輪は隠している。
まぁ、この場で知らないのはクテシフォンだけだけど。


「分かってる。」

気焔に視線を投げられたクテシフォンが、そう返事をした。
なんかこの二人、仲良くなってない??

私がそんな事を思っているとレシフェがニヤニヤしながら催促する。

「どうぞ?」

それに目を細めて応え、腕輪を袖から出す。


「久しぶりねぇ。」
「ホント。」
「いつぶりですかな?」
「さぁ?私だって合流したの、最近だし?」
「段々揃ってきたね。嬉しいな。これで…。」

うん?「これで…?」なに??

クルシファーが失言っぽくなった所で石たちが大人しくなった。

多分、この子達は私に隠し事をしている。

それは、分かってるし、仕方ないとも、思う。

それに。

聞かない方が、きっといい。
うん、絶対、なんか大変そうな話だもん。
そうそう、私は何も気付いてない。うん。


そうして石たちが大人しくなった所で、ハキを嵌める場所を確認する。

「ここ、だよね…。」

ちゃんと、ピッタリな形の場所があった。
楕円形のキラキラにカットが入った、この中では所謂典型の宝石っぽい形の石。


「天啓の、石かぁ…。なんだか、凄そうだね?」

パチリと嵌めた、その瞬間。

また眩い光が腕輪から出てブワリと光り、しかしそれは一瞬で終わる。

いつもの光景だ。

ハキが何も喋らないので少し不安になった私は、再び金の瞳を確認した。

きっと、言いたい事が分かるのだろう、ポンポンと私の頭を叩いた気焔は「心配ない」と言いクイと窓の外を示した。

その、意味を説明したのはレシフェだったけど。

「お前、もいいが。外も、出来てるぞ?一応、俺らが触れると分からんからそのままにしてある。」

「えっ?!ホント??ハキ以外にも??ん?でも「これ」は元々……………。」

あ。

パタンと手で口を閉じた。
朝が「あらあら。」と私をしっぽで撫でながら階段を下っていく。

大丈夫。皆まで言ってない、よ??

逃げるが勝ちだ。


「え?じゃあ早く行かなきゃ!とりあえず、外行こう!」

元気よく声を出して、踵を返す。


そうしてまた私は、金色を見ない様にして朝の後を追ったのだ。

うん、ギリギリ、セーフだよ、セーフ。


背後から三人の足音が聞こえて来るのを確認して、足を早める。



「天啓か…。」

ポソリとベイルートが呟いたのを、聞きながら私はとりあえず逃げる事に集中していたのだった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

皇帝はダメホストだった?!物の怪を巡る世界救済劇

ならる
ライト文芸
〇帝都最大の歓楽街に出没する、新皇帝そっくりの男――問い詰めると、その正体はかつて売上最低のダメホストだった。  山奥の里で育った羽漣。彼女の里は女しかおらず、羽漣が13歳になったある日、物の怪が湧き出る鬼門、そして世界の真実を聞かされることになる。一方、雷を操る異能の一族、雷光神社に生まれながらも、ある事件から家を飛び出した昴也。だが、新皇帝の背後に潜む陰謀と、それを追う少年との出会いが、彼を国家を揺るがす戦いへと引き込む――。  中世までは歴史が同じだったけれど、それ以降は武士と異能使いが共存する世界となって歴史がずれてしまい、物の怪がはびこるようになった日本、倭国での冒険譚。 ◯本小説は、部分的にOpen AI社によるツールであるChat GPTを使用して作成されています。 本小説は、OpenAI社による利用規約に遵守して作成されており、当該規約への違反行為はありません。 https://openai.com/ja-JP/policies/terms-of-use/ ◯本小説はカクヨムにも掲載予定ですが、主戦場はアルファポリスです。皆さんの応援が励みになります!

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

THE LAST WOLF

凪子
ライト文芸
勝者は賞金五億円、敗者には死。このゲームを勝ち抜くことはできるのか?! バニシングナイトとは、年に一度、治外法権(ちがいほうけん)の無人島で開催される、命を賭けた人狼ゲームの名称である。 勝者には五億円の賞金が与えられ、敗者には問答無用の死が待っている。 このゲームに抽選で選ばれたプレーヤーは十二人。 彼らは村人・人狼・狂人・占い師・霊媒師・騎士という役職を与えられ、村人側あるいは人狼側となってゲームに参加する。 人狼三名を全て処刑すれば村人の勝利、村人と人狼の数が同数になれば人狼の勝利である。 高校三年生の小鳥遊歩(たかなし・あゆむ)は、バニシングナイトに当選する。 こうして、平和な日常は突然終わりを告げ、命を賭けた人狼ゲームの幕が上がる!

罰ゲームから始まる恋

アマチュア作家
ライト文芸
ある日俺は放課後の教室に呼び出された。そこで瑠璃に告白されカップルになる。 しかしその告白には秘密があって罰ゲームだったのだ。 それ知った俺は別れようとするも今までの思い出が頭を駆け巡るように浮かび、俺は瑠璃を好きになってしまたことに気づく そして俺は罰ゲームの期間内に惚れさせると決意する 罰ゲームで告られた男が罰ゲームで告白した女子を惚れさせるまでのラブコメディである。 ドリーム大賞12位になりました。 皆さんのおかげですありがとうございます

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...